第二章 第33話 ──匿われる場所──
第二章 33話 ──匿われる場所──
夜の森を抜けた三人は、
息を切らしながら細い山道を駆けていた。
背後では、
追手のライトが木々の間を揺れている。
玲奈
「……もう無理……足が……」
紗月
「玲奈ちゃん、手……!」
玲奈は紗月の手を掴んだ。
その横で、悠斗が玲奈の肩を支える。
その瞬間、
玲奈の胸がまた痛んだ。
――どうして。
助けられているだけなのに。
胸がざわつく理由が分からない。
だが、考えている余裕はなかった。
紗月
「……誰か……いる……?」
紗月が足を止めた。
暗闇の先に、
小さな灯りが揺れている。
玲奈
「……家……?」
いや、家というより――
山小屋のような古い建物。
だが、灯りは確かに“人の気配”を示していた。
悠斗
「……行くしかない。
追手に捕まるよりは……」
三人が近づくと、
扉がわずかに開いた。
中から、
落ち着いた声が響く。
???
「……入れ。
追われているんだろう?」
三人は息を呑んだ。
紗月
「……誰……?」
男はランタンを掲げ、
三人の顔を順に見た。
中年の男。
無精ひげに、疲れた目。
だが、その目は“恐怖”ではなく“理解”を宿していた。
男
「安心しろ。
俺は施設の人間じゃない。
……元、だ。」
玲奈
「元……?」
男
「昔、あそこで働いていた。
だが、深層の研究が“人間を壊す”と気づいて辞めた。
……お前たちのような子どもを、何人も見てきた。」
紗月の肩が震えた。
悠斗
「……俺たちを……匿ってくれるのか?」
男は静かに頷いた。
男
「追手はすぐここを通る。
だが、この小屋は地図に載っていない。
……一晩だけなら、隠せる。」
玲奈
「……ありがとう……ございます……」
男
「礼はいらん。
俺はただ……
“救えなかった子どもたち”の代わりに、
お前たちを助けたいだけだ。」
三人は小屋の中へ入った。
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■ 小屋の中で
小屋の中は狭く、
古い木の匂いがした。
男は窓の板を閉め、
灯りを弱めた。
男
「追手はすぐ近くまで来る。
声を出すな。
息も潜めろ。」
三人は身を寄せ合って座った。
紗月の肩が震えている。
悠斗がそっと手を添えた。
紗月
「……ありがとう……」
悠斗
「大丈夫だ。
俺がいる。」
その言葉に、
玲奈の胸がまた痛んだ。
――どうして。
どうしてこんなに苦しいの。
二人が寄り添っているだけなのに。
理由は分からない。
ただ、胸の奥が熱くなる。
男
「……お前たち。
深層に触れたな?」
三人は息を呑んだ。
紗月
「……どうして……」
男
「その目を見れば分かる。
深層に触れた子どもは……
“同じ色”になる。」
玲奈は二人を見た。
紗月と悠斗の瞳は、
確かにどこか似ていた。
玲奈
「……二人とも……
そんなに……変わって……」
言いかけて、
胸がまた痛んだ。
――置いていかれるみたい。
二人だけが、どこか遠くへ行ってしまうみたい。
だが、玲奈はその感情に名前をつけられなかった。
男
「今夜はここで休め。
明日になれば……
“外の世界”へ出る道を教えてやる。」
三人は静かに頷いた。
外では、
追手のライトが森を照らしながら通り過ぎていく。
小屋の中で、
三人は息を潜めながら、
それぞれの胸に“別々の痛み”を抱えていた。
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