第三話 あの世の法廷
アキラが気がつくと長い人の列に並んでおり、列の先には赤い城のようなものが建ち辺り一面は様々な花が咲き乱れていた。アキラが訳も分からずそのまま並んでいるといよいよアキラが城に入る番がきた。
巨大な扉の先には長い廊下があり、その先には先程の扉より少し小さい扉があった。
「霊魂ナンバー666番、入ります」
その少し小さな扉の横に立っていた角の生えた男がそういうとアキラは凄い勢いでその中に吸い込まれていった。
「痛ってー」
アキラが吸い込まれたハズミで頭を打ち、頭を摩りながら起き上がるとそこには裁判所のような光景が広がり、真ん中には一際目立つ真紅の角を生やした女がダルそうに座っていた。
回りには蒼い角を生やした男達が書類をパラパラとめくったり何かを話したりしていた。
カンッ!
いきなり小槌を思い切り叩く音が辺りに響いた。
すると、真紅の角を生やした女の横に座っていた年をとった男がスッと立ち上がった。
「ゴホンっ え〜霊魂ナンバー666番、比嘉一馬よ当法廷はオヌシ達魂を前世での行いその他モロモロを視野に入れ、その魂を公平に裁く為のものである」
「ちょっ・・まってよ」
アキラが訳を説明しようとするのも無視してその老人はどんどんと話しを進めて行った。
「ちょっと待てよ!」
アキラの声が部屋中に響き渡り老人の声を掻き消した。
「人が話してる時ぐらい静かにせんか 比嘉一馬よ」
「だから、俺はその比嘉とかいう奴じゃないって言ってんだろ!!」
「何を言っておる、オヌシの名前は比嘉一馬。十人以上を惨殺した連続殺人鬼で、今日の午前11時5分2秒に転倒による後頭部強打によって死亡とこの書類に書いてあるわい」
「ちがうんだ!」
アキラは自分が比嘉一馬ではないことを必死に訴えたがついに聞き入れてもらえなかった。
「何と見苦しい奴、自分が地獄行き決定と踏んで別人になり変わるつもりか もぉ良い早くソイツを連れてけ!」
老人が指示すると、アキラが入って来た扉の左右にある扉の右扉が開きアキラを吸い込み始めた。
「違うんだ!オレは、、オレは比嘉一馬なんかじゃないんだ!」
部屋の中にはアキラの悲痛な叫びが何度も、何度も響き渡った
「扉を閉めろ!!」
真紅の角を生やした女が突然声を張り上げた。
それに一番驚いていたのは横に立っていた老人であった。
老人は慌てた様子で
「と、扉を閉めよ!」
と言った浮き始めていたアキラの体は床の上に音を立てて落ちた。
「何故です!?ラディア様!アヤツは重罪人ですぞ!地獄に行くのは当然です!」
詰め寄る老人を少し煙たそうにあしらうと、そのラディアと呼ばれる女は老人に向けていた視線をスッとアキラに向けた。
「わかってるわよサイフォ。確かにこの子が比嘉一馬なら間違いなく地獄行きだ。でも、いつも話しを聞いていない私だが・・ただな、私にも人の懸命な言葉位聞こえるよ」
サイフォも少しふてくされたように椅子に座り直した。
「さぁ少年、何があったのか話してみろ」
アキラはことの全てを話した。
アキラが話し終わると法廷の中はざわざわと騒がしくなった。
「なるほど」
「騙されてはいけませんラディア様!こんな話し、ただのでっちあげですぞ」
「いいやサイフォ、私は少年を信じるぞ」
「何故ですか?ラディア様!」
「何故って、話しを聞くかぎり比嘉一馬が使ったのは間違いなく我々執行部の武器だ。常人が出任せで言ったにしては詳し過ぎる。それに・・」
ラディアは配られた書類をサイフォの顔に押し付けた。
「だってこの比嘉一馬は28歳、この子はどう見ても高校生」
「あ・・」法廷にしばらくの沈黙が漂った
カン!カン!
「当法廷は真田 アキラを無罪と認め現世に帰還することを許可する」
「やっ・・たー!!」
法廷にはアキラの歓喜の声がこだましていた。