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再始動ロボ部!!


 『くそ、数が多過ぎる!!昨日より増えてるんじゃねーか』


 龍玄が泣き言を漏らす。だけど泣いたところで何も出るものは無い。だからせめて気だけ強く持とうとする。


 「言っても量産機ばっかだ。何とかなる!!」

 『んなこと言ってもな~!!』


 飛び出してきた、敵のアニマフレームの量産機…ウサギのような見た目をした機動力の早い機体を横から赤い狼が噛みつくように攻撃し、沈める。それと同時に胴体に付けられたミサイルポッドからミサイルを撃ちだし、牽制を行う。あの機体こそ我が結城第三中学のもう一人の部員が載る機体<赤の弧狼>マスカレード=ウルフだ。アニマフレームの機体が織りなす機動性と多彩な装備品を活用して戦う、多人数戦に優れた機体だ。


 「こっちも負けていられないな!」


 ボクはソルトを動かす。だがソルトは本調子ではない。昨日の深い傷を治し切ることは不可能だったのだ。元の30%の出力も出せていないのが現状だろう。そんなボクたちは徐々に追い詰められていた。


 「はあはあ、くっそ!!」


 飛び上がった兎の攻撃を飛び退いて回避する。ビームライフルを放とうとするが横から来た別の兎への対応でそれが難しくなる。見ればウルフの方も牽制のためのミサイルが付き、ライフルと噛みつきを利用したゲリラ戦に移ることを余儀なくされていた。


 「このままだと…」


 弱音を吐いた瞬間さらなる絶望が襲い掛かる。


 『さ、始めるか』

 『前回の続きだな』


 そこに居たのはあの専用機たちだった。


 「カラギリ、スレイガー!!」


 ボクはビームライフルを構える。だがそのライフルを持つ腕をカラギリの伸びる腕によって切り裂かれた。


 「っつ!」


 必死の思いで飛び退くが、出力が下がっていたことと片腕を失ったことでバランスを崩し、倒れる。目の前にはカラギリが迫っていた。


 『ユウ!!』


 龍玄の叫びが聞こえる。遅くなったような時の中、カラギリの刀がソルトに近づき…。


 『人のことあんだけ鬱陶しく誘ったんだからこんなに簡単に諦めてるんじゃないわよ』


 その刀は別の機体に止められていた。その機体は白に近い銀色をしていた。あの機体は…


 「<銀の剣聖>シルバー=ソードエスカトス!!」


 あれはボクが作った機体だ、マスカレード=ウルフと共に戦うために作られたバリバリの戦闘系の最高傑作。パイロットスキルが追い付かなくて倉庫に眠っていたはずの…!!


 その言葉を聞いた通信相手はクスッと笑う。


 『そんな名前だったの?とりあえず残ってたから使ったけどいいわよね?…あと私が使うんだからその名は使えないわ。この機体はね…そう。<白の剣姫>スノウ=クルセイダ―。アタシ。白雪ミカの愛機よ!…出来は20点だけどね!』


 銀に、いや。白に輝くその機体は悠然と二体の専用機を前に立ち憚っていた。


 『新手か?』

 『また専用機か、小国の癖によほどいい技術者が居るんだな』


 二体の機体が油断なく構える。ミカさんは共通回線を開く。


 『御影二中の二人。掛かってきなさい?まとめて相手をしてあげるわ』

 『ほう、俺達二人を一人で相手にする気か』

 『なめんじゃねーぞ!このくそあま!!』


 カラギリが飛び出してくる。そして腕を伸ばした。不味いあれは。


 「伸びてくるぞ!気を付けて!!」

 『見ていたから分かっているわ…それに…』


 カラギリの腕が機能によって伸びる。スノウは予期していたようにそれを最小限の動きで躱した。そして伸びきった腕に剣を向ける。


 『こんな簡単に弱点をさらすなんてパイロット教育やり直してらっしゃい!!』


 振りぬいたスノウの剣がカラギリの腕を切り裂く、圧倒言う間の早業で腕は何枚もの破片にすりおろされていた。


 『お?お!カラギリの腕を!!』

 『腕がなくなればただの人形ね。散りなさい』


 そして腕を失い動揺したカラギリの懐に一瞬で飛び込み。カラギリを真っ二つに切り裂いた。


 「つえ~…」


 天動学園出身だから強いとは思っていたがこれほどとは…なぜ今更になって味方してくれたのかはわからない。だけどこのチャンスを逃す必要もない。自分の出来ること…


 「やる!!」


 ボクは思いっきりブーストを掛ける。機体に掛かるGが自身にもやってくる。それに耐えつつ向かった先にはスノウを警戒してこちらに意識を向けていないスレイガーが居た。


 「うおぉおおおおおおお!!!!!!!!」

 『何!?』


 ボクはスレイガーに抱き着くようにソルトを動かす。そして素早くボタンを押す。


 「この機体はもう持たないなら。せめて一発ぅ!!!」

 『まさかお前!?』

 「エネルギーを吸収する盾でもこれは吸収しきれないんだろ~!!」


 そして最後の引き金を引いた。ソルトが内部から崩壊し、そしてそれが引き起こすすさまじい爆発がスレイガーの機体を破壊していく。後に残ったなのはソルトの機体とスレイガーの機体の慣れの果てだった。


☆☆☆


 やられたプレイヤーが送られる控室でボクは戦況を観戦していた。彼女、白雪ミカのパイロットスキルはすさまじく。あっという間に量産機を駆逐し防衛に成功していた。とにかくこれでどうにか…


