第二章 第37話 ──隠れる者たちの日常──
第二章 37話 ──隠れる者たちの日常──
朝の光が薄く差し込む六畳の部屋。
古いアパートの一室に、三人は身を寄せ合うように暮らしていた。
家具は最低限。
布団は三つ。
冷蔵庫は小さく、コンロは一口だけ。
だが、
ここは“安全”だった。
少なくとも今のところは。
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■ 変装と生活リズム
紗月
「今日の買い物、私が行くね。
昨日は悠斗が行ったし。」
悠斗
「……気をつけろよ。
軍の巡回が増えてる。」
玲奈
「紗月、帽子とマスク……忘れないでね。」
三人は毎朝、
変装の確認から始まる。
- 髪型を変える
- 帽子や眼鏡で輪郭を隠す
- 服装は地味な色
- 目立つ行動はしない
- 同じ店に続けて行かない
紗月は鏡の前で髪をまとめ、
眼鏡をかけて表情を引き締めた。
紗月
「……よし。行ってくる。」
悠斗
「無理はするなよ。」
玲奈
「……気をつけて。」
紗月は軽く手を振り、
静かに部屋を出た。
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■ アパートでの時間
紗月が出ていくと、
部屋は急に静かになった。
玲奈は窓の隙間から外を覗く。
玲奈
「……今日も、軍の車は見えないね。」
悠斗
「ああ。
でも油断はできない。」
玲奈
「……うん。」
二人はしばらく黙っていた。
逃亡生活は、
“待つ時間”が長い。
外に出れば危険。
しかし部屋に閉じこもれば、
不安が増す。
悠斗は古いノートを開き、
空間欠損の制御について書き込んでいた。
玲奈
「……また研究してるの?」
悠斗
「制御できなきゃ、
いつか本当に取り返しがつかなくなる。」
玲奈
「……無理しないでね。」
玲奈はそう言って、
そっと悠斗の隣に座った。
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■ 紗月の買い物
紗月は街のスーパーで、
必要最低限の食材だけを買う。
- 野菜
- パン
- 卵
- 安い肉
買い物かごは軽い。
紗月
(……節約しないと。)
財布の中身は限られている。
軍に追われている以上、
働くこともできない。
レジを済ませ、
袋を抱えて歩き出す。
その途中、
喫茶店「ルミエール」の前を通った。
ミリアが店の外を掃除していた。
ミリア
「あら、紗月さん。
お買い物ですか?」
紗月
「はい。
今日は少しだけ……。」
ミリア
「無理しないでくださいね。
最近、物騒なニュースが多いですし。」
紗月
「……そうですね。」
ミリアは柔らかく微笑んだ。
ただの店員の笑顔。
それ以上でも、それ以下でもない。
紗月
「また来ますね。」
ミリア
「はい。お待ちしてます。」
紗月は軽く頭を下げ、
アパートへ戻った。
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■ 三人の食卓
夕方。
三人は小さなテーブルを囲んで食事をとる。
紗月
「今日は野菜スープとパンだけだけど……」
玲奈
「十分だよ。
紗月の料理、おいしいし。」
悠斗
「……助かってる。」
紗月
「ふふ、よかった。」
三人の会話は穏やかだ。
だがその裏には、
常に“緊張”がある。
- いつ軍に見つかるか
- いつ外国勢力が動くか
- いつ深層が揺れるか
それでも、
三人は笑っていた。
逃亡生活の中で、
笑える時間は貴重だった。
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■ 夜の不安
夜。
玲奈は眠れず、
布団の中で小さく呟いた。
玲奈
「……いつまで、こうしていられるのかな。」
紗月
「……大丈夫。
きっと、なんとかなるよ。」
玲奈
「……うん。」
悠斗は窓の外を見つめていた。
遠くで、
パトカーのサイレンが小さく響く。
悠斗
(……時間は、あまり残されていない。)
胸の奥に、
重い不安が沈んでいた。
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