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バカツンデレと喧嘩?

「あのー……ひーちゃん?」


「うっさいばか!あほどじまぬけかす!!幼稚園の頃私より身長低い!中三までナス食べれなかった!前世がトリケラトプス!」


「まぁそこまで傷つく暴言じゃ……え!?前世トリケラトプスなの!?嘘!?」


「くそ雑魚の草食恐竜がお似合いよ!」


 検索:トリケラトプス 強さ


「トリケラトプスって結構強いらしいよ。ティラノにタイマン勝てるっぽい」


「へぇーつよぉ……じゃないわ!どっか行きなさい!変態!」


 教室。


 あの後、僕はかひーちゃんに邪険に扱われていた。


 なんでだ?僕何かしたか?普段ならば暴言の後にデレが飛んでくるはずだが……なぜかデレがない。


 嫌われた?それはない。なんせ、ひーちゃんは僕からいつも以上に距離を取っているが、視線が僕の方ちらちらと向いている。

 それだけじゃない。先ほどから腕を組み指をトントンと動かしている。経験上これは何かを待っている状態だ。


 観察しろ。表情、仕草、立ち方、雰囲気、眉の動き一つすら見逃すな。


 …………。


「ちょっと、何見て……」


「可愛いな」


「……はぁぁぁぁあ!?!?なっ、なんなになになによ!!!」


 まずい。脳が働くのをやめた。情報がすべて可愛いに集結してしまう。

 クソッ。このままじゃなんで怒ってるのかなんて……


「もういい!帰る!」


 ひーちゃんが教室を出る。


「遅刻にならないようにねー」


 クラスメイトが声をかけ、


 ガララッ!!!


 と豪快に扉が閉まった。


「痴話げんかだ……」


「旦那がやらかしたなありゃ」


「夕飯抜きだぜ」


 周りがざわめく。


 うーんどうしようか。目の保養がなくなってしまった……

 じゃなくて、なんで怒ってるのかを考えないと。


「よーヒナタ。なに朝から夫婦漫才してるんだ?」


 その時、クラスメイトのヤマダがパック牛乳片手に話しかけてきた。


「ん?なんてことはないただの喧嘩だ……あと、いくら牛乳を飲んで身長を盛っても坊主じゃモテないと思うぞ」


「うっせぇ!こっちは二十センチのシークレット上履き履いて頑張ってんだよ!!」


 なるほど、通りで昨日より目線が高くなってるわけだ……急成長じゃなかったんだな。シークレットすぎて気付けなかった。


「じゃなくてだな。なんで喧嘩してんだ?お前の無自覚ノンデリでも出たか?」


「無自覚……ノンデリ……?」


 なんだ?聞いたことない単語だな。


「自覚ねぇよな。これ言うの十回目ぐらいだぜ。女子ってゆーのはたとえ真実でも言われたくない言葉があんだよ。お前なんでも思ったことずけずけ言うじゃん?多分それが喧嘩の原因だぜ」


「そんなことないぞ。ところで、女子とろくに喋ったことがないお前がなんで女子に詳しいんだ?」


「そういうところだよ!!カスノンデリが!!」


 ヤマダが懐から取り出した2Lの牛乳を僕に投げつける。


「こんなん持ち歩くなよ……」


 なんか冷えてるし。服の中冷蔵庫か?


「うるせぇ!!とっとと謝ってこい!!」


 僕の怒鳴りつけ、自身の席へ帰っていくヤマダ。


「謝ると言っても何を謝るのか……」


 僕は考え込む。


「あのー……ヒナタくん?」


 今度はクラスメイトのシミズさんが話しかけてきた。


「ひーちゃんが怒ってるのはね、きっと……」


「いや、大丈夫だ」


 僕はシミズさんが何か言いかけたのを遮る。


「僕が見つけたい。ひーちゃんのことだから」


「あらあらー。じゃあ、頑張ってね」


 シミズさんがにっこにこの表情で周りの女子と何やらこそこそ話をする。


 さて、僕はひーちゃんのことを考えないとな。


 しかし、怒りっぽいひーちゃんのことだ。何のことで怒ってるかなんて見当も……


 カララ……


 教室のドアが少しだけ開いた。


 ふくれっ面のひーちゃんが顔だけをこちら覗かせている。


「ぐむむむむ……」


 考えろ。全て。


 今までの言動のすべてを加味しろ。


(うっさいばか!あほどじまぬけかす幼稚園の頃私より身長低い!中三までナス食べれなかった!前世がトリケラトプス!)


(くそ雑魚の草食恐竜がお似合いよ!)


(へぇーつよぉ……じゃないわ!どっか行きなさい!変態!)


 暴言のレパートリーがトリケラトプスなのやっぱりおかしい……ん?変態?


 分かったぞ!!


「ひーちゃん、これ」


 僕はドアに近づき、2Lの牛乳をひーちゃんに手渡す。


「僕は、小さい方が好きだ」


 そして、さわやかな顔でグッドサインを送った。


 ひーちゃんは牛乳を唖然とした顔で受け取る。


「はぁぁぁっぁぁぁぁぁあぁあぁぁ」


 そして長い長い溜息をつくと、2Lを速攻で飲み干す。


 そのまま一息ついて、口を開いた。


「別に、小さいのは気にしてないわ。今に始まったことじゃないし、デカいのとか普通に邪魔だしつつましくないし私の身長的に釣り合わないし本当に気にしてないんだけど……」


 ひーちゃんがドアの隙間から僕の服の裾を掴む。


「その……お、女の子を触ったなら……も、もうちょっと意識してもいいんじゃないの……?」

「なんか、わたし、そんなに、みりょく……」


 ひーちゃんが涙目になる。


 そういえば、ひーちゃんはいつも一定の距離を保ってて、ろくに触ったこともなかったな。


 僕はひーちゃんの手を取った。


「うん。柔らかい」


 …………


「はぁぁぁぁ……」


 ひーちゃんはまた大きなため息を吐いた。


「何その平凡な感想。まっ、今回は許してあげるわ。鈍感雑魚」


 ガラッ!!!!


 ドアが思いっきり閉まる。


 機嫌は直った……かな……?


 ならよかった。これでいつものように……


「おいヒナタ。おいこらテメェ」


 ヤマダが僕を蹴る。


「どうした。シークレットブーツだから固い……な……」


 後ろを振り向くと、そこには殺気立ったクラスメイトの男子が全員いた。


「テメェ死ねや……」


「直球に……?」


「太陽を直視させてやるよ」


「白昼堂々殺人することの暗示……?」


「爪を、剥ぎます!!」


「えぇ……」


 隅へ追いやられ、全員からちょっと蹴られる僕。


 今日はいっぱい蹴られる日だ。


 一体何をしたっていうんだ僕は……。


 たすけてひーちゃん……。





「あほどじかすまぬけばかばかざこざこ……」


 ひーちゃんは誰も来ない屋上前の階段までくる。


「ふふふ……えへっ。ひひひ……」


 そして、自身の手を見つめて笑った。

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