第6話 ──再会──
『空間欠損の魔法師』
第6話 ──再会──
二日目の朝。
悠斗は昨日より少し落ち着いた気持ちで教室に入った。
『おはよう、悠斗。
昨日より呼吸が安定してるね』
ペンダントから骨伝導で響く、柔らかな女性の声。
外には漏れない、悠斗だけの相棒。
「……まあな」
席につくと、御門玲奈がちらりと視線を寄越した。
昨日と同じ、静かで落ち着いた目。
ただ、その視線がわずかに長く留まり、胸の奥がざわつく。
(……また見られてる気がする)
『気にしすぎ。
玲奈ちゃんはただ確認してるだけだよ』
「……そうか?」
そんなやり取りをしていると――
教室の扉が勢いよく開いた。
「失礼しまーすっ! あ、いたいた! ユウトくん!」
明るい声。
見覚えのある顔。
「……紗月?」
天城紗月。
軍施設で何度か顔を合わせた、天城の娘。
白衣を羽織ったまま、教室にずかずか入ってくる。
「やっほー! 久しぶりだね、ユウトくん!」
「……なんでここに?」
『紗月ちゃん、相変わらず元気だね……』
悠斗は小声で返す。
「……そうだな」
紗月はにこにこしながら言った。
「私、この学園の“研究科”にいるんだよ。
今日は先生に頼まれて、ちょっとデータ取りに来たの!」
そして、悠斗の顔を覗き込む。
「ねぇねぇ、軍施設の時より顔色いいじゃん。
訓練、ちゃんと成果出てるんだね!」
「まあ……なんとか」
紗月はふと、悠斗の胸元のペンダントに目を向けた。
「……あ、今オルタちゃんと話してたでしょ?」
「っ……なんでわかる」
「その“間”だよ。
ユウトくん、オルタちゃんと話す時だけ返事がワンテンポ遅いの」
『そ、そんなにわかりやすい……?』
「……知らん」
教室が少しざわつく。
玲奈が静かに立ち上がり、紗月に声をかけた。
「あなた……篠原くんの知り合い?」
「あ、うん! 天城紗月です!
ユウトくんの訓練、ちょっとだけ手伝ってたの!」
玲奈は一瞬だけ目を細めた。
「そう。
私は御門玲奈。よろしく」
「れーなちゃん! よろしくね!」
玲奈はわずかに押され気味だった。
(……御門でも押されるのか、紗月に)
『紗月ちゃん、勢い強いからねぇ。
でも悪い子じゃないよ』
紗月は悠斗の机に手をつき、身を乗り出す。
「ねぇユウトくん。
今日の放課後、ちょっと時間ある?
君の魔力、久しぶりに見たいんだよね!」
「え、いや……」
『私は賛成。
君の魔力、まだ安定しきってないし』
悠斗は小声で返す。
「……わかってるよ」
紗月は首をかしげる。
「またオルタちゃんと話してる?」
「……まあ」
玲奈が静かに口を開く。
「篠原くん。
昨日の授業では問題なかったけれど……
まだ“安定している”とは言い切れないわ」
「……そうだな」
「放課後、私も見ていい?」
紗月がぱっと笑う。
「じゃあ三人で見よ!
あ、オルタちゃんももちろん来るよね!」
『もちろん。
悠斗の魔力は、私が一番近くで見てきたから』
「……なんか、急に賑やかになったな」
『いいことだよ。
君の世界が広がってるってこと』
悠斗は小さく息を吐いた。
(……本当に、ここからが始まりなんだな)
こうして、
篠原悠斗の周囲に“新しい関係”が生まれ始めた。
---
1日1善1日1投稿♪




