バカツンデレ
今日は夏祭りだ。
この日のためにバチクソかっけぇ浴衣も買った。この後髪を切りに行くし、近くの祭りじゃ打ち上げ花火がない分線香花火も買った。
ひーちゃんに告らせる完璧な計画だって立ててある。
大丈夫、何も問題はない。
「ごめん……」
はず、だった。
「しょうがないよ、風邪だし」
ひーちゃんが風邪にかかってしまったのだ。
それも、祭りが行われる二日どっちも。
昨日だけならまだワンチャンあったけど、夏風邪は長引くからなぁ。ていうか、病み上がりを歩かせるわけにもいかないし。
「別にわざわざ看病なんて来なくていいのに……バカでも風邪は引くのよ?」
ひーちゃんが小さい声で言う。
「はいはい。どうせひーちゃんの親が帰ってくるまであとちょっとだから。とりあえず寝なよ」
僕はひーちゃんの軽口をいなす。
ひーちゃんにはいつもの元気などなかった。
「あ。私を寝かせてえっちなことする気なんだ?」
「しないよ。ナツを呼んできて証明してやってもいい」
「……ふぅん。呼ばなくていいよ」
沈黙が流れる。
……そろそろ寝たかな?
僕は立ち上がり、熱を冷ますシートを変えようと立ち上がり、ひーちゃんの顔を覗いた。
わー。具合悪そう。
ひーちゃんがうっすら目を開く。
「やっぱりキスを……」
「看病しないよ?」
「えへへ……ごめんって」
ひーちゃんは再び目を閉じた。
沈黙が流れる。
「……ねぇ」
「なに?ひーちゃん」
「なんで私なんかと一緒に居てくれるの」
「ひーちゃん可愛いじゃん」
「それだけ?」
「うん」
「死ね」
「冗談だよ。うーん、なんでだろうね」
「百個教えて」
「多分そんなにないよ。ひねり出して五個」
「死ね」
「そうだなー……ほら、昔のこと覚えてる?ひーちゃんが僕に喋りかけてくれた時」
「覚えてない」
「そうだよね。でも、僕は人と関わるの苦手でさ。嬉しかったんだ」
「そうなんだ」
「うん」
「……他には?」
「えー。特にないよ」
「実は私も特にない」
「そっか」
「なんでか知らないけど一緒に居たくなる」
「そうなんだ」
「体育の時私の胸見たよね?」
「見たよ。ガン見した」
「変態」
「ブラ忘れた方も悪い」
「キャラチェンしてたよね」
「うん。グレン先輩から習ってね」
「キモかった」
「知ってる。もうしない」
「デートしたよね」
「うん」
「あの帽子、もったいなくてかぶれてない」
「かぶってよ……」
「ホラー映画見たよね」
「うん」
「怖かった」
「そっか。僕は面白かったよ」
「海行ったよね」
「うん」
「楽しかった」
「僕も」
「ねぇ」
「なに」
「好きだよ」
「そっか。僕も」
ひーちゃんは起き上がる。
「ねぇヒナタ」
「好き」
「知ってたよ。ずっと」
「……早く言ってよ」
「言ったよ」
「いつから好きだったと思う?」
「さぁ」
「私もわかんない」
「そっか。僕と一緒だね」
「……ねぇ」
「うん?」
「多分私、告白のタイミングミスった……」
「……そうだね」
「ふふふっ……ふふふふ……」
「ははっ……ふふふ……」
ガチャ
玄関のドアが開いた音がした。
「じゃあねひーちゃん。また明日」
「うん。また明日」
部屋を出る。
特に驚きはない。ずっと知ってたから。
翌朝。
ひーちゃんはいつものように家に来た。
「ごめんひーちゃん。風邪になっちゃった……」
「やっぱばかでも風邪はひくのね……」
ひーちゃんは呆れたようにため息を吐く。
「早くベッドに戻りなさい。看病してあげるわ。ばか」
「ごめんねぇ……」
日常は何も変わらない。
いつも通りで十分だ。




