第二章 第56話 ──氷海の拒絶──
第56話 ──氷海の拒絶──
宗谷港に近づくにつれ、
空気が変わった。
ただ寒いだけじゃない。
肌の下を針で刺されるような、
“深層の静電気”が漂っている。
ミリア
「……感じますか?
この異常な深層圧。」
紗月
「これ……現地の隊員が言ってた“拒絶領域”ってやつじゃない?」
玲奈は海の向こうを見つめ、
眉を寄せた。
玲奈
「……風が……止まってる。」
悠斗
「風……?」
言われて気づいた。
海風が、
まるで“何かを避けるように”
港の手前で流れを変えている。
ミリア
「拒絶領域……ですね。
戦略級魔法師の周囲には、
深層の圧が現実空間に滲み出ている。
風も、波も、魔力も……
すべてが“避ける”のです。」
玲奈
「……遺構に近づくことを、許してない。」
悠斗
「……っ……」
胸の奥が熱くなる。
(呼ばれてる……
また……)
フェリーが港に着くと、
自衛隊の車両が並んでいた。
だが――
その雰囲気は“軍事演習”とは違う。
- 兵士たちは顔色が悪い
- 通信が途切れ途切れ
- 空気が重く、押しつぶされるような圧
- まるで“見えない壁”の中にいるような感覚
ミリア
「深層圧が……ここまで届いているなんて。」
紗月
「普通の魔法師なら、近づくだけで倒れるよ……」
玲奈
「悠斗、大丈夫……?」
悠斗
「……なんとか……」
だが、胸の奥はずっとざわついていた。
(……近い……
あいつが……)
その時――
空気が震えた。
低い振動。
大気そのものが悲鳴を上げるような音。
兵士
「っ……! またか……!」
兵士
「深層反応、急上昇!
拒絶領域が拡大しています!」
玲奈
「来る……!」
次の瞬間――
海が、割れた。
だがそれは“攻撃”ではない。
海流が、
風が、
魔力が――
戦略級魔法師の周囲を避けるように流れを変え、
結果として海面が裂けたように見えているだけ。
紗月
「……これ、魔法じゃない……
“避けてる”だけ……?」
ミリア
「ええ。
拒絶領域が強すぎて、
海そのものが“近づけない”のです。」
玲奈
「……深層の向こう側に触れてる……
普通の魔法じゃない。」
悠斗
「……っ……!」
胸が焼けるように熱くなり、
視界が揺れた。
紗月
「悠斗!?」
ミリア
「深層反応が急激に上昇しています!
この距離でこれほど……!」
玲奈が俺の手を掴む。
玲奈
「悠斗、しっかりして!
あなたの深層が……“呼ばれてる”!」
(……呼ばれてる……
あいつが……俺を……)
その時――
胸元のペンダントが微かに光った。
オルタの声が、
かすかに響く。
『……近いね、悠斗……
あれが……戦略級魔法師……』
悠斗
「オルタ……!」
『まだ完全じゃない……
でも……君を守る準備はできてる……』
玲奈が驚いたようにペンダントを見る。
玲奈
「……オルタ、起動してる……?」
紗月
「声が聞こえるってことは……
深層の方で繋がり始めてるんだね。」
ミリア
「深層領域での接触が、現実側に滲み始めている……
危険ですが……同時に“復活の兆候”でもあります。」
その時――
海の向こうに“人影”が立った。
だがそれは“本体”ではない。
深層圧が形を取っただけの、
深層影。
玲奈
「……あれが……」
ミリア
「戦略級魔法師の“影”です。
本体ではありません。」
紗月
「影だけでこの圧……?」
悠斗
「……来る……」
胸元のペンダントが、
再び光る。
『……悠斗……
次は……“姿”で会うよ……』
深層影が、
こちらを向いた。
拒絶の意思だけを宿した瞳で。
俺たちはついに――
“異常”と対峙する。
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