第5話:賞品
「え〜っと…3?」
チャリンチャリ〜ン!
「おめでとうございます!三等です!それでは、このクマさんをどうぞ〜!」
「きゃ〜!和也やったね!当たったよクマさん!」
「あ…あぁ…」
全然うれしくない…なに?クマさんって!クマごときに敬語かよ!?人間も落ちたもんだぜ!
「…なぁ香織」
「ん?なに?」
「俺…これいらねぇんだけど…」
「いいじゃない!かわいいんだからぁ!部屋にでも飾ればぁ?」
男の俺にクマさんを部屋に飾れと?論外だな。
「俺、これいらないからお前にやる」
「えっ!?本当に?!」
「あぁ…だって俺いらないから…」
「やったー!私クマさん大好きなんだぁ!和也ありがと〜!」
素直に喜ぶ香織。こうして見てると香織ってかわいいかも…
「和也どうしたの?早く帰ろうよー」
「あ…あぁ。そうだな」
ぐぅ〜…
腹がなった…俺はケータイを見た。今は13時20分。さすがに腹がへったな…
「「あの…」」
「和也が先にどうぞー」
「あ、あぁ。飯食いに行かね?俺、腹減っちまってよー」
「うん!いいよ!私もそう言おうとしてたんだ!」
「そうなん?で、どこに食いに行く?どっか行きたい場所あっか?」
香織は少し迷った後に言った。
「えっと…吉野屋…」
「よ…吉野屋…ですか…今、牛丼あったっけ?」
「…何よ!?あるわよ!悪い?私は豚丼が食べたくなったのよ!吉野屋は牛丼がすべてじゃないわ!何を頼んでも、安くて早くて美味いのよ!…何よ!そのかわいそうな人を見る目は!あんただって本当は牛丼より豚丼が食べたいんでしょ?そうなんでしょ!」
熱く吉野屋について語り出す香織…俺は別に豚丼は…
「クマを握り締めて言うセリフじゃないな…まぁ…いいよ、吉野屋で…」
なんで香織のテンションがおかしいのか分からないが、とりあえず同意しといた方が良さそうだ。
「…何?不満?…ねぇなにが不満なの?教えてよ!吉野屋のなにが不満なのよ!…あぁ!あれか!あれね!吉田屋の方がいいのね!?」
「えっ?あ、いや!俺は別にそんな…俺も豚丼が、食べたいな〜って!」
やばい…裏目にでた!どうしたものか…
「ふーん…本当にそう思ってるの?」
「は、はい!そう思っています!」
「じゃあいいわ!このまま吉野屋へ行くわよ!荷物もってね!」
「はい!荷物は俺が持ちます!」
吉野屋へ向かって行く俺たち…少し歩くと、オレンジの看板が目に入った…こんな近くにあったのか…
…
…
…
帰るときに香織から聞いた話によると、香織は吉野屋の隠れたファンらしい…なんだそれ?…その日疲れた俺は帰ってからすぐに寝た。