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バカツンデレとホラー

「ぎゃああああ!!」


 テレビ画面に映ったお化けが叫ぶ。


「ぎゃああああ!!」


「ぎゃああああ!!」


 それに負けじと、僕の両脇に居る二人も叫んだ。


 なんで大音量の絶叫を三回も聞かないといけないんだ……


 真昼。しかし、カーテンを閉めて電気を消しているため部屋は真っ暗。


 僕とひーちゃんとナツは、ホラー映画鑑賞をしていた。


「もー無理!ナツカーテン開ける!」


「ダメだよナツちゃん!そしたらムードが……」


「ぎゃあああああ!!!」


 テレビのお化けが叫ぶ。


「きゃああああ!!!」


「ぎにゃあああ!!!」


 二人も呼応した。


 マジで、うるせぇ……。


 納涼したいねーなんてひーちゃんが提案し、家からホラー映画を持ってきた。ひーちゃんはそんなこと辞めようと言うナツをビビりとののしり、全員でホラー映画を見ることに決まったのだが……


 ナツはビビりだ。

 子供の頃、こいつはホラー映画を気絶しながら見ていた。そんぐらいのビビり。


 で、ひーちゃんもどうやらビビりらしい。


「おばけだぞおおお!!!」


「うわああああ!!!」


「いやああああ!!!」


 これは怖いシーンじゃないだろ。味方がびっくりさせただけのシーンだ。ビビんな。


 僕だってホラーでしっかりビビって肝を冷やしたいのに。両脇にビビりのアホが二人もいるせいでビビる前にうるせぇと笑いが来る。


 呪われた廃校に入っていくシーン。


 二人は僕の腕を掴み、僕の背中に潜り込もうとしていた。


「にーに!にーにが先行してよ!全員やっつけてよ!にーになんだし!」


「そうよ!あんたどうにかしなさいよ!男でしょ!こういう時こそ前に出るのが基本なんじゃないの!?愚鈍ね!!」


 何なんだこいつら……没頭しすぎだろ。B級だぞ、これ。


「けた……けた……けひひひひひ!!!」


 あ、お化けだ。


 今までのやつより何となくつよそー。


「うわああああ!!!でたああああ!!!」


「いやああああ!!!むりいいいい!!!」


 ナツが立ち上がる。


「もういい!ナツは先に帰る!」


 帰るって、ここは家だぞ。どこ帰るんだよ。


「こんな怖いとこ居られるか!」


 その時、ナツの服の袖をひーちゃんが掴む。


「ダメよ、ナツちゃん。このお化け……一人になった人から殺しに行くの……」


 ひーちゃんが涙を流す。


「耐えましょう、朝になるまで……」


 だからなんでそんな没頭できんだよ……B級のホラー映画で敵の習性を見つけるな。


「うぅ……怖いよぉ……」


 ナツがひーちゃんに抱き着く。


 ひーちゃんもナツを抱き返し、二人で部屋の隅に縮こまった。


 よし、これで少しは静かになるかな。


「ぎゅえあああああああ!!!」


「「きゃああああああああああ!!!!!」」


 …………。


 この映画、あと八時間あるんだよなぁ……。


 ふざけんなよ、ガチで。時間短くしてそこに予算割け。


 僕は耳が壊れそうになるのを耐えながら映画を見続ける。


 後方からはよく絶叫が聞こえてくる。が、顔が見えないなら立体で音を感じれる3Dの映画だと思うことにしたら楽しめた。




「あ゛ー!やっと終わった……」


 長すぎだろ、マジで。


 しかも八時間あって謎を全部解明せずに全滅して終わり。なんだこれ。


 ひーちゃんとナツは生まれたての小鹿のように足をがくがくさせながら立ち上がる。


「じ、じゃあ私帰るから……」


 ひーちゃんがリビングのドアを開けようとしたとき。


「怖いぃ……」


 そう言ってひーちゃんは崩れ落ちてしまった。


 カーテンを開けると、外はもうすっかり暗くなっている。


「送ろうか?」


 僕が提案をするが、ひーちゃんは首を横に振る。


「無理よ……もしかしたら私の家族が全員お化けになってるかもしれないし……外出たらお化けが襲ってくるかも……」


 ひーちゃんが泣きそうな声で言う。


「いやまさか……」


「そ、そうだよにーに!ひーちゃんが死んじゃう!」

「今日はお泊りしよ、朝になったらお化けは消えるから……」


 ナツが僕の腕を掴みながら言う。


「い、いいの……?」


 ひーちゃんが涙をこぼしながら僕を見る。


「まぁ、良いけど……」


 ひーちゃんが顔を明るくする。


「やった……!」


 なんでこいつらこんなにビビってるんだよ……


 まぁ、お泊りならひーちゃんといちゃいちゃできそうだしいいけど!!


 僕たちは食事終え、ひーちゃんはナツと風呂に入り、ナツの服を着て風呂から出てきた。


 あっ。それナツが小学生の頃の服……まぁ気付いてなさそうだしいいか。


 そして、夜。


 当然のように僕のベッドの上で激狭な川の字になる三人。


「あのー……流石に狭い……」


「うっさいわね。我慢しなさい、ばか」


「にーに。ナツたちを殺す気?」


 えぇ、なんでそうなるの……。


 一人用のサイズの真ん中とかいう一番窮屈な位置に押し込まれ、両脇の二人は僕の腕を掴んでいる。寝返りすら打てない。


 これ、寝れるか……?


 数時間後。


 無理だわ、これ。寝れないわ。


 隣にひーちゃんがいるドキドキを圧倒的に上回る寝心地の悪さ。すげぇな。


 どうしよう……腕掴まれてるからスマホも見れないし……このまま何もない時間を過ごして朝を迎えるのか?


「くひひひっ……けひっ」


 その時、小さな笑い声が聞こえた。


 ナツの方向……廊下側からだ。


 ギシッ


 同時に、床がきしむ音も聞こえる。


「くひっ。へっへっへ……」


 マジで?この笑い方、まんま映画のやつじゃないか。


 もしかしてあれは呪いのビデオ的な奴で本当にあの映画のお化けが……


「けひひっ……おいしそうなステーキじゃないでやんすか……」


 なんだ、ナツの寝言か。


 ナツはたまに喋り方と笑い方が三下の部下になるんだよな。デートの服選んでくれるときとかそうだったし。


 まぁ、ならよかった。


 数時間後


 僕は一睡もできないまま朝を迎えた。


 くそ重い体を引きずり、朝食を終え、ひーちゃんを玄関まで迎える。


「た、助かったわ。二人とも……」


 ひーちゃんは死ぬほどビビっていたため寝れなかったのだろう。目の下にはクマができている。


「あ、あと!昨日はちょっと調子悪かっただけだから!じゃあね!」


 ひーちゃんは捨て台詞を吐いて家を出て行った。


 もう二度と二人とはホラー映画は見ない。


 そう決めた。




「一緒に寝ちゃった一緒に寝ちゃった一緒に寝ちゃった……」


 家を出て、その場に崩れ落ちるひーちゃん。


「ちょっとは意識してくれたかな……」


 ひーちゃんは映画を鑑賞中やベッドの上を思い出す。


「少しは意識してくれたかな……!」


 ひーちゃんは意図的にヒナタとくっつこうとしていた。


 しかし、途中からビビりすぎて目的を忘れ、ビビることしかできなかった、少し頭の悪い子である。

最後まで作品を読んで下さりありがとうございました!


面白かったらぜひブックマーク、高評価をよろしくお願いします!


次話もお楽しみに!


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