第4話 ──アークライト学園──
『空間欠損の魔法師』
第4話 ──アークライト学園──
軍施設での隔離訓練が終わった翌朝。
篠原悠斗は、黒い車に揺られていた。
窓の外には深い森。
その奥に、白い巨大な建造物が姿を現す。
「……あれが、アークライト学園……」
胸の奥がざわつく。
『お、ついに来たね。
いやぁ、長かったような短かったような』
頭の奥に、軽い声が響いた。
「朝からテンション高いな、オルタ」
『君が黙ってると退屈なんだよ。
もっとこう……入学初日っぽいリアクションしてよ』
「……無理言うなよ」
『えぇ〜?』
車が止まり、ドアが開く。
「篠原悠斗くん、ようこそ」
軍服姿の女性教官──霧島玲奈が迎えに来ていた。
「今日から君の学園生活を担当する。
まずは入学手続きと寮の案内だ」
「よろしくお願いします」
霧島は悠斗を一瞥し、わずかに目を細めた。
「……訓練の成果ね。
以前より“揺らぎ”がだいぶ減ってる」
『でしょ? 僕が毎日見てたんだから』
「お前が言うと褒められてる気がしないんだよ」
『えぇ〜!?』
霧島が呆れたように言う。
「またAIと話してるの?
ほんと、仲いいわねあなた達」
「いや、仲がいいっていうか……」
『仲いいよね?』
「……まあ、否定はしない」
霧島は小さく笑った。
「訓練中からずっとそんな感じだったって聞いてるわ。
あの気難しいAIが、よくもまあ懐いたものね」
『気難しいは余計だよ霧島教官。
僕は繊細なんだ』
「繊細……?」
『繊細なんだよ』
霧島は肩をすくめた。
「はいはい。
とにかく、ついてきて。
ここから先は学園の敷地よ」
学園の門をくぐると、
広い中庭と、魔力を帯びた巨大な校舎が広がっていた。
悠斗は息を呑む。
(……すげぇ……)
『ほら、ちゃんと驚けるじゃないか。
その調子その調子』
「うるさい」
校舎に入ると、魔力感知ゲートが並んでいた。
「ここを通ると、魔力の安定度が測定される。
訓練の成果が出ていれば問題ないはずよ」
悠斗は深呼吸し、ゲートをくぐる。
──ピッ。
装置が一瞬だけ揺らいだが、
すぐに安定した緑色の光に変わった。
『ほら見ろ、緑。
僕のサポートは完璧なんだよ』
「お前がやったのは口出しだけだろ」
『精神面の調整は大事なんだよ?
君はすぐ不安になるんだから』
霧島が言う。
「本当に安定してるわね。
訓練の成果が出てる」
『でしょでしょ?』
「お前が褒められてるわけじゃないからな」
『えぇ〜!?』
霧島は歩き出す。
「次はクラス分けよ。
君の訓練データはすでに共有されているから、
適切なクラスに配属されるはず」
「適切な……」
霧島は少しだけ口元を緩めた。
「──エリートクラスよ」
悠斗は思わず足を止めた。
「えっ……?」
『おめでとう、悠斗!
僕の相棒がエリートクラスとか、胸が熱くなるねぇ』
「いや、俺まだ何も……」
『何もじゃないよ。
訓練中、君がどれだけ頑張ってたか、僕は全部知ってる』
声が少しだけ柔らかくなる。
『君はもう、“ただの訓練生”じゃないよ』
悠斗は息を呑んだ。
霧島は校舎の奥を指した。
「さあ、行きましょう。
エリートクラスの教室は、学園の中心部にある」
悠斗はゆっくりと歩き出した。
『大丈夫。
僕がついてるからね、相棒』
「……頼りにしてるよ」
『任せなさい!』
こうして、
“空間欠損の魔法師”の学園生活が始まった。
まだ誰も知らない。
この少年が、学園の常識を根底から覆す存在になることを。
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