第二章 第45話 ──視線──
第二章 45話 ──視線──
■ 商店街・昼
昼下がりの商店街は、
いつもと変わらない賑わいを見せていた。
だが――
悠斗は歩きながら、
背中に“冷たいもの”を感じていた。
悠斗
「……なあ、二人とも。」
玲奈
「ん?」
悠斗
「……誰かに見られてる気がしないか?」
紗月
「……やっぱり、悠斗も?」
二人は足を止めた。
玲奈
「……私も、なんか……変な感じがする。」
三人は周囲を見回す。
人は多い。
視線を向けてくる者はいない。
尾行されている気配もない。
だが――
“確かに何かがある”。
悠斗
「……気のせいじゃねえな、これ。」
紗月
「うん……。
なんか、背中をなぞられてるみたいな……」
玲奈
「……怖い。」
三人は自然と歩く速度を上げた。
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■ 屋根の上
影衛隊長・カゲロウは、
三人を見下ろしていた。
カゲロウ
(……気づいたか。)
彼女は驚かなかった。
むしろ、
“気づくべき者が気づいた”という確信があった。
カゲロウ
(深層に触れた者は、
感覚が鋭くなると聞く。
……なるほど。)
カゲロウは距離を保ちながら、
音もなく移動した。
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■ 喫茶店「ルミエール」
店に入ると、
ミリアがいつもの笑顔で迎えた。
ミリア
「いらっしゃいませ。
今日は早いですね。」
悠斗
「……ミリアさん。」
ミリア
「はい?」
悠斗
「……なんか、変な視線を感じるんだ。」
玲奈
「私も……。
ずっと見られてるみたいで……」
紗月
「怖いよ……」
ミリアは一瞬だけ、
表情を固くした。
だがすぐに、
柔らかい笑顔に戻る。
ミリア
「……そうですか。
ここにいる間は大丈夫ですよ。」
悠斗
「……本当に?」
ミリア
「ええ。
ここは“安全”です。」
その言葉は優しい。
しかし――
どこか“重い”。
悠斗は違和感を覚えた。
悠斗
(……ミリアさん、何か知ってる?)
だが聞けなかった。
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■ 喫茶店の外
カゲロウは店の前に立ち、
目を細めた。
カゲロウ
「……また、霞む。」
店の輪郭が薄く揺らぐ。
魔法ではない。
術式の痕跡もない。
ただ、
“見えにくい”。
カゲロウ
「……だが、今日は強くない。」
昨日よりも、
隠蔽の力が弱まっている。
カゲロウ
「……隙がある。」
カゲロウは静かに手を伸ばした。
その瞬間――
空気が“弾けた”。
カゲロウ
「……っ!」
見えない壁に触れたように、
指先が弾かれる。
カゲロウ
「……防がれたか。」
彼女は後退し、
屋根の上へ跳んだ。
カゲロウ
「……この店の中に“何か”がいる。」
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■ 喫茶店の中
ミリアはカウンターの奥で、
そっと息を吐いた。
ミリア
(……危なかった。
今日は定義が揺らいでる。)
ミリア
(このままでは……
いずれ突破される。)
ミリアは三人の方を見た。
悠斗は落ち着かず、
何度も店の外を気にしている。
玲奈は不安げに手を握りしめ、
紗月は肩を震わせていた。
ミリア
(……ごめんなさい。
あなたたちに“確信”させてしまった。)
ミリアは静かに目を閉じた。
ミリア
(でも、まだ守れる。)
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■ 帰り道
店を出た三人は、
無言で歩いていた。
紗月
「……ねえ。
やっぱり、誰かに見られてるよね。」
玲奈
「うん……。
もう“気のせい”じゃない。」
悠斗
「……ああ。
確実に、誰かが俺たちを追ってる。」
三人は立ち止まり、
互いの顔を見た。
悠斗
「……逃げるか?」
玲奈
「逃げても……
追ってくるよ。」
紗月
「じゃあ……どうするの?」
悠斗は拳を握った。
悠斗
「……ミリアさんの店に戻る。
あそこなら……守ってくれる気がする。」
三人は走り出した。
背後で、
屋根の上の影が静かに動いた。
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