第8話:練習試合。後編
「おっしゃー! まだまだ行くぞ喜名森ー!」
「はい! バッチこいです! 早川先輩!」
シュッ! シュー…パンッ!
くっは〜気持ちいい〜! マジ最高だぜ!
今俺達は、ブルペンでピッチング練習をしている。
喜名森はあまりキャッチャーって体格はしてなく、身長175cmくらいで、体重は65kgと至って普通の体格だが、予想以上に投げやすく構えてくれて、確実にボールを見て捕っているため、安心して投げることができる。
なんで監督はコイツにキャッチャーやらせねぇんだよ!
「ナイスボール!」
受け捕ったボールを投げ返して、喜名森が言った。
よーし! もうちょい速く投げてみっか!
俺は、ゆっくりと左足を股関節辺りまで上げ、位置エネルギーを作り、そのまま尻から前にいく感じで体重移動をする。
体重を乗せる左足の爪先を相手の方向に向くように力強く踏み込み、グローブを抱え込むようにして体に巻き込み、自然な筋肉の動きに逆らわぬよう、力まずに思いっきり大きく腕を振る。
シュウァ! シュギュウルルルルルゥゥゥ!
そして、振り切った腕に負担をかけないよう、体に巻き付ける感じで、体重移動をした足側に腕を持っていく。
ズバーン!!!!!
「…は…はえぇ…ちょっと半端じゃねぇぞこのスピード…」
ど真ん中に突っ込んでいったボールは、抉るように喜名森のミットに吸い込まれていく。
くっは〜! 気持ちいい〜! やべぇなこりゃ! これだから野球はやめらんねぇぜ!
「は、早川先輩! すげぇーッス! 俺、人がこんな速い球投げるの初めて見ました!! やべぇー絶対甲子園行けますよ!」
「はっはっは! そうかぁ! だけど、もうちょい速く投げれるぜ?」
「マジっすか!? じゃあ、あと変化球とかあったら無敵ですね!」
「いや、まだ変化球はいいよ。俺、まだまだ速くなると思うんだ。でも、変化球に頼ってたら速くなるもんも速くならないだろ? だから、せめて覚え始めるとしても、5月からかな」
「そうッスね! その時は俺も協力しますよ!」
「あぁ! 頼むぜ!」
「お〜い。和也、喜名森君! 集合だって監督が呼んでるよ!」
ブルペンの入り口からヒョコっと顔を出して、俺達を呼んでいる女の子。
上から下までジャージ姿という、まさにマネージャーな女の子。………香織。
なんで香織がマネージャーかと言うと、
「私、甲子園行きたい!」
といきなり言い出して、マネージャーになってしまったわけだ。
「あぁ。わかった! いまから行くよ!」
俺は軽く返事をして、ブルペンを後にした。
どうも、リリィです!
今回も『野球バカ』を読んで下さってありがとうございます!
次回は、『対戦!星見高校!』です!
それでは、次回もまた読んでいただけると光栄です。
リリィでしたー