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失敗


 ホームルームと授業が終わり休み時間になる。美少女とも言える外見をしているミカさんの元には多くのクラスメイトが駆けより、彼女に質問を投げかけていた。


 「ねえ、どうして転校してきたの?」

 「趣味は何かやってるの?」

 「肌綺麗~どの化粧品を使ってるの?」


 「あの~すみません。一度にそんなに質問されても…」


 勢いの凄さにミカさんは苦笑しながらも距離を置こうとする。ここだ!この瞬間しかない!!ボクは勢いよく集団の中に飛び込んだ、そしてクロールを泳ぐように人を無理やり掻き分けて近づいていく。


 押しのけた人に文句を言われながらも突き抜けたボクはついにミカさんの前に躍り出た!


 「ロボはお好きですか!!」


 心からの一言、人とのコミュニケーションは大体これから始まるのだ。あの機械美しさ、重厚な質感…練り固められた設定から醸し出されるハーモニーは見るものを魅了する。多くのクリエーターの魂が込められた物…それがロボだ!


 ボクの質問を受けたミカさんは一瞬驚いたあと、悩む素振りを見せる。だがそれを直ぐにかき消すと笑顔を作った。


 「嫌いです。見ると吐き気がします」

 「嘘だ!ロボが嫌いな人間なんてこの世にはいない」

 「いや、いるにはいるだろう」


 外野から心無い言葉が聞こえる。だがこの程度で屈するものか。


 「ろ、ロボはお好き…」

 「こら!やめろユウ。部長のお前がその調子だとロボ部の評判に関わるだろ~が!」


 後ろからボクを縛りつけながらそう言った彼はうちのロボ部のもう一人の部員赤井龍玄だ。彼は羽交い絞めにしたボクをズルズルと後ろに引っ張っていく。


 「ロボは…ロボは…!!」

 「落ち着けっての!!」

 「お好きですか~!!!!」


 断末魔のように最後の言葉を残したボクはクラスの外へと連れて行かれる。それを見た一人の生徒が状況に困惑していたミカさんに話しかける。


 「ごめんね~ミカさん。アイツ。ああ、銀川ユウって言うんだけどね。とんでもないロボットバカだからさ~」

 「ロボットバカ?」

 「そうそう、ロボ部部長やっててさ、ロボ部を盛り上げるためにところ構わず見どころのありそうな者にさっきみたいな勧誘しまくってるからね」

 「ロボ部?…この学校に有った?」


 ミカさんはその声を聴き後ろを振り向く、そこには所々跳ねた黒髪のショートに病的なまでの白い肌をした少女が居た。それを見た生徒は彼女に声を掛ける。


 「お、みどりっち。何を当たり前な…ああ、そうだ、確かちょっと前まで入院してたんだっけ。それじゃあ知らなくてもしょうがないか。…もともとあることにはあったんだけどね部員ゼロでほぼ無いようなものだったわけ、っで、このまま放置するのもあれだし正式にロボ部をなくそうかって話になった時に龍玄と自分の二人分の入部届けを叩きつけてそれを阻止したのがあの銀川なんだよ。…それでも学校側は、あの二条がごねたらしいけど。「ロボ部がなくなるならこんな学校やめてやる」って銀川が暴れて…まあ中学って義務教育じゃん?問題起こして止められると色々悪い噂たつし、校長が意気込み買ってくれたから存続することになったわけ。まあでも本来は部活は5人いなければ部活動として認めないのが決まりだから結構無理している状況らしいけどね。…あいつの必死さはその辺も関わってくるんじゃないかとあーしは思ってるわけだけど…これで説明になったかな?」

