バカツンデレとロマンチックなお誘い
朝の会。
「皆もう夏休みだね。はっちゃけすぎちゃだめだぞー」
そっか、明日からもう夏休みか。
楽しみー。
でも、同時に悪いところもある。
それは、ひーちゃんに会えないことだ。
まぁ当然だよな。学校がなければ一ヶ月ちょいぐらいひーちゃんに会えない。
毎日会いたいなー。
夏休み中、昔はよく一緒に夏祭りに行ったりとかはしていたが、中学に上がってからお互い同性で遊ぶことが多くなり、たまたまお互いの予定が合って一緒に遊ぶぐらいしかなくなっていた。
だが、今年の僕は違う。
誘うんだ、ひーちゃんを。
海に、夏祭りに、その他もろもろに。
まずは計画を立てることだ。ひーちゃんに夏休みを僕と過ごしたらどれだけ楽しいかを力説し、僕という魅力をもってしてひーちゃんを陥落させる!
僕はスマホを取り出す。
夏休みにどんなイベントがあるかなんて知らないから調べないとな。定番しか知らないし。
なるほど、海ドライブに登山にシーカヤック……たくさんあるな。
でもひーちゃんは運動神経がカスだから、あんまり動かなくても楽しめるものを……
「なぁヒナター。夏休みなんだけど……」
ヤマダが話しかけてくる。
ごめんな、今は忙しいんだ。
「少し黙っとけ」
「先生こいつスマホ使ってます」
チクるの早すぎだろ。まぁいい。スマホに書いてあった内容はすべて覚えた。あとは計画を練るだけだ。
しかし、迷うな……ひーちゃんをどのように口説けばいいのか文言が思い浮かばない。
思えば、いつも何か誘うときはひーちゃんが先だった気がしなくもない。俺様系の時は成り行きで誘えたが、それっきりか……。
どうせ誘うならかっこよく誘いたいな。ひーちゃんをドキッとさせれるような感じがいい。
クソ、こうなったらキモイと言われたがあの人を頼るしかねぇ。
「お願いします!グレン先輩!」
「ったく、また俺様に頼んのかよ……」
謎の倉庫の地下に広がる謎空間。
そこには、グレン先輩と……
「天才の頭脳が必要ですか?」
「ボクの可愛さだけでどうにかなるかねー」
「朕は金がある」
イケメン四天王が全員いた。
「あのコ君にべたぼれじゃん。適当に誘えばいーんじゃない?」
ウミネコ先輩が当然だと言わんばかりに言う。
「まぁそうなんですけど……せっかくならロマンチックに……」
僕の発言に、ユキノ先輩はメガネをクイッとすると、
「なるほど。ロマンチックですか……計算します。少々お待ちを」
と言って懐からノートパソコンを取り出しカタカタし始めた。
「朕が札の雨を降らすというのはどうかの?ロマンチックであろう」
サイオンジ先輩が万札をその場にばらまく。
うーん、なんかそういうのじゃないんだよなぁ……
その時、グレン先輩が僕に何かを投げた。
「これは……」
「恋愛漫画、”今日の宇宙はイチゴ色”だ。生徒と教師の恋愛模様を描いた甘酸っぱいイチゴのような漫画。俺様は趣味で恋愛系の作品を買いあさっていてな。その作品、他作品と比べて一線を画するセリフ回しの妙を持っている」
「そんな傑作が……ありがとうございます!」
僕はグレン先輩に頭を下げる。
「クソッ!データに無いぞ!」
ユキノ先輩はノーパソを地面に投げてぶっ壊す。
僕はグレン先輩から”今日の宇宙はイチゴ色”を全四巻を借り、教室へ帰った。
「こんな感じか……」
放課後、帰り道。
授業時間も休み時間も全部削り、やっと読み終わった。
作品の内容を簡単に言うと、一人の生徒と複数人の教師の恋愛漫画。
まず主人公、命ちゃん。
この主人公は年上好きで惚れっぽく、それでいて冷めやすい。あと悪役のキャラに対して口がすこぶる悪い。
恋愛対象の教師も教師で生徒をそういう目で見る変態しかいなく、全員主人公と付き合いはするが本気で愛してはいない。あと全員付き合ってたことがばれて教員免許をはく奪されている。
オチは主人公は卒業式で卒業証書を渡す校長に一目ぼれし、「なんなのよもお~!」と言って卒業証書を破ることで留年してエンド。
これが大まかな概要。しかし、今日の宇宙はイチゴ色で輝いているのはストーリーじゃない。
圧倒的にキモイセリフ回しだ。
主人公が告白するシーンでは、”好きです付き合ってください”と安易に言葉を告げるわけではない。
告白の際、主人公は転び、骨が折れたと嘘を吐き立てなくなった演技をする。そして男にお姫様抱っこをしてもらい、「私を運んでくれるんだね」と言うのだ。
で、付き合う。
訳わかんねぇなって思ったよ。
ただ、ちょっと考えると分かった。
この主人公、名前が命なんだよ。
だから、私=命を運ぶで運命。
このセリフは”運命だね”っていう意味なんだ。
他にもある。
主人公が授業中ふざけて、チョークを投げられた際に「私、撃ち抜かれちゃったぁ……」これは命=心を撃ち抜かれたっていう意味。ちなみにこの後付き合う。
主人公のセリフ回しはキモいしそれに気づく教師もキモいが、グレン先輩によるとこういうのをロマンチックと言うらしい。
本音をうまく言葉の中に隠し、遠回りに伝える。これが多分コツだな。
僕からしたらキモく聞こえるが、この作品は女性向け。ならば、女子であるひーちゃんはこういうセリフ回しが好きである可能性が高い。
「なぁひーちゃん」
僕は隣を歩くひーちゃんに声をかける。
「読み終わったの?鈍感なバカに恋愛漫画なんて理解できないと思うけど」
「ホント、鈍感なんだから……」
えーっと。なんて誘えばいいんだろうか。
夏休み一緒に遊ぼうをなるべく遠回しにロマンチックに……えーっと……。
その時、ひーちゃんが口を開く。
「そ、そそそういえば、今年の夏休みは、あの……えっと、い、いいいいい一緒に……」
顔を真っ赤にするひーちゃん。
あーあ。また僕から誘えなかった。
まぁいっか。一緒に過ごせることは変わらない。
本音で語ろう。
「そうだね。毎日一緒に過ごそう」
「そうそう!一緒に……」
「へ?毎日?」
「……あ」
思わず口が開く。
やばい。本音で語りすぎた。
「ぇへへ……」
ひーちゃんは気まずそうにそっぽを向く。
夏休みが、始まった。
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