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ヤマダの恋②

 俺は妄想痴漢おじさんカラスマ!趣味は痴漢する妄想をすること、スイーツを食べること、それともう一つある。


 それは愛しの妹にプレゼントを贈ることだ!


 俺の妹は高校生になったのもあってか最近はおしゃれを頑張っているらしい。可愛いな。


 今日はそんな妹、カエデのためにかわいーアクセサリーを買ってきた。


 気に入ってくれるかなぁ。ふふふ……


「お?」


 その時、ファミレスを覗き込む二人の少女が目に映る。


 ナツと……ヒナタの彼女。ひーちゃんだっけか。本名教えろよ。


 二人は隠れながら熱心にガラスの中を観察していた。


「おいガキども。なにしてんだ」


 俺は二人に声をかける。


「わっ!って、なんだカラスマか~。警察かと思ったよ」


「ナツちゃん、この人知り合い?」


 ひーちゃんがナツに聞く。


「うん。えっとねー……うん。知り合い」


 そうだよな。よくこらえた。知り合ったきっかけが”お前らをストーキングしてた”なんて言えねぇもんな。中学生の癖によく頭を回した。偉いぞ。


「で、何してんだよ。中にヒナタでもいんのか?」


「そうではあるんだけど……」


「まぁ見てよ」


 俺はガラス越しに中を見る。


「あ゛?」


 ヒナタと坊主のガキ。そして……


「カエデ……」


 俺は膝から崩れ落ちる。


「ゼェー……ヒュー……ゼェー……ヒュー……」


「ちょ!?カラスマ大丈夫!?」


 やばい、呼吸が乱れる。まずい、心臓が……脳が……全身が拒否反応を起こしている。


 死にそう死にそう死にそう。


 耐えろ~。思い出せ、カエデとの日々を、カエデの記憶を……


「お仕事、頑張ってね」

「ちゃんとしたご飯食べないとダメだよ」

「ねぇ、見てよこれ。前世分かる羅針盤。ちなみに私の前世は織田信長」

「最近アルミホイルで髪洗ってるんだー。これで電波を妨害できるの」

「知ってる?お星さまって実は存在しないんだよ。この世には太陽と月以外の惑星はないんだ。このファクト眼鏡を付けると世界がね……」


 カエデ……スピリチュアルグッズをおしゃれと言い張るのはもうやめような……。


 お兄ちゃんも妄想痴漢やめるから、一緒に真人間になろう……じゃなくて!!


「なんで俺のカエデが男なんかと一緒に……」


 思わず声が漏れる。


「カラスマの知り合いなの?ちょうどいいや、奢ってよ」


 ナツが図々しく行った。


 えぇ……また……?


