第9話 ──初動──
『空間欠損の魔法師』
第9話 ──初動──
外部任務開始まで、あと三日。
エリートクラスの訓練場には、
いつもより緊張感のある空気が漂っていた。
教師が前に立ち、淡々と告げる。
「今日から三日間は、外部任務に向けた“初動対応訓練”を行う。
実戦では判断の遅れが死に直結する。
各自、気を引き締めろ」
玲奈は静かに頷き、
紗月は珍しく真剣な表情で端末を構えていた。
悠斗は胸元のペンダントに意識を向ける。
『ゆーと!今日めっちゃ調子いいよ!
魔力の流れ、昨日よりずっとキレイ!』
「……ほんとか?」
『ほんとほんと!データ的にもバッチリ!
あ、でもちょっと外側に寄ってるから後で微調整しよっか』
元気な声に、少しだけ肩の力が抜けた。
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■ 初動対応訓練
「では、まずは“魔力反応の識別”からだ」
教師が指を鳴らすと、
訓練場の中央に複数の魔力反応が浮かび上がった。
青、赤、緑――
色と強度が異なる魔力の球体。
「これは実戦での“魔力痕跡”を模したものだ。
敵味方、一般人、魔法式の残滓……
状況に応じて識別しろ」
玲奈は即座に反応した。
「青は一般人の魔力残滓。
赤は攻撃式の痕跡。
緑は補助式ね」
紗月も端末を覗き込みながら言う。
「赤の波形、ちょっと古いね。
三分前くらいの魔法式だよ」
二人とも、さすがの精度だった。
悠斗も魔力を流し、反応を探る。
(……青は弱い。赤は刺すような感覚。
緑は……柔らかい?)
『うんうん、その感じ!
ゆーとは“流れ”で感じるタイプだね』
「……普通は違うのか?」
『違うよ。でもね、それはゆーとの“良さ”!
魔力の根っこを掴む人って、ほんとに少ないんだよ』
オルタは明るく言い切った。
その声に、不思議と自信が湧く。
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■ 玲奈の戦闘観
休憩時間。
玲奈が悠斗の隣に立った。
「篠原くん。
外部任務、怖くはない?」
「……正直、少しは」
玲奈は静かに頷いた。
「恐怖は正常よ。
むしろ、恐怖を感じない方が危険」
「玲奈は……怖くないのか?」
「怖いわよ。
でも、私は“守る側”の人間だから」
その言葉には、揺るぎない芯があった。
(……強いな)
玲奈は続ける。
「あなたは補助要員。
前に出る必要はない。
でも、後ろにいるからこそ“見えるもの”もあるわ」
「……見えるもの?」
「敵の魔力。
味方の乱れ。
戦場の空気」
玲奈は悠斗の胸元――ペンダントを一瞬だけ見た。
「あなたは、きっと“感じる”タイプよ」
そう言って、玲奈は離れていった。
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■ 紗月の戦闘観
その後、紗月がひょこっと現れた。
「ユウトくん、さっきの識別、良かったよ!」
「いや、まだ全然……」
「ううん。
“流れで感じる”って、すごく珍しいんだよ?」
紗月は端末を操作しながら言う。
「普通は波形とか色とかで判断するけど……
ユウトくんのは、もっと“根っこ”を見てる感じ」
「根っこ?」
「魔力の“性質”そのもの。
それを感じ取れる人は、ほとんどいないよ」
(……俺は、そんなことを?)
『そうだよ!ゆーとはすごいんだから!』
オルタが元気よく言う。
『ただね、今はまだ説明しても理解されないと思う。
だから無理に言わなくていいよ』
(……そうだな)
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■ 初めての“敵反応”
訓練が終わり、夕方。
エリートクラスは解散し、悠斗は帰り支度をしていた。
その時――
訓練場の警報が鳴り響いた。
ビーッ! ビーッ!
教師が端末を確認し、眉をひそめる。
「……魔力反応?
この距離で?」
玲奈と紗月も駆け寄る。
「先生、どういうことですか?」
「学園の外周センサーに“無許可魔法師”の反応が出た。
距離は……近い」
空気が一気に張り詰める。
教師が声を張り上げた。
「全員、待機!
外部任務前だ、勝手に動くな!」
だが悠斗は――
胸の奥がざわついていた。
夕陽が沈む学園の外で、
かつてない緊張感が流れた。
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