カラスマという男
俺はカラスマ。趣味は電車での痴漢を妄想することと、もう一つある。
「スイーツフェスティバルへようこそ~!」
それは、スイーツを食べるということだ。
スイーツは素晴らしい。甘くておいしいし頭は回るし眠くなるし太るし短命になる。
最高だな。
俺はまだ二十三歳……自称はおじさんだが自認は全然お兄さん。全力ダッシュすると二日は体が痛むがまだまだ健康体だ。
そんな俺は今日スイーツフェスティバルというスイーツ限定の露店が大量に並ぶ祭りのような場所に来ていた。
あぁ、楽しい。匂いが楽しい。
甘い香りしかねぇ。普通の祭りみたいに匂いが濃い奴に殺されることのない、無限に甘いだけの香り。
世界は、甘い……
「あ、カラスマ」
その時、聞いたことがあるガキの声がした。
「……マジかよ」
俺の目の前に居たのは、ナツ。
この前カップルをストー……見守っていた時に一緒に見守りをした、中学生のガキ。
「どうしたんだナツ。知り合いでも……あ」
そして、そいつの兄ヒナタも見えた。
ははーん。なるほどな。
ナツは重度のブラコンだ。多分、ヒナタのデート阻止に失敗しその際何とか自分ともデートをするように食らいついたのだろう。
なかなかに狡い女だ。兄のデートぐらい好きにさせろ。
「ちょうどよかった。この前のお金、貴方が下りた駅の交番に届けておいたので」
ヒナタが言う。
俺の降りた駅の交番!?わざわざ俺が下りた駅の交番まで向かったのか!?あのあと!?
おいおいこのガキ人間ができすぎだろ。そりゃ妹にもモテるわけだわ。
ま、そんなモテるガキのエピソードなんてどうでもいい。俺は俺のスイーツフェスティバルを楽しむだけさ。
「じゃあな」
俺が歩き出そうとする。
「待ってカラスマ」
そのときナツが俺を呼び止めた。
「奢ってよ」
「はぁ??」
んだこのガキ。俺がそうやすやすと奢るわけ……
「じゃないと、この前のことバラすよ」
瞬間、体中の鳥肌が立つ。
この前の話……高校生をストーキングした話。中学生と一緒に街を歩いた話。どっちをとってもやべぇ!
しかも一番やべぇのが、こいつはいくらでも話を捏造できるところだ。中学生女子とおじさんを天秤にかけた場合、法的におじさんが勝てる要素は一つもない。普通にストーキングは法で負けてるし。
「し、仕方ねぇなぁ……特別に奢ってやるよ……」
クソ。このガキあのショッピングモールでも散々俺に奢らせたくせに、ここでも奢らせんのかよ。
まぁ俺は大手勤務。金はそこそこある。ちょっと奢るくらいなら……
「ダメだぞナツ。なにがあったか知らないけど大人を脅して奢らせるな」
お!良いぞヒナタ!そのまま言い負かせろ!その女を倒せ!!
「にーに、あいつほぼ犯罪者」
「カラスマさん。奢りで済むことに感謝してください」
おい!ヒナタ!すぐに意見を変えるな!
「ま、待ってくれよ。おじさんはもう現金の持ち合わせがほとんどないんだ。可哀想でみじめだろう?そんなみじめなおじさんを……」
「カラスマの服、良いブランドのやつだよね?財布だって本革だったし、その時計何円するんだろうね」
ナツが俺の体をまじまじ見つめる。
クソッ!休日だからっておしゃれするんじゃなかった!
俺の中のちょっとでも周りによく見られたいという愚かな感情が自身の身を亡ぼすなんて……。
「俺の負けだ。好きなだけ食え、ガキども」
俺は諦めてため息を吐く。
「わーい!カラスマ太っ腹~!」
「値段も背丈もバカみたいに高いパフェ買ってあんま美味しくない底の部分だけ押し付けるぞ~!」
おいやべぇってこの兄妹。実は兄の方がやべぇって。押し付けんなよ。そんな部分。パフェなんて上以外おまけなんだから。
そうして、俺の貴重な休日はガキに振り回されることに決定した。
こいつらが行きたい店に行き、俺も一緒にスイーツ頼んで、ベンチで食って、互いにシェアして、次行って……。
あれ?
そこそこ楽しくね?
よくよく考えれば大人が奢るって当然だしな……。
「カラスマ!あれ食べたい!」
「カラスマさん、この明らかに既製品のクッキーの部分だけあげますよ。こういうの手抜き感あって嫌ですよね。クッキー乗せるのは良いにしても見た目からして明らかに既製品だとテンションが下がるんですよ。たとえバーゲンダッツだとしても皿に盛り付けてもっら方がこちらとしてもテンションが上がりますし……聞いてます?」
こいつらも結構楽しんでるし……。
「黙って食え」
まぁ、悪くはねぇか。
俺は小さいくせに二百円するケーキを一口で頬張る。
「カラスマ!あっち!やっぱこっち!ごめんそっちで!!」
「カラスマさん。これあんま美味しくないんであげます。まずさをシェアしましょう」
悪くねぇ……か?
数時間して、全員が腹パンパンになってスイーツフェスティバルを出た。
大食いのナツのことだし警戒していたが、そんなに金が飛んでなくて安心したぜ。
「いやーカラスマのおかげでいっぱい食べれたよ!ありがと!」
「助かりました……はい、どうぞ」
ヒナタが俺に四千円を渡す。
「ごちそうさまでした」
はぁ……こいつ……。
「いらねぇよ。今日は俺の奢りだ」
俺は金を払いのける。
「そうですか……」
ヒナタは金をしまった。
「改めて、ごちそうさまでした」
「ごち~」
…………ガキかぁ。
婚活でもしようかな。
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次話もお楽しみに!




