第二章 第32話 ──排水路の先で──
第二章 32話 ──排水路の先で──
落下の衝撃が消えたとき、
三人は薄暗いコンクリートの床に倒れ込んでいた。
紗月
「っ……痛い……」
悠斗
「大丈夫か、紗月」
玲奈
「紗月、こっち……」
玲奈が紗月を支え、
悠斗が反対側から手を添える。
その光景を見た瞬間、
玲奈の胸がかすかに痛んだ。
――どうして。
紗月が助けられているだけなのに。
胸がざわつく理由が分からない。
排水路は薄暗く、湿った空気が漂っていた。
紗月
「……ここ、どこ……?」
悠斗
「昔の施設の跡だと思う。
出口を探そう」
玲奈
「うん……急がないと」
三人は走り出す。
だが、紗月がふらりと足を止めた。
紗月
「……っ……また……聞こえる……」
悠斗
「紗月……俺にも来てる」
二人の視線が交差する。
玲奈の胸がきゅっと締めつけられた。
――どうして。
どうしてこんなに苦しいの。
二人が同じものを感じているだけなのに。
排水路の奥から、
金属音が響いた。
玲奈
「追手……来てる……!」
紗月
「出口……こっち……!」
紗月が走り出す。
深層の感応が方向を示している。
玲奈はその背中を追いながら、
胸の痛みを押し殺した。
――理由なんて分からない。
でも、紗月を守らなきゃ。
突き当たりに古いハッチが見えた。
悠斗
「開ける!」
夜風が流れ込む。
紗月
「外だ……!」
追手のライトが排水路に差し込む。
玲奈
「走って!!」
三人は夜の闇へと駆け出した。
深層に触れた少年と、
深層に届く少女。
そして――
二人を支える少女、御門玲奈。
胸の痛みの理由を知らないまま、
玲奈はただ二人の背中を追い続けた。
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