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ため息が吹き飛んだ

「そうか」

オレは納得した。そして思わず笑ってしまった。リョウがギョッとしたようにオレを見た。

やっとわかった。オレはあいつが好きなんだと。






ため息が吹き飛んだ







「はぁ」

最近、オレとリョウのため息の回数が増えた、らしい。リョウはともかくオレは普通のはずだ。

「ヤマトさん、またため息ついてますよ」

そう、オレは普通のはず。だがこいつの前ではおかしくなる。

「幸せ、逃げますよ」

「…もう逃げてる」

オレはため息をついた。ひとみは首をかしげる。

「悩みですか?」

お前が悩みの種だよ。

再びため息をついた。

なんでこんなにこいつが気になるんだ?とずっと心の中で問うが答えは見つからない。

「相当重傷ですね」

「全くだな。まぁ、別にそこまで重要なことじゃないけど」

「そうですか?」

一応頷いておいた。本当はかなり重要なことだと思っている。

「ため息ブラザーズの兄は何処行った?」

「カナトさん、何だよそのため息ブラザーズって」

「んぁ?お前とリョウでため息ブラザーズ」

どう?という感じで肩をすくめるカナトさん。絵になるけど、かなり嫌だ。

「ヤマトも恋煩い?」

クスクスと面白そうに笑うのはヤスシさん。

「違う…リョウって恋煩いなのか?」

「情報遅ぇなぁ。リョウの奴、デートの相手に恋したらしいぜ」

カナトさんは絶対面白がってる。その証拠ににやにやと笑ってるし。

「意外、だな」

「確かにね」

ヤスシさんがオレの呟いた言葉に同意した。そりゃそうだろう。オレたちの知っているリョウは、必ず客と自分の間に線を引く奴だ。そんな奴が客に惚れたなんて信じられない。

「ヤマト、ここは兄弟水入らずで語ってこいよ」

「…オレに聞き出してこいと?」

「さぁな」

カナトさんは肩をすくめにやりと笑った。ヤスシさんは笑うと

「僕からもお願い」

と言った。

「嫌だ」

「つれないねぇ」

「そんな聞きてぇなら、カナトさんが行けよ」

「いやいや、ここは悩める青少年が行くべきだろ?」

「確かに…。ヤマトさんが相談に乗ったらリョウさんの悩みが少し楽になるかも知れませんね」

オレは何も言えなくなった。


「リョウ、何黄昏れてるんだよ」

「…ヤマトか」

リョウは『イノセント』の屋上のフェンスに寄りかかってタバコを吸っていた。

「別に黄昏れてねぇよ」

「恋したらしいじゃん」

そう言うとリョウの動きが面白いぐらいにピタッと止まった。その姿を見て確信した。本当だということを。

リョウはため息をつく。オレはそんなリョウの隣に移動した。

「……オレさ、」

「ん?」

「25になったら実家戻るっつう約束してるんだ」

「ホスト、やめるのか?」

「ああ」

リョウはタバコを地面に落とすと足でもみ消す。

「別にやめるのはいいんだ。けど、あいつに会えるかもしれない唯一の接点が消えるのが、嫌なんだよ

「…お前らしくないな」

「全くだ」

自嘲気味に笑うリョウ。オレはそんなリョウに聞いてみたいことを聞いてみた。

「ため息はそいつのせいか?」

「…そう、だな。あー、オレが恋煩いかよ」

オレのため息の原因はひとみだ。

あいつを見ると何故かオレは『ヤマト』というオレを作らなくていい。女なのに。

「なぁ、リョウ」

「何だよ」

「何で、ため息をつくんだ?」

リョウはキョトンとした顔をしていたがすぐ真顔に戻った。

「何でって…あいつの気持ちがわからねぇとか、会いてぇのに会えねぇとかそんな感じだ」

「あいつの気持ち」

確かにオレはあいつの気持ちを知らない。改めてそう思うととても不安になった。

「そうか」

オレは納得した。そして思わず笑ってしまった。リョウがギョッとしたようにオレを見た。

やっとわかった。オレはあいつが好きなんだと。あいつの気持ちが見えないのが不安でため息ばかりついていたのか。

「リョウ、サンキュウな」

「何がだよ」

「…いや、別に」

リョウはいぶかしげにオレを見た。オレはちょっと笑った。

「悩みの一部が解決した」

「そりゃ、よかったな」

「そんなに会いてぇなら会えばいいじゃん」

「…お前なぁ」

「案外そいつもリョウを待ってるかもしれない」

そう言うとリョウは考え込むように目をふせた。しばらくしてからリョウは顔を上げると、弱々しく笑った。

「そうだといいな」

「ホント、お前らしくない」

「自分が一番わかっている」

そう言ったリョウの表情はうつむいていたせいでよく見えなかった。


「………カナトさん、ヤスシさんは?」

「帰りましたよ」

あんの二人…。人に頼んどいてそそくさと帰りやがった。

オレはため息をつくと脱力した。

「リョウさん、本当にデートの相手に?」

「ありゃ相当重傷だ」

いつもは自信に満ちたリョウがかなり弱気なのだ。槍が降ってもおかしくないぐらいに。

「何で私の周りには恋に悩む人があつまるんだろう?」

「なんだ、それ」

「あ、実はですね」

話によるとひとみはこのホストクラブに入ってから人からよく恋愛につて相談されるらしい。

「お前も大変なんだな」

「そうですか?」

オレは頷いた。

恋愛相談なんてオレにはできねぇし。

「ヤマトさんも大変なんじゃないですか?」

「ああ…」

そういえばそうだった。あれは多分、

「悩みが何なのかわかったんだ」

オレはひとみを見た。ひとみは不思議そうにオレを見ている。それを見ていると自然と笑みが浮かんだ。

「もうため息はでねぇよ」

ため息の原因はお前が好きなのを悟っていなかったからだ。

「……しばらくしたらまた出るだろうけど」

今は快い気持ちだが、またこいつについて色々考えるんだろう、きっと。

まぁ、それは惚れた弱みってやつだろうな。それが恋愛の醍醐味だろうし。



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