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バカツンデレと体育②

「あ、あのー……ひーちゃんさん……?」


「うっさいわね。心の準備してるのよ、ばか」

「早く気付きなさいよ……」


 ぼそっとつぶやくひーちゃん。


 なんだ?気付く……?僕に恋心があることはとっくの昔に気付いてるぞ?


 いや、違う。他の部分だ。何か僕が気付くべき違和感があるはずだ。


 なんだ?違和感……ん?


 ずっと顔真っ赤だし……しかもなんで胸を隠してるんだ?


「なぁひーちゃ……」


 その時、僕はヤマダの言葉を思い出す。


 ”無自覚ノンデリ”


 なんでも思ったことをずけずけ聞くのは失礼に当たるそうだ。


 そうだな……ここはひとつ遠回しに……


「ひーちゃんは何の唐揚げが好きだ?」


「何のって……どういう分類よ」


「そうだなぁ……ささみとか、もも肉とか、”胸”肉とか」


 さぁ気付け!胸だぞ!胸!胸の肉だ!!


「私あんま違い分かんないわ。味が濃いか薄いかしか理解できないの」


 あっけらかんと言うひーちゃん。


 そっか、そういえばこいつバカ舌だった。


 子供のころひーちゃんの家に夕食を食べに行った時、こいつは塩をすべての料理にかけていた。肉料理にかけるんだったらギリギリ分かるがサラダや米にもかけるイカレっぷりを持つバカ舌。


 そのうえ伝わんなかったし……なんかもっとわかりやすく伝えないとダメなのかな。こいつ鈍感だし。


 よし、今度は数で攻めるぞ。


「そういえば伊達政”宗”は”胸”当てが”概ね”完成したときに死んじゃって”無念”だったらしいよ」


 どうだ!!胸四連撃!


 気付け!!


「は?」


 …………。


 まぁ、そうだね……。


 なんならこれはむしろさっきよりも遠回りともいえる。


 どうすれば気付くんだ……クソ……めんどくせぇ。普通に聞くか。


「なんで胸隠してるんだ?」


 ひーちゃんは腹を決めたような顔をする。


「誰にも言わないでね……」


 そして、背伸びして僕の耳もとに近づく。


 僕は若干腰を折り曲げた。


「実は……」

「        」


 ブシュッ


 鼻から何かが勢いよく放たれる。


「なんだこれ、血……?」


 やばい。頭がくらくらする。


「ありえない……この……僕……が……」


 ドサッ


 意識が遠のいていく。


「ヒナタくんがラスボスみたいなセリフ吐いて死んだ!!」


「血がやばい!マグロの解体現場みたいになってるぞ!」


 死ぬのか?この僕が……?


 いや、まだ死ねない。


 ひーちゃんに告られるまでは……まだ……死ぬわけには……




「ここは……」


 目が覚めると、知らない天井だった。


 多分保健室だな。


 何が起こったのかは大体理解している。


 ひーちゃんがあまりにもエロすぎて出血多量で死にかけたんだ。


「実に良い……」


「何がいーのよ」


 隣から声がする。


「ひーちゃん……」


 僕は上体を起こした。


「わざわざ居てくれたのか。ありがとう」


「べ、別にあんたが心配だったわけじゃないわよ。偶然保健室に居たい気分だっただけ」

「まぁ、ちょっとは私のせいだし……二人っきりがいいし……」


 ぼそっとひーちゃんが言う。


 そういえばこいつの二言目って聞こえてないって思ってんのかな本人は。それとも聞こえてる上で問題ないって考えてるのか?どっちなんだ?


「まっ、そんなことはどうでもいいわ。良いこと知れたし。まさかあんたが……」


 ひーちゃんが僕の目の前まで顔を近づける。


「ノーブラで興奮するド変態だっただなんてね~」


 にやにや笑いながら僕の顔を覗き込むひーちゃん。


「……ノーブラのド変態はひーちゃんじゃ?」


 確かに僕は大興奮した。しかし、その原因はひーちゃんにあるはずだ。


「ふっ……いくら私を煽ろうと無駄さ。なんせあんたはノーブラで興奮するド変態……対して私は朝時間がなかったねぼすけ乙女……どっちがより弱いかは明白……!」


 ふっふっふと獲物を狙う目で僕を見つめるひーちゃん。


 前傾の姿勢。その体操服の隙間から……少し、見えた。


「グハッ!」


 口から血を吐く。


「えぇ!?吐血!?どどどどどーしよう!!」


 慌てて動き回るひーちゃん。


「大丈夫、ただの栄養過多だから……」


「大丈夫じゃないでしょ!今保健室の先生いないし……えっと、えーっと……」


「ひーちゃん」


 僕は口から血を垂らしながらひーちゃんを見る。


「だ、大丈夫なの……?」


 ひーちゃんが心配そうな顔で僕を見る。


「エロすぎるから服はちゃんと着てくれ」

「隙間から見える」


 ひーちゃんは下を見た。


 入学当初に身長が伸びると見越し、少し大きめのサイズを買ったであろう体操服を。


 パァン!!


 頬に激痛が走る。


「変態!カス!変態!」


 叫びながら保健室を出ていくひーちゃん。


「変態が!!!」


 廊下からものすごい怒鳴り声が聞こえた。


 大丈夫。これでいい。


 あいつたまにガード緩いんだよな……可愛いんだからちゃんと女の子の自覚持ってくれないと。


 僕は窓の外を見る。


 そういえば、なんでひーちゃんは僕のことが好きなんだろうな。


 ……ハッ!!


 もしかしてひーちゃんは僕のことが”そこそこ好き”程度だからまだ告白する勇気が出ないんじゃないか……!?


 僕に必要だったのはひーちゃんと距離を近づけることじゃなくて男磨きだってことか!!


 冷静に考えれば僕はそこまで魅力がある人間じゃない。ひーちゃんにはどう考えても釣り合ってないぞ。


 よし、決めた。


 僕は、男を磨く。


 バチイケのメンズになるんだ……!

最後まで作品を読んで下さりありがとうございました!


面白かったらぜひブックマーク、高評価をよろしくお願いします!


次話もお楽しみに!


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