第二章 第54話 ──御門家の条件──
第54話 ──御門家の条件──
宗一郎の投影が消えたあと、
喫茶店「ルミエール」には重い沈黙が落ちた。
深層のざわめきが胸の奥で脈打ち、
まだ現実に戻りきれない。
玲奈が、そっと俺の隣に座った。
玲奈
「……悠斗。
父さんの話、どう思った?」
悠斗
「どうって……
正直、まだ頭が追いついてない。」
紗月
「まあ、いきなり“戦略級魔法師どうにかして”は重すぎるよね。」
ミリアは腕を組み、宗一郎の言葉を整理するように目を閉じた。
ミリア
「篠原さん。
御門家の“条件”をまとめましょう。」
俺は頷く。
ミリア
「御門家が提示したのは三つ。
一つ目は――庇護。
二つ目は――深層反応の制御。
三つ目は――宗谷沖の戦略級魔法師の排除。」
玲奈が眉を寄せた。
玲奈
「……戦略級魔法師?
宗谷沖って、最近“軍事演習が問題になってる”ってニュースで見たけど……
その裏にそんな理由があったの?」
紗月
「だよね。
“演習規模が異常”って言われてたけど……
まさか戦略級魔法師が原因だったなんて。」
ミリア
「一般には伏せられています。
あの演習は“戦略級魔法師の存在を隠すためのカバー”でしょう。」
玲奈
「……そうなんだ。
深層関連の情報は共有されるけど、
こういう“急な案件”までは私のところに来ないから。」
悠斗
(軍事演習の裏に……戦略級魔法師……
そんな相手を俺が……?)
ミリア
「深層の波動に呼応している存在なら、
篠原さんにしか対処できません。」
紗月
「……やっぱり、悠斗が“中心”なんだね。」
ミリア
「そして二つ目の“制御”についてですが――
宗一郎さんは方法を明かしませんでした。」
玲奈は少しだけ視線を伏せた。
玲奈
「……でも、深層の制御って言われたら、
まず思い浮かぶのは“オルタ”だよね。」
胸の奥が強く跳ねた。
悠斗
「……オルタ……」
紗月
「そうだよ。
学園の時も、深層が揺れた瞬間に必ずオルタが出てきてたし。」
ミリア
「お二人とも、オルタをご存じなのですね。」
玲奈
「知ってるよ。
訓練中に何度か“介入”を見てる。
悠斗の深層が危ない時、必ず現れてた。」
紗月
「普通の制御AIじゃなかったよね。
悠斗と会話してたし、反応も人間っぽかった。」
悠斗
「……あいつは俺の相棒だった。
深層に張り付いて、ずっと支えてくれてた。」
ミリア
「なるほど……
篠原さんの深層に触れるには、
まず“オルタ”を通す必要がある、ということですね。」
玲奈
「うん。
父さんが言った“制御”って、
御門家の切り札とは別に、
悠斗の深層に入るための前提条件としてオルタが必要って意味なんだと思う。」
紗月
「御門家の切り札は御門家の話。
でも悠斗の深層に触れるには、
まず“悠斗の相棒”がいないと無理ってことだね。」
悠斗
「……オルタがいないと、
俺の深層には誰も触れない……
そういうことか。」
ミリア
「そして御門家の“切り札”には、
玲奈さんが関係している……と。」
玲奈
「……うん。
でも、詳しいことはまだ教えてもらってない。
“深層反応がもっと強くなった時に話す”って。」
紗月
「御門家の切り札と、
悠斗の相棒のオルタ。
両方そろって、ようやく“制御”ってわけか。」
俺は深く息を吸った。
(……逃げられない。
でも……逃げたくもない。)
悠斗
「……行くよ。
宗谷沖に。」
玲奈
「……うん。」
紗月
「はぁ……また大変な旅になりそうだね。」
ミリア
「準備を始めましょう。
時間はあまりありません。」
そして俺は、
胸の奥で静かに名前を呼んだ。
(……オルタ。
また……一緒にやってくれるよな。)
その返事はまだない。
だが――
確かに、どこかで“目覚めを待っている”気がした。
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