バカツンデレとデート①
集合は十時だから。
いくら早く着いたって私はいないからね!
りょ
じゃあ、楽しみにしてなさい!おやすみ!
すみ
LIME。連絡アプリ。
それの会話がこれ。
で、今は午前九時。
待ち合わせ場所には当然のようにひーちゃんが立っていた。
白いワンピース、黒い鞄。
なんか、普段から可愛いとは思ってたけど……
今日、綺麗だな。
「おーい。ひーちゃん」
じっと突っ立っていたひーちゃんは僕の声を聞くと、バッと顔を上げる。
そして、その目を丸くした。
「なに、それ……」
「何って、なにが?」
ひーちゃんはこの世ならざるものを見つめるような目で僕を見る。
「恥は……ないの?」
「あるけど……」
「……そっか」
あれ?またツンだけ?
でも僕なにも悪いことしてないよな?いやまさか、そんなわけ……。
「今日は隣町のショッピングモール行くから。まずは服屋ね」
ひーちゃんが歩き出そうとして、止まる。
そしてなにやらもじもじとしだした。
手を出しては引っ込めて、出しては引っ込めて……
「ねぇ」
ひーちゃんが下を向いたまま喋る。
「今日、で、デート誘ったの私だわよね」
「そうだな」
「じゃあ……ちょっとくらい、私の言うこと聞いてくれるわよね」
ひーちゃんが手を差し出す。
「握りなさい」
え?
あぁ、なんだ。手を繋ぎたいってだけね。
そんなのたまにやるじゃないか。子供の頃なんてよくひーちゃんから手を引っ張ってきたし。
余裕だよ、余裕。
余裕だよ……うん……。
…………。
ぎゅっ
「ん……行こ」
「あぁ、うん……」
なんか今日、いつもと違うな。
なんでだ?
ガタンゴトン ガタンゴトン
クククッ……俺は二十三歳妄想痴漢おじさん!電車の中で女子高生を痴漢する妄想をして楽しむ法じゃ裁けない悪だ!こういう悪はツゥィッターとかにはびこっている!
さて、今日はどんな女子高生を妄想の中で弄り倒してやろうか……クククッ……。
しかし、今日は女子高生が少ないな。なんか外も明るいし……。
あっ、そっか。
妄想痴漢おじさんは同時に休日出勤社畜おじさんでもあったんだ。
妄想痴漢なんてやめよう。どうやって上司に媚を売るか考えないと……。
あぁ、社長になりてぇ……。
「…………」
「…………」
俺の視界に映ったのは、初々しいカップル。
どっちもお互いの顔が見れてない。学校外で会うのは初めてか?
あぁ、いいな。
俺にもあんな時期があれば、何か変わったのかもしれない。
「おいお前ら」
俺はそのガキどもに声をかける。
「どうされました?」
男の方が女を守るように一歩手前に立つ。
そうか。俺みたいな怪しいおじさんに彼女を近づけたくないよな。
「ほら、金だ」
俺は財布から札をすべて取り出し、男に渡す。
「え……?」
「俺にはいらねぇ。デートだろ?贅沢してこい」
「いや、貰うわけには……」
「じゃあな!」
俺は扉が閉まるギリギリで電車を降りる。
「ちょ、待って……!」
そして、隣の車両に乗った。
車両の連結口から困惑しているカップルを眺める。
クククッ……今日は仕事なんてしねぇ。
「「お手並み拝見といこうじゃねぇか……」」
「「ん?」」
電車の連結口から同じようにカップルを見つめる少女。
顔つきからして中学生くらいか?
俺の守備範囲外だな。
「何してんだ?ガキ」
「おっさんこそ何してんの?」
……なるほど、全て察した。
少女も俺と同様に気付いたようだった。
俺たちは握手を交わす。
「目的は同じっぽいな」
「そうだね」
「俺はカラスマ。あんたは?」
「ナツはナツ。にーにの妹」
あのカップルを観察する。
そんな初対面の不審者同士の絆が生まれた。
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