第12話:ムービングファーストを潰しちゃる!
「え〜…ただいまより、星見のピッチャーが放ってきやがった、“ムービングファーストボール”をどうやって…はい。ぶっ潰すかを考えたいと思います」
え〜…今日の部活は、先ほどキャプテンの東堂院流が言ったように、前回の試合で星見のピッチャーが放ってきやがった“ムービングファーストボールをどうやってぶっ潰すか”である。
まぁ、俗に言うミューティングだ。
確かにあのボールは早い内に潰さなければならない(いや、別に怪我をさせるわけじゃない。2〜3回くらいまでにボコすかに打ち潰すってことだ)。
「はいはーい!」
「はい! 亜麻利!」
意外にも、最初に手を上げたのは1年の雨水亜麻利だった。
いったい…いったいどんな策があるんだ亜麻利!
「“裏で回す”」
回すって…何を? いったい何を! 何を“回す”んですか! 亜麻利さん!
「おー! いいねー! いいよー! “裏で回す”っと…」
どこからかノートとペンを取り出し、メモをし始めた流。
いや、これ、メモするようなこと言ってねぇだろ!
「よしよし。じゃあ次は…」
「はい!」
「よしきた! じゃあ元気いっぱいの城ヶ崎!」
次に手を上げたのは、2年の城ヶ崎太一だった。
頼む城ヶ崎! お前ならできる!
「“とりあえず諦める”」
城ヶ崎ぃぃぃぃ!!
「そうそう、何事も引きが肝心! “諦める”っと…」
そして、ひたすらメモる流。
ってうぉい! これこそメモる意味ねぇだろ!?
「じゃあ次は…矢澤いってみよー」
次は1年の矢澤賢太か…。
どうせコイツもろくな事は言わねぇだろうけど…。
「はい! え〜…自分は…“本能でボールに食らいつく”といいと思いまっす!」
ほ…“本能”…いいじゃねぇか。
“本能”くぅ〜いいね!
「きたー! きたよコレ! 本能か…いい響きだぜこの野郎!」
キーンコーンカーンコーン!
「あっ5時のチャイムだ! よし! じゃあ、対策は、“ムービングファーストは本能で打て!”で、決定でいいかー?」
「おー!」
「じゃ、これにて解散!」
結局、何の対策もできぬまま、今日の部活は終わった。