第二章 第30話 ──脱走──
第二章 30話 ──脱走──
観測室の扉が閉まる音が、
やけに重く響いた。
紗月は深く息を吸い、
震える指で悠斗の手を握り直す。
その隣には――
白衣の袖を握りしめた少女、
御門玲奈 が立っていた。
玲奈
「……紗月、行こう。
ここにいたら、すぐに部隊が来る。」
紗月
「うん……!」
悠斗
「玲奈さん……ありがとう。
本当に来てくれたんだ。」
玲奈
「当たり前でしょ。
紗月ひとりで来させるわけないじゃん。
……それに、あなたをこのままにしておけるわけない。」
玲奈は強がりの笑みを浮かべたが、
その手はわずかに震えていた。
玲奈
「行くよ、二人とも。」
三人が廊下へ踏み出した瞬間――
ウウウウウウウ――!!
警報が施設全体に響き渡った。
紗月
「っ……!」
玲奈
「来た……!
もう時間ない、急いで!」
悠斗
「搬入口から出るんだよな?」
玲奈
「うん。
正面はすぐ封鎖される。
裏ならまだ間に合う!」
三人は駆け出した。
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■ 天城主任の決断
警報が鳴り響く中、
天城は観測室にひとり残っていた。
天城
「……やはり、こうなるか。」
研究員が駆け込んでくる。
研究員
「主任!
被験体A、天城紗月、御門玲奈が移動しています!
拘束部隊を――」
天城
「……必要ない。」
研究員
「え……?」
天城
「彼らは逃げる。
止めるな。」
研究員
「主任、それは命令違反です!」
天城
「私が責任を取る。」
研究員は言葉を失った。
天城
「……紗月。
私はもう、君を閉じ込める側には立てない。」
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■ 逃走──深層の囁き
搬入口へ向かう途中、
悠斗は突然足を止めた。
紗月
「ユウトくん……?」
悠斗
「……また聞こえる。」
胸の奥で、
深層が静かに波打つ。
オルタ
(……急ぎなさい、悠斗……
あなたたちは……“見られている”……)
玲奈
「深層干渉……!?
でも、暴走じゃない……!」
悠斗
「出口を……教えてくれてる。」
紗月
「行こう!」
三人は再び走り出した。
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■ 追跡──軍部の影
搬入口の手前で、
重い足音が響いた。
軍兵
「発見!
被験体A、天城紗月、御門玲奈を確保せよ!!」
玲奈
「来た……!」
紗月
「玲奈ちゃん、下がって!」
悠斗
「二人とも、俺の後ろに!」
悠斗の周囲に、
深層の波動が広がる。
軍兵
「魔力反応上昇!
距離を――」
だが、
その波動は攻撃ではなかった。
空間が歪む。
軍兵
「なっ……!?
視界が……!」
深層の“影”が、
軍兵たちの視界を奪った。
玲奈
「これ……深層の影……!?
でも……制御されてる……!」
悠斗
「……オルタがやってる。」
オルタ
(……行きなさい……
今だけは……私が“守る”……)
紗月
「ありがとう……!」
三人は軍兵の横をすり抜け、
搬入口へと走った。
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■ 脱出──外の空気
搬入口の扉を開けると、
夜の冷たい空気が流れ込んだ。
紗月
「……外……!」
玲奈
「急いで!
追手が来る!」
悠斗
「行こう……!」
三人は施設の外へ飛び出した。
その瞬間――
背後で、
天城の声が微かに聞こえた気がした。
天城
「……紗月……
どうか……幸せでいてくれ……」
紗月は振り返らなかった。
玲奈
「紗月、走って!」
悠斗
「こっちだ!」
三人は闇の中へ走り出した。
深層に触れた少年と、
深層に届く少女。
そして――
二人を支える少女、御門玲奈。
物語は、
ここからさらに加速する。
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