第二章 第34話 ──外の世界へ──
第二章 34話 ──外の世界へ──
夜明け前の薄明かりが、
山小屋の窓を淡く照らしていた。
三人は古い毛布にくるまり、
ようやく落ち着きを取り戻していた。
男は火のそばで湯を沸かしながら、
静かに口を開いた。
男
「外の世界は特別じゃない。
普通の街だ。
深層のことなんて誰も知らない。」
紗月
「……はい。」
悠斗
「俺も……知らなかった。」
男
「だからこそ、お前たちは追われる。
深層を外に漏らしたくない連中がいる。」
玲奈
「……どうすれば……?」
男は古い地図を広げた。
男
「山を下りれば街に出る。
だが正面の道は監視されている。
使うのは……こっちだ。」
地図の端に、細い山道が描かれていた。
男
「昔、俺が逃げた時に使った“裏道”だ。」
三人は頷いた。
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■ 裏道の入口
朝日が山の端を照らし始めた頃、
四人は小屋を出た。
谷へ向かう分岐点に差し掛かったとき、
男が立ち止まった。
男
「ここから先は道が細い。
分岐も多い。
……行くぞ。」
三人は男の後ろに続いた。
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■ 男の過去
険しい山道を進みながら、
男はぽつりと語り始めた。
男
「……俺は昔、施設で働いていた。
深層研究の初期段階だ。」
紗月
「……そうなんですか。」
男
「最初は“人を救うため”の研究だった。
だが、いつの間にか目的が変わった。
子どもたちを……道具のように扱うようになった。」
悠斗
「……」
男
「耐えられなかった。
だから辞めた。
そして……逃げた子どもを匿うようになった。」
玲奈
「……他にも、逃げた子が?」
男
「何人かはな。
だが……全員が無事に外へ出られたわけじゃない。」
空気が重くなる。
男
「お前たちは……必ず外へ出ろ。
普通の世界で生きろ。」
紗月
「……はい。」
悠斗
「行きます。」
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■ 街へ
谷を抜けた先で、
三人は立ち止まった。
朝日に照らされた街並みが見える。
屋根の色、道路、車の音。
どれも“普通”で、見慣れた景色だった。
紗月
「……街だ……」
玲奈
「うん……戻ってきたんだね……」
悠斗
「俺たちの世界に。」
男は三人の横に立ち、
静かに頷いた。
男
「ここから先は、お前たちだけで行け。
俺は戻る。」
紗月
「戻る……?」
男
「まだ……助けられる子どもがいるかもしれない。」
三人は言葉を失った。
男
「行け。
振り返るな。」
紗月
「……ありがとうございました。」
悠斗
「必ず……生きます。」
玲奈
「忘れません……あなたのこと。」
男は背を向け、
山の奥へと消えていった。
三人はしばらくその背中を見つめていたが、
やがて街へ向かって歩き出した。
普通の世界へ。
深層を知らない人々の世界へ。
三人の逃走は終わり、
新しい日常が始まろうとしていた。
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