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第二話 前任者が死んだので、配達物を俺が届けることになった件

あらすじ

前回、配達対象は――“俺自身”になっていた。


そして、強制的に異世界へと送り込まれる。

主人公・直樹を待っていたのは、

ふざけた案内役・ビーナスと、たった一つのルール。


「配達物を届けなければ、帰れない」


しかも――前任の配達人は、すでに死んでいる。

逃げれば、次の誰かが死ぬ。

進めば、自分が死ぬかもしれない。

それでも俺は――


「……俺がやる」


命がけで“届ける”異世界配達の物語が、今、幕を開ける。


「うぁーーーーーーーーーーーーーーーーー」

風が顔面に叩きつけられる。

体が落ちている。

いや、落とされているのか。

「痛ッたたたた……」

背中を強打して、息が詰まる。

「はぁ、はぁ……っ」

呼吸を整えながら、顔を上げる。

地面は見知らぬ石畳で、ひび割れていた。

「さっきまで俺はリビングにいたはずだよな……」

見上げた空は、紫と青が混ざった不気味な色をしていた。


【転移完了】

――機械音声が、頭の中に直接響く。

「……は?」

視線を落とす。

そこには――見覚えのあるポストがあった。

「なんで、これが……」

家の中にあったはずのものが、目の前にある。

理解が追い付かない。

「ここはどこだ……?」


「こんにちは!直樹(なおき)しゃま!」

「はじめましてでしゅーー!」


「……しゃま?」

声のしたほうを見る。

――白い塊がぴょこぴょこと跳ねていた。

手のひらに収まるほどの大きさで、丸くて、やたら元気だ。

――しかも


「しゃべってる……」

驚きで体が固まる。


「そうですよ!しゃべれましゅ!」


――理解が追い付かない。


「ハハハ……」

あまりの状況に、乾いた笑いが漏れる。

「あーなるほど」

「夢だ」

「現実なわけがない」


――スン。

俺はその場に倒れた。

異世界なんて、あるわけない。


「……う、う?」

顔に、何かが押し当てられている。

ふわふわしていて、触ると妙に生々しい。

――くんくん

「……クッサ……!」

思わず顔をしかめると、


「なっ失礼でしゅ!」

目を開ける。

――視界いっぱいに、白いケツがあった。

「お前ッ!?何しているんだ!!」


反射的に跳ね起きる。

「起こしてあげたでしゅよ!!」

「起こし方おかしいだろ!!」

慌てて息を整えながら、視線をそいつに向ける。

――小さな体、跳ねるように動く。


「……ところで、お前は何者だ?」

「いい質問でしゅ」

そいつは胸を張る。

「私は案内役のビーナスでしゅ!!」

「……はぁ」

思わずため息が漏れる。


「なんですかその反応は!!」

「まぁいいでしょ!」

けろっと表情を切り替える。

「それより――」

ビーナスは、ポストに手をかざした。


「あなたは“配達人”に選ばれたんでしゅよ」

「ポストの中を見てくだしゃい」


「……え?」


「最初の配達物は、届いていましゅ」

「配達物……?」


言われるまま、ポストへと近づく。

半信半疑のまま、手を伸ばす。

扉に手をかける。


その中には――


赤いリンゴが、一つだけ入っていた。

……妙に、見覚えがあった。

手に取る。

指先がわずかに止まった。

「って……おい……これって?」

「これ、俺が昨日入れたやつじゃねぇか」

「いいえ、違いましゅ」

「なんだよ、それ」


「それは“前回の配達物”でしゅ」

「前回……?」

「前回の配達人は――」

ビーナスは、あっさりと言った。


「そのリンゴを届けることは、できませんでしたでしゅ」

「……」

言葉が出なかった。

喉の奥が、わずかにひりつく。

「それって……」

「はい!!死にましゅた!!」


「やだ……やだ……無理だ……!」

一歩、後ろへ下がる。

「そんな配達、絶対やらないからな!!」

「落ち着いてください!!直樹しゃん」

「前回の配達は、運が悪かっただけでしゅ」


「いや説得力ゼロだろ!!」

思わず叫んだ。

「なんでそんな明るく言えるんだよ……」


こいつは何なんだ……

無言でビーナスを見つめた。

「な、なんでしゅか直樹しゃん!!」

「そ、そんなに見つめて……」

「ま、まさか――」

「発情でしゅか?」

「ちげえよ!!」


……やっぱりこいつ、頭のねじ何本か抜けている。

「そんな配達、やるかよ。俺は帰る」

くるりと背を向ける。


「な、直樹しゃん!!」

「なんだよ!」

「どうやって帰るんでしゅか?」

「……」

足が止まった。


「帰還には条件がありましゅ」

「それが、配達物を送り届けること――それ『だけ』でしゅ」

「ドリースト城へ……」

「……」

無意識にリンゴを握りなおす。


――帰れない。


「ですけど……」

ビーナスが、わざとらしく肩をすくめる。


「そんなに嫌なら、しょうがないでしゅね」

「別の人をあたりましょう」

「残念でしゅ」


「……」

その言葉に、引っかかった。

「別の人って……」

「次の配達人でしゅよ!」

「直樹しゃんが無理なら、また誰かがここに来るだけでしゅ」


「……」

手の中のリンゴを見る。

さっきより重く感じた。

――前回の配達人は、死にました。


「……おい」

喉が、少しだけ渇いた。

「その“次のやつ”も死ぬのか?」

「可能性が高いでしゅね!!」

「運が悪ければ!!」

「……」


手の中のリンゴを、強く握る。

心臓が早鐘(はやがね)のように打つ。

怖い――けど、逃げるわけにはいかない。


「……ふざけるなよ」

小さく、吐き捨てた。

「そのリンゴ、届けりゃいいんだろ」

前回の配達人は死んだ――

それでも、俺がやるしかない。


「……俺がやる」


「俺がやった方が、マシだ」


俺の言葉にビーナスは目を輝かせた。

「さすがでしゅ!!直樹しゃん!!」

「ではいきましょう!!」

「ドリースト城へ!!」

――こうして俺の、命がけの配達が、今、幕を開ける。


ビーナスがポストに手をかざした。

【認証を確認しました】

無機質な声が、空間に響く。


次の瞬間――

ポストの中から、まばゆい光が溢れだす。


「うぉっ!?」

「さぁ、配達の時間でしゅ!」

足元が崩れ、体が引きずり込まれた。

「ちょ、待っ――!」

光の渦に巻き込まれ、全てが白く(にじ)む。


その中で、ビーナスの声がくっきりと響いた。

「最初の配達でしゅよ、直樹(なおき)しゃん」

「死なないように、頑張ってくだしゃいね!!」


次回 ドリースト城までの道のり。

命がけの配達?いや、笑いありの地獄あり!?

直樹とビーナス、奇妙なコンビの危険な旅が始まる。

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