 「あ、はい。大丈夫です。ありがとうございます。茶畑さん」


 そこまでいった所で少女は自分がミカさんに見られていることに気付いた。そして慌てて手を顔の前に持っていて振る。顔は羞恥心から少し赤くなっていた。


 「あ、あ、す、すみません。まだ名乗っていませんでした…私は緑間あけみと申します…!」

 「白雪ミカです」


 丁寧に頭を下げた緑間さんに同じように上品に頭を下げ返して挨拶をするミカさん。それを見た茶畑さんはああ、と思い出したように会話を始める。


 「そう言えばミカさんってロボ甲子園で有名な天動学園に居たんだっけ?どうなのロボ甲子園の本場は?やっぱアイツみたいなロボバカばっかなの?」

 「え!?…いや、私は余りロボ甲子園と関わっていなかったので…でもどちらかと言えば普通なというより冷めた人が多かった気がしますが…」


 ミカさんは少し表情を崩してそう答える。すると茶畑さんはさして気にすることなく返事を返した。


 「同じ学校なのに詳しく知らないの?…ああ、そう言えばロボ嫌いなんだっけ。なら仕方ないか…まあトップチームともなると勝利重視でしてるのかな…」

 「…」

 「あ、ごめん何か気に障った?あーし、結構ずけずけ言っちゃうタイプだからさ。何か不満があったら遠慮なく言ってよね」

 「…いえ、大丈夫です。それよりそろそろ…」


 その瞬間、チャイムが鳴る。


 「あ、時間だ。じゃあね。この学校で分からないことがあったら遠慮なく質問してね」


☆☆☆


 授業が終わり、休み時間になるたびにボクは何度もミカさんの元へと駆け寄る。だが、それはことごとく無視され、邪魔されていた。


 廊下を歩いている、ミカさんに向けて駆け出す


 「ミカさ~ん!ロボは…」

 「インターセプト!!」

 「うへ!!」


 駆け出した先で龍玄に足払いを仕掛けられ転げる。


 「ぐぬぬ…!まだまだ!!」


☆☆☆


 食事時、この時間なら人は無防備になるはずだ。ボクはこっそりとミカさんの後を付けようとして…。


 「ユウちゃん?さすがにそれはどうかと思うよ?」

 「ちゃ、茶畑彩里さん…いやだな~さすがのボクもそんな…いやだな~そんな犯罪者のような目で…いや…だな…」


 笑顔で肩を掴む茶畑さんに止められ失敗する


☆☆☆


 「まだだ、まだ終わらんよ!!」


 放課後、部活タイム。陣地の防衛を龍玄に頼み。ボクは再びミカさんを誘うために行動を開始する。

 放課後なら龍玄の邪魔も茶畑さんの邪魔も入らない。最大にして最高のチャンスだ。


 そうして駆け出したボクの前でミカさんはこちらを待ち受けるように立ち止まっていた。


 「おお?」

 「…何度も付きまとわれては迷惑なので…しっかりとお話をしようとお待ちしておりました」

 「おお!!やっとロボ部に参加してくれる気になったの!?」

 「…いえ、ロボ部には絶対に入りません。それを言いに来たのです」

 「なんで!?」

 「…いやなんでって…」


 ミカさんは困ったような顔をする。だが僕にはわかる。


 「だってミカさん。ロボ好きでしょ?さっきは嫌いなんて嘘ついてたけど」

 「…っ!…なんでそのようなことを言うのですか?」

 「わかるんだよ!だって同類だから!!その心の奥底から迸る熱いロボ魂が!!煮えたぎっているのをね!!」

 「…仮に…。仮にそうだとしてもそれとロボ部で活動することは別です。私はもうマシニクルワールドはやらないことに決めたんです」

 「え…?」


 ロボが好きなのに、熱い心があるのにロボ部で、ロボ好き同士の遊び場であるマシニクルワールドをやらないなんて…


 ボクがそう考えている間にミカさんは話を続ける。


 「だからごめんなさい。ハッキリと断らせてもらいます」


 きっぱりと言ったミカさんの目には強い意思が込められていた。ボクは握りしめていた手をほどく。


 「そ…か。まあ、なら仕方ないよね!時間取らせて後免。ボクようがあるからこれで!」


 勧誘に失敗し、ボクは逃げるように立ち去って行った…。


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