 「首の皮一枚つながった~…」


 ぐったりと倒れる。なかなか大変な戦いだった。それにまだ終わっていない。あと二週間のうちに敵陣地を侵略しなければいけない。スノウが戦力と加わったとしてもソルトは完全に壊れ、修復が追い付かない。二機で戦い続けるしかない状況だった。


 「せめてもうちょっと資源があればな~」


 ボクは地図を表示し、ため息を付く。うちの陣地は最低限の鉱山を確保しているだけで他の資源はない。より良い機体を複数作りたいなら他の陣に行き、鉱山を奪うか、採集フェイズで戦えるポップする敵を倒す必要がある。どちらにしても現在の状況では不可能な事だった。


 そんなことを考えている間に、ミカと龍玄が返ってくる。アタックフェイズも終了し、今日を何とか無事に生き残ることができた。


 「ま、とりあえず。今日も無事。部が存続できたことを素直に祝うとしよう」


 ボクはログアウトボタンを押した。


☆☆☆


 「どういうことだ!!」


 部活が終わり、教室へ戻っていたボク達を出迎えたのは二条先生だった。ミカさんはなぜ来てくれたのかは後で話すと言って教室まで話さなかったので。聞ける時間がさらに無くなりそうなこの状況にボクはげんなりしていた。


 「二条先生どうしたんですか?」


 ボクは冷静に言葉を返す。すると二条先生は口から唾を飛ばしながらこちらに詰め寄った。


 「なぜ!?部員が一人増えている!!」

 「それは…ボクに聞かれても」


 ボクはちらっとミカさんの方へと目を向ける。ミカさんは飄々とした風でって言うかなんか雰囲気変わった?二条先生の視線を受け流す。するとボクが答えられなかったことに気付いた二条先生はにんまりと笑顔を浮かべた。


 「そうか、助っ人を雇ったんだな。だがな銀川。部員じゃない人間をゲームに参加させるのはルール違反だ。ははははははははははははっははああああっぁあ!!!!これぇでぇ~!!ロボ部も終わり終わり終わりだぁあああ!!」

 「な!?」


 確かにそうかもしれない。ミカさんは部員じゃない。それを使って勝ったところで勝ちには…


 「彼女は部員ですよ。れっきとしたロボ部のね」


 その言葉と共に一人の老人が入ってくる。そう校長先生だ。


 「彼女がゲームに参加する直前にこれを彼女から渡されましてね」


 そう言って校長先生が見せたのは雑な字でロボ部と書かれた入学届だった。


 「な!?」


 二条先生が狼狽える。校長先生は淡々と進めた。


 「私に渡された時点でしっかりと処理を行いました。そこにいるのは正真正銘ロボ部の部員…白雪ミカさんです」

 「そ、そんな馬鹿な…いや、くくく。まだだ。まだ終わっていない…そぉうだょおう!陣地をとらなぁくちゃいけないもんなあ~!!銀川!!まだまだ終わってないもんな~!!」

 「二条先生」


 校長先生が二条先生の方へと向き直る。二条先生はきょとんとした顔で校長先生を見る。


 「…先ほど部員以外を頼るのはルール違反と言うお話でしたが、あなたがこのゲームに関して何か妨害を行うこともルール違反として失格にしますからね?」

 「…!!」


 何かをするつもりだったのか釘を刺された二条先生は驚きの顔を見せる。だが言い分を認めたのか苦い顔をして呟く。


 「やだな…校長先生。私が生徒にそんなことするわけないでしょう?」

 「ええ、私は信じていますよ。二条先生がそのような人ではないことを。ですがことが起れば私はロボ部に決定を下したようにそれ(・・)を切り捨てなければなりません。ゆめゆめお忘れなきようお願いしますね」

 「…」


 そう言って校長先生は去っていく。


 「…っち!!」


 二条先生はゴミ箱を思いっきり蹴とばし去っていった。


 それを見たミカさんが呟く。


 「あの男は何であんなにあんたたちに敵意を向けているの?」


 その言葉にボクはぶっきらぼうに答える。


 「知らないよ」


 龍玄は少し説明をした。


 「ああ~。なんでもアイツ、バスケ選手になれるはずが視力の低下で夢破れたんだと。それでまあ、腐って…ユウは変なところでまっすぐだからきっと眩しすぎてたまらないんじゃないかな?」

 「変なところってなんだよ~」


 ボクはそう言って龍玄に飛び掛かる。龍玄は変は変だろうと言いながらそれを軽くいなした。そしてそれを聞いていたミカは言葉を漏らした。


 「そう、じゃああっちが()の末路だったのね」

 「え?なんか言った?」


 聞き取れなかったので再び聞こうとするが彼女は言葉を濁して流す。


 「なんでもないわ。アタシがロボ部に入った理由と言うより入りたくなかった理由は言いたくないわ。ただ一つ言えることはくだらないプライドに囚われて本当に大切なものを見失ってたってことかな。どこに居ようとたとえ出来なくてもアタシがロボ好きなのは変わらないってことに気付いたのよ」

 「そうだよね!そうだよね!どんな時だろうと好きって気持ちは変わらない!!それでこそ同士だ!!」

 「ど、同士!?」


 ミカさんが素っ頓狂な声をあげる。


 「そう、同士。今日から同士Mってミカさんのこと呼ぶね」

 「やめて」


 ミカさんはきっぱり否定する。


 「ど…」

 「…」


 睨まれたのでこれ以上同士呼びはやめることにした。


 「…まあ、とりあえず部員も一人増えて新生ロボ部の結成だ!!」

 「ああ、まだまだやることは残っちゃいるが潰さないようにがんばろーぜ!!」

 「アタシが来たからには負けは無い。許さない!!絶対勝つわよ!!」


 「「「おー!!」」」


 こうして意気込みも新たにロボ部の戦いは始まった。

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