第二章 第39話 ──宗谷沖、白い海──
第二章 39話 ──宗谷沖、白い海──
宗谷岬の北方。
冬の海は、静かに、しかし重くうねっていた。
灰色の雲が低く垂れ込み、
視界は悪い。
風は鋭く、頬を刺す。
その海域に、
日本の護衛艦が展開していた。
艦橋では、
レーダー員が画面を睨みつけている。
レーダー員
「……また反応です。
北北西、距離二十。
高度は低いままです。」
艦長
「第三国の哨戒機か?」
副長
「識別信号は……ありません。
ただ、速度は軍用機並みです。」
艦長は眉をひそめた。
艦長
「演習にしては、随分と近いな。」
宗谷沖では、
ここ数日“演習”と称した活動が続いていた。
だが――
その動きは、どう見ても演習の範囲を超えている。
艦橋の窓から見える海面には、
遠くに黒い影が浮かんでいた。
副長
「……潜水艦の浮上航行でしょうか?」
艦長
「いや、形が違う。
第三国の新型か……?」
そのとき、
通信士が声を上げた。
通信士
「艦長、北方からの通信です!
“識別不能の電子ノイズ”が断続的に発生しています!」
艦長
「ノイズ……?
妨害か?」
通信士
「いえ……妨害にしては規則性がありません。
波形が一定ではなく……
まるで“何かを探している”ような……」
艦長
「探している……?」
艦長の背筋に、
冷たいものが走った。
その瞬間、
レーダー画面に強い反応が走る。
レーダー員
「反応増大!
複数の機影が急接近――!」
艦長
「所属は!?」
レーダー員
「不明!
識別信号なし!
速度は……戦闘機並みです!」
艦橋がざわめく。
副長
「演習の範囲を完全に逸脱しています。
これは……」
艦長
「……“何かを探すための作戦行動”だ。」
副長
「何を……?」
艦長
「……わからん。
だが、普通の演習ではない。」
艦長は窓の外を見た。
灰色の海。
低い雲。
遠くに浮かぶ黒い影。
そして――
空を切り裂くように、
不明機が一瞬だけ姿を見せた。
艦長
「……この海域で何が起きている?」
誰も答えられなかった。
宗谷沖の海は、
ただ静かに波を打っている。
しかしその下で、
確実に“何か”が動いていた。
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