 俺はちらっとガキどもの顔を見る。


 ナツは明らかに怒ってる顔だな。でもひーちゃんの方は……


 チッ。


 まぁ、彼女だもんな。


「しょうがねぇ、入るぞ」


「ヒュー太っ腹!」


「あ、ありがとうございます……」


 最近奢ってばっかだな……俺は後輩にも割り勘迫るような男なのに……。


 まぁしょーがねぇ。背に腹は代えられない。


 ファミレスの店内に入る。


「あちらの席に……」


「座りたい席があるんですけど、いいですか?」


「えっ?あ、はい。どうぞー」


 店員を威圧し、あいつらの会話が聞こえてかつバレなそうな、壁をはさんだ隣の席に移動する。

 俺は身長が高いからバレないように中腰になりながらだが。完全に不審者だな。


「好きなの頼め。あと小声で喋れよ」


「はーい。じゃあハンバーグ定食二つで」


「私はこのスープだけ……」


 俺たちはこそこそ注文をし、あとは聞き耳を立てることに専念した。


 はたから見れば壁に耳を当てる異常者の集団だが、まぁいい。


 肝心なのは俺のカエデにキモイ男に引きが手を出しているか否か。


 場合によっては、この場で殺して俺も死ぬ。


「えーっとそのこれはあれだよ別に俺がカエデちゃんを好きってわけじゃなくて」


「へぇ、私のことが好きなんだ」


「ちがっ。えっと、好きだけど好きではあるわけでこれから仲良くなりたいって言うか……」


「ふぅん。じゃあ、私のことが好きなんだ」


「なんていえばいいんだろう。俺は……」


 ……なんか、カスみたいな会話が聞こえる。


 え?男ヘタレすぎん?何これ、えぇ……。


「これはヤマダくん酷いわね……」


「いやひーちゃんもたまにこんぐらの時期あるよ」


 ナツ、なんでお前はたまにしかないひーちゃんのヘタレエピソードを知ってるんだ?常習的にストーキングしてるだろ。さては。


「まぁいいじゃねぇか。お前ら愛しのヒナタくんは関係なかったっぽくて。さっさと飯食って出てけ。俺は観察続けるから」


「はぁ!?別に私は好きとかじゃ……ないし……」


 恋する乙女の瞳で斜め下を見るひーちゃん。バレバレすぎだろ、お前。


「ナツは大好きだよー。結婚したい」


 まぁお前は少し愛情歪んでそうだからそこをどうにかしような。


「そういえば、お前らはどうしてヒナタのことが好きなんだよ。あいつはまぁそこそこいい奴だが、好きになるきっかけみたいなのあったのか?」


「えー。おじさんの癖に恋バナ好きなんだ~」


 ナツがにやにや笑いながら聞く。

 くっそうぜぇ。


「あのなー、おじさんは恋多き……おじさんは、モテモテ……おじさんは……おじっ、おじさっ、おじさんは……」


「ごめんカラスマ。普通に話すから、正気に戻って」


 危ない。また脳が壊死するところだった。おじさん呼びでも傷つくのに。


「ナツにとってにーには王子様なのよ!かっこよくて、でもたまにかわいくて……しかも、にーにはナツのためなら何でもしてくれるの!おやつも買ってくれるし、一緒に寝てくれるし……兄妹にしかできないこといっぱいしちゃってるなぁ~。ふふん」


 どや顔でひーちゃんを見るナツ。


 おー。性格わっりー。いいね。


「で、ひーちゃんは?」


 俺はひーちゃんに聞く。


「べっ、別に理由なんてないわよ。あいつ、顔だって普通だし性格だって普通……何ならたまにうざいし、頭もばかだしファッションセンスだって終わってるし……」


 おいおい。夫婦の愚痴か?デートの時くそほど楽しそうだったじゃねぇか。


「で、でも……あいつは、ずっと私と一緒に居てくれるの。わがまま言っても、可愛くなくても、泣いても。だから……だから、その……」


「お兄ちゃん、何してるの」


 その時、俺の背後から声がした。


「か、カエデ……」


 カエデはハイライトのない目で俺を見つめる。


「ち、違うんだよ。本当に違うんだ。これはパパ活とかじゃなくて、俺はカエデ一筋で……」


「死ね」


 にっこりと笑うカエデ。


 そして、つかつかと会計の方まで歩いて行った。


「違うんだ!カエデ!お願い!違うの!カエデ!カエデえええ!!!」


 あぁ……終わった。


「何してんのカラスマさんとひーちゃんとナツは……」


 ヒナタもやって来ている。


「げ」


「あー……」


 終わった。俺、終わった……。


「クソ!そこの坊主!大体お前うちのカエデに手を出そうとしなければ……」


 坊主は、上を見て口を開くだけだった。


「ダメだったっぽいですよ」


 ……なぁんだ!


 じゃあ、良かった。


「はっはー!残念だったな坊主のガキ!カエデには俺がいるんだよ!お前みたいなシークレットブーツはいてるやつが好かれる道理がないんだ!」


 俺は坊主のをパンパン叩く。


 そして、その場に万札を置いた。


「じゃ、俺はカエデの後追っかけるから!じゃあな!」

「待ってよカエデ―!」


 俺はカエデの後を追いかけ、店を出た。




「で、なんでここに居るの?二人は」


 僕はひーちゃんとナツを問い詰める。


「いや~ねぇ?ひーちゃん」


「う、うん……」


 二人はそっぽを向いている。


 なんか裏があるな……


「そんなことより、あんた……私の話、聞いてないでしょうね?」


 話?


「なんのこと?」


「何でもないわよ!バカ!」


 えぇ……僕あとをつけらた上に怒鳴られたの……?

 ひどい……。


 ……まぁいいか。今日は二回も奢られてるし。気分は良い。


「じゃあ帰るぞ。おいヤマダ、立て」


「はぃ……」


 僕はヤマダを立たせる。


「しょーがねーだろ。お前が悪いんだし」


 カラスマさんがヤマダを振った理由。

 それは……


(私、はっきりしない男って無理なんだよねー)

(想いは伝えないと。曲りなりじゃ伝わんないよ?)


 でもひーちゃんはまっすぐ思い伝えると気絶しちゃうからなぁ……。

 女子も千差万別ってわけだ。


 かくして、ヤマダの恋は振られるという形で幕を下ろしたのだった。

最後まで作品を読んで下さりありがとうございました!


面白かったらぜひブックマーク、高評価をよろしくお願いします!


次話もお楽しみに!


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