第二章 第42話 ──動き出す影──
第二章 42話 ──動き出す影──
■ 御門家本邸・応接室
重厚な扉が閉じると、
空気が一段と張り詰めた。
御門宗一郎は、
背筋を伸ばしたまま微動だにせず、
正面の情報部長を見据えていた。
宗一郎
「……玲奈の所在。
未だ掴めぬとは、どういうことだ。」
情報部長
「現在、全力で捜索を――」
宗一郎
「言い訳は聞かん。」
その一言で、
部屋の温度が数度下がったように感じられた。
宗一郎
「軍は、何をしている。
我が娘一人、探せぬのか。」
情報部長は息を呑む。
宗一郎
「深層について、
軍はどこまで理解している。」
情報部長
「……調査中でして――」
宗一郎
「つまり“何も知らぬ”ということだ。」
宗一郎は机に置かれた古い木箱を開いた。
中には、黄ばんだ紙片と、古い印章。
宗一郎
「御門家には、
代々伝わる“口伝”がある。」
情報部長
「……どのような?」
宗一郎
「深層に触れた者は、
“世界の理に触れる”。
その者の周囲には、
必ず“変化”が起こる。」
情報部長
「変化……?」
宗一郎
「良いとも悪いとも書かれていない。
ただ――
“異質”だとだけ。」
宗一郎は紙片を指で押さえた。
宗一郎
「深層に触れた者は、
守らねばならぬ。
それが御門家の解釈だ。」
情報部長
「……解釈、ですか。」
宗一郎
「口伝は抽象的だ。
だが現代に照らせば、
“放置すれば争いの火種になる”と読める。」
宗一郎の声は低く、揺るぎない。
宗一郎
「宗谷沖で起きていることも、
無関係ではあるまい。」
情報部長
「どういう意味でしょう。」
宗一郎
「他国が“戦略級魔法師”を投入した。
あれは――
“何かを探している”動きだ。」
情報部長
「……!」
宗一郎
「深層の気配を追っている可能性がある。」
宗一郎は立ち上がった。
宗一郎
「軍は即刻、
玲奈と“あの少年”を保護せよ。
……これは命令だ。」
情報部長は深く頭を下げるしかなかった。
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■ 宗谷沖・日本海上
灰色の空。
荒れる海。
その上空に、
黒い影が現れた。
隊員
「敵機接近! 識別不能!
魔力反応――“戦略級”です!」
護衛艦の甲板が震える。
艦長
「戦略級……!?
なぜこの海域に――」
空を裂くように、
蒼白い光が走った。
隊員
「魔法攻撃です!
防御結界、展開――!」
結界が展開されるが、
光はその表面を容易く削り取った。
艦長
「くそっ……!
これは演習じゃない……
“襲撃”だ!」
空に浮かぶ影は、
人の形をしていた。
だが、
その周囲の空気が歪み、
海が震え、
空が軋む。
隊員
「……あれが……
“戦略級魔法師”……?」
艦長
「全艦、退避!
これ以上は持たん!」
蒼白い光が再び収束する。
その瞬間――
海が割れた。
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■ 防衛省・情報部長室
緊急通信が鳴り響く。
通信
『宗谷沖の護衛艦隊が攻撃を受けています!
敵は“戦略級魔法師”と推定!』
情報部長
「……始まったか。」
宗一郎の言葉が脳裏をよぎる。
“深層に触れた者は、異質を呼ぶ”
情報部長
「……篠原悠斗。
君は、どれほどの存在なんだ……?」
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■ 喫茶店「ルミエール」
その頃、
悠斗たちは静かにコーヒーを飲んでいた。
外の騒がしさは、
ここには届かない。
玲奈
「……なんか、最近変だよね。」
悠斗
「まあ……俺たちが変な状況だからな。」
紗月
「でも……ここにいると落ち着くよね。」
ミリアは微笑んだ。
ミリア
「ええ。
ここは“安全”ですから。」
その言葉の意味を、
三人はまだ知らない。
だが――
世界は確実に動き始めていた。
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