バカツンデレと体育①
今日の体育は男子の体育の先生が休みということで男女合同で行うこととなった。
「はー最悪!なんで男子なんかと一緒にやんなきゃいけないわけ!」
ひーちゃんは僕の隣で毒を吐く。
「かっこ悪いとこ、見せたくないのに……」
そういえば、ひーちゃんは運動神経がめちゃくちゃ悪かったな。
体育が男女別になってからはあまり知らないが、体育祭でも全然活躍をしていないところ見ると今でも運動神経は悪いのだろう。
しかし、ひーちゃんは自信満々な顔で僕を指さす。
「あんたは私だけを見てなさい。華麗な……あっ!!!」
ひーちゃんは何かに気付いたように大声を出した。
「どうしたの?ひーちゃん。忘れ物?」
ひーちゃん結構変な奴だからな。突然叫んだとしても何もおかしくはないが……。
「いや、まぁ……はは……忘れ物だけど忘れものじゃないというか無いといけないものというか……」
ひーちゃんが冷や汗をだらだらとかく。
「水いる?」
「いやいや。あはは……」
ギリギリ受け答えができていないひーちゃん。
まぁ普段も意外とこんな感じだからな……。
「ひーちゃん、そろそろ授業始まるから女子の列行った方がいいんじゃない?」
「あ、そそそそそうね」
ひーちゃんが女子列に戻る。
その時、チャイムの音とともにシミヤ先生が体育館に入ってきた。
「授業始めるぞー」
出席簿をバンバンと手でたたきながら歩く先生。
先生は僕のことを見た。
「おいヒナタ。お前女子列行け」
「え?」
そして突然そう言い放つ。
「なんで僕が……」
「女子の方一人欠席だからな。ひーちゃんの相方らしい。隣行ってやれ」
なんだそれ。距離も遠いし、前提として……
「女子は女子と組むべきじゃ……」
先生はため息をつき、僕を睨みつける。
「ヒナタァ……お前確か運動神経ナメクジだったよな?あたしがちょーっと弄ってやれば……」
「承知いたしました」
僕はひーちゃんの隣まで速攻で移動する。
「よかったねーひーちゃん。理解ある先生でー」
「は、はぁ!?別に相方なんて誰でもいいし!ていうか男子が相方とか最悪だし!」
「まぁでも、ちょっとは……」
目を伏せ、僕の方をちらちら見るひーちゃん。
しかし、僕に見られていることに気付くと急いでそっぽを向いた。
「っしゃ。じゃあ始めんぞー。今日の体操はめんどいから合同ストレッチだけだ!隣と組めェ!!!」
「ふぅぅぅ先生分かってるゥ!!」
「素敵よー!」
周囲の生徒が歓声を上げる。
「軽い体操をしたとて怪我する奴は怪我をする!あと今日はそんな激しい運動はしねぇ!!」
そして、合同ストレッチが始まった。
「はい。んじゃまずは一人の背中をもう一人が全身を使って押せー。丁寧に、全身を使って、ゆーーっくりと押すんだぞー」
なんだそのストレッチ。授業で一回もしたことがないどころか聞いたこともないぞ。
「先生!!男子の絵面が……」
男子の一人が悲鳴を上げる。
「黙れ!私は一組にしか興味はねぇ!!」
しかしそれを先生が一喝した。
「ウッス!!!」
男子は元気よく返事をする。
ウッスじゃねぇよ良いのかお前はそれで。
前に列を作っている男子共は、むさくるしい男がむさくるしい男に体を押し付けるという地獄絵図が広がっていた。
なんか……こう……嫌だ……。
しかし、この機会はチャンスだ。
僕とひーちゃんの距離を物理的に近づけ、ひーちゃんを僕に告らせるための一歩。
「じゃあひーちゃん、先押してもらえる?」
「あ……あ、うん……」
ひーちゃんは周囲をぶんぶん見渡す。
「ど、どうしよう……えっと……」
するとひーちゃんはおもむろに立ち上がり、
「先生!ちょっといいですか!」
と先生の方へ向かい、耳元でごにょごにょ何か喋っていた。
ドサッ
瞬間、先生はその場に崩れ落ちる。
「そうか……クッ……そうかぁ……」
そして、悔しそうに頭を抱えた。
「先生!どうしましたか!!」
「先生が毒を盛られたぞ!!」
普段は屈強な先生が崩れ落ちたのを見て全員が先生の周りに集まる。
「……なぁ、みんな」
先生はゆっくりと口を開いた。
「みんなは、欲と理性……どっちが大事だ?」
生徒は全員言いよどむ。
「私は教師私は教師私は教師……」
うわごとのように先生が呟く。
あぁ……この空気……
多分、欲に負けるな。
「すまない、ひーちゃん……」
先生はうつむいたまま顔を上げない。
「続行だ」
「うそぉ……」
ひーちゃんが泣きそうな顔で僕を見る。
「…………」
そして、可愛い上目遣いで僕を見上げた。
え、何その感じ。
まぁ、まだ勇気出ないよな。この前手つないだばっかだし。おんぶは意識なかったし。
仕方ない。ここは僕が一肌脱ぐか。
「先生、僕ちょっと頭つっ」
「黙れ」
先生が鋭く言い放つ。
僕はその殺気に気おされ、何も言えなくなってしまった。
「じゃあお前ら持ち場に戻れ。先生は少しこれからの展開を妄想して休む」
先生が意識を失った。
「じゃあ戻るか―」
「そだねー」
全員が元の配置に戻っていく。
先生が気を失ったのになんでスルーなんだよお前らも……。
僕は一応元の場所に戻り、ひーちゃんも僕の隣に来る。
ふくれっ面で涙目。両手で胸を隠しながら。
「き、気にしたら殺すから……」
「本当に、殺す……」
またツンだけだ!!!
ひーちゃん、何があったんだ……?
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次話もお楽しみに!




