第5話 ──転校生──
『空間欠損の魔法師』
第5話 ──転校生──
アークライト学園・エリートクラスの教室前。
霧島に案内され、悠斗は扉の前で深呼吸した。
『緊張してるの、声でわかるよ。
でも大丈夫。君はもう“ここに立てる側”だから』
「……お前は気楽でいいよな、オルタ」
『相棒の晴れ舞台なんだもん。楽しみに決まってるでしょ』
霧島が横目で言う。
「またAIと話してるの?
本当に仲いいわね、あなた達」
「……まあ、はい」
『仲いいよね?』
「はいはい……」
霧島は小さく笑い、扉を開いた。
「新入生を連れてきたわ。入って」
教室中の視線が一斉に向けられる。
ざわつきはない。
ただ、静かに“新しい存在”を測るような空気。
(……すげぇ、全員強そう)
『胸張って。
君はここに来るために頑張ったんだから』
悠斗は前に出る。
男性教師が教壇に立ち、淡々と言った。
「では、自己紹介を」
(……やっぱり来たか)
『転校生の儀式だね。
ほら、堂々と』
「……無理言うなよ」
悠斗は前を向き、口を開いた。
「篠原悠斗です。
軍施設での訓練を終えて、今日からこのクラスに入ります。
魔法はまだ得意じゃないですけど……
よろしくお願いします」
静かな教室に、声が落ち着いて響いた。
教師が頷く。
「席は後ろの窓側だ。
授業が始まるまで待機して」
「はい」
席に向かう途中、
短髪の少年が軽く手を挙げた。
「朝倉だ。よろしくな」
「篠原です。よろしく」
その隣の少女も、控えめに微笑む。
「私は水瀬。
困ったら言ってね」
「ありがとう」
そして――
一番後ろの席の黒髪の少女が、
静かに立ち上がった。
「御門玲奈。
同じクラスになったからには、よろしく」
礼儀正しい。
ただ、その視線がほんの一瞬だけ長く留まり、
胸の奥がざわつくような感覚が走った。
(……なんだ、この感じ)
『あの子、君に興味あるね』
「……やめろ」
席に座ると、オルタが言った。
『よかったじゃない。
ちゃんと転校生っぽかったよ』
「……褒めてるのか?」
『もちろん。
君の声、ちゃんと通ってたし』
「そこかよ……」
やがて授業が始まる。
男性教師が黒板に魔法式を描きながら言う。
「今日は魔力制御の基礎だ。
各自、初期魔法式を展開しろ」
教室中に魔法式の光が広がる。
悠斗も手を前に出し、
訓練で覚えた“最低限の制御”で魔力を流す。
淡い光が形を成し、
初期魔法式が展開された。
教師がちらりと見て言う。
「篠原。
問題ないな」
「はい」
それだけで終わった。
特別扱いも、追加の検査もない。
(……本当に、普通にできた)
『ほらね?
君はもう“普通の授業を受けられる側”なんだよ』
授業が終わると、
御門玲奈が静かに近づいてきた。
「篠原悠斗」
「え、あ……はい」
「あなた、
“危険だから隔離されていた”と聞いたけれど」
「……っ」
玲奈は続ける。
「でも、今日のあなたは普通だった。
授業に支障もなかった」
「……訓練したから」
「そう。
なら、これからも見せてもらうわ。
あなたがどこまで行けるのか」
それだけ言うと、
玲奈は静かに席へ戻っていった。
『ふふ、礼儀正しいし、いい子じゃない。
でもちょっとだけ、君を気にしてる感じだったね』
「……気のせいだろ」
『気のせいじゃないと思うけどなぁ』
悠斗は小さく息を吐いた。
(……ここからが、本当のスタートだ)
こうして、
篠原悠斗の“学園での最初の一歩”が始まった。
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