第二章 第49話 ──拒絶の海──
第二章 49話 ──拒絶の海──
■ 宗谷沖・封鎖海域
御門家外郭部隊を乗せた輸送ヘリが、
護衛艦の甲板に着艦した。
隊長・御門 迅は、
ヘリから降りるとすぐ艦長へ敬礼した。
迅
「御門家協力部隊、到着しました。
遺構への突入準備は整っています。」
艦長
「……だが、状況は変わった。」
迅
「戦略級魔法師、ですね。」
艦長は苦い顔で頷く。
艦長
「遺構に近づくものすべてが弾かれる。
潜水ドローンも、海流も、風すらもだ。」
迅
「……“拒絶”ですか。」
艦長
「そうとしか思えん。」
迅は海上の一点を見つめた。
割れた海の中心。
遺構の前に、
“人影”が立っている。
風も波も、その人物を避けるように流れていた。
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■ 遺構前
戦略級魔法師は、
ただ静かに遺構を見つめていた。
怒りも敵意もない。
だが――
“誰も近づくな”という圧だけが、
海全体を支配していた。
御門家外郭部隊の隊員が、
遠距離から魔力測定器を構える。
隊員
「……魔力濃度、上昇中。
戦略級魔法師の周囲だけ、
“空間が歪んで”います。」
迅
「攻撃の兆候は?」
隊員
「ありません。
ただ……“立っているだけ”です。」
迅
「それで十分だ。」
迅は息を吐いた。
迅
(戦略級魔法師は、
遺構への突入を“許さない”。
それが意思だ。)
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■ 防衛省・地下状況室
オペレーター
「御門家協力部隊、現地到着。
しかし戦略級魔法師の阻止により、
突入は不可能との報告。」
司令官
「……戦略級を敵に回すわけにはいかん。
だが遺構を放置もできん。」
情報官
「他国の動きですが――
ロシア艦隊がさらに接近。
中国艦艇も“調査名目”で前進中。
米軍は無人潜航艇を投入した模様。」
司令官
「遺構を巡る争奪戦が始まったか。」
司令官は深く息を吐いた。
司令官
「御門家には“情報の確保”を最優先させろ。
戦略級魔法師の意図を探る必要がある。」
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■ 宗谷沖・遺構前
御門 迅は、
戦略級魔法師の背中を見つめながら呟いた。
迅
「……あなたは、
遺構を“守っている”のか?
それとも“封じている”のか?」
もちろん返事はない。
だが次の瞬間――
遺構が“鳴った”。
低い、地鳴りのような音。
海底から響く振動。
隊員
「遺構内部で反応!
深層反応が急上昇!」
迅
「戦略級魔法師は……?」
隊員
「動きません。
ただ、遺構を見つめています。」
迅
「……まるで“目覚めるのを待っている”ようだ。」
艦長
「遺構が目覚める……?
それは何を意味する?」
迅
「わかりません。
ただ――
“遺構に入ることは許されない”
ということだけは確かです。」
艦長
「戦略級魔法師の意思か。」
迅
「ええ。
そしてその意思は、
軍にも、御門家にも、他国にも向けられている。」
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■ 遺構の“変化”
遺構の表面に、
淡い光が走った。
隊員
「遺構表面に紋様が出現!
これは……魔法陣……?」
迅
「違う。
これは“深層の紋様”だ。」
艦長
「深層……!」
迅
「遺構は、
“深層と繋がっている”。
戦略級魔法師はそれを知っている。」
艦長
「だから誰も近づけないのか。」
迅
「ええ。
遺構が完全に目覚めれば――
何が起きるか、誰にもわからない。」
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■ 戦略級魔法師の“視線”
その時。
戦略級魔法師が、
初めて動いた。
ゆっくりと、
遺構から視線を外し――
護衛艦の方を見た。
艦長
「……っ!」
迅
「全員、動くな。
刺激するな。」
戦略級魔法師の瞳は、
怒りでも敵意でもない。
ただ――
「来るな」
という、
静かな拒絶だけがあった。
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