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空間欠損の魔法師  作者: 猫宮みけ
第二章 深層拒絶編

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第二章 第26話 ──離脱──

第二章 第26話 ──離脱──


学園の裏門は、普段ならほとんど使われない。

だが今は、軍の車両が何台も停まり、

警備兵が慌ただしく行き交っていた。


「……正面からは無理だね」


玲奈が小声で呟く。


紗月は制服の袖を握りしめ、

不安そうに周囲を見渡した。


「軍が……こんなに動くなんて……

 外部勢力の侵入だけで、ここまで警備を増やすなんて……

 まるで……何かを必死に隠してるみたい……」


玲奈は紗月の肩に手を置いた。


「落ち着いて。

 軍は“外部勢力の侵入”って建前で動いてるだけ。

 本当の目的は……悠斗くんの確保と隠蔽」


紗月は唇を噛んだ。


「……やっぱり……」


玲奈は裏門から少し離れた植え込みを指差した。


「紗月。

 あそこ、見える?」


紗月は目を凝らす。


「……監視魔法の……“死角”……?」


「そう。

 結界の重なりで魔力の流れが薄くなってる。

 あそこなら、抜けられる」


紗月は息を呑んだ。


「でも……軍の人が……」


「大丈夫。

 彼らは“外側”を警戒してる。

 学園から誰かが出るなんて、想定してない」


玲奈は紗月の手を取り、

植え込みの影へと身を滑り込ませた。


魔力の流れが薄い場所を通り抜けると、

空気が一瞬だけ冷たくなる。


「……抜けた……?」


紗月が振り返る。


学園の結界が、

薄い膜のように揺れていた。


玲奈は頷く。


「ここから先は、軍の監視は届かない。

 でも……山の中はもっと厳しいよ」


紗月は深く息を吸い、

決意を込めて頷いた。


「……行こう。

 ユウトくんを助けるために」


---


■ 山道


学園から北西へ向かう道は、

舗装が途切れるとすぐに森へと変わった。


木々の間を抜ける風が冷たい。


紗月は腕を擦りながら言った。


「……こんな場所に、軍の施設が……?」


玲奈は周囲を警戒しながら歩く。


「普通の人が近づかない場所ほど、

 軍は好むんだよ。

 “隠す”には最適だから」


紗月はうつむいた。


「……ユウトくん……

 怖い思いしてないかな……」


玲奈は歩みを止め、

紗月の方を向いた。


「紗月。

 あなたが心配してるのは分かる。

 でも……今は前を向いて」


紗月は目を潤ませながら頷いた。


「……うん……」


玲奈は続ける。


「悠斗くんは……強いよ。

 私たちが行くまで、絶対に耐えてる」


紗月は小さく笑った。


「玲奈ちゃん……ありがとう……」


二人は再び歩き出した。


---


■ 不穏な痕跡


しばらく進むと、

玲奈が突然立ち止まった。


「……紗月。

 ここ、見て」


地面に、

黒い“焦げ跡”のようなものが点々と続いている。


紗月は息を呑んだ。


「これ……ユウトくんの……?」


玲奈は首を振る。


「違う。

 これは……“霧の残滓”」


紗月の顔色が変わる。


「じゃあ……外部勢力が……?」


玲奈は静かに言った。


「……違う。

 これは……“深層の揺れ”が漏れた痕」


紗月は震える声で言った。


「深層……って……

 ユウトくんの……?」


玲奈は頷く。


「軍が……深層観測を始めたんだと思う。

 その影響が、ここまで漏れてる」


紗月は胸を押さえた。


「そんな……

 ユウトくん……大丈夫なの……?」


玲奈は紗月の手を握った。


「急ごう。

 時間がない」


---


■ 山の奥へ


黒い痕跡は、

山の奥へ奥へと続いていた。


やがて――


木々の間に、

不自然な“金属の壁”が見えた。


紗月が息を呑む。


「……これ……」


玲奈は目を細めた。


「……軍の結界装置。

 ここが……“入口”だ」


二人は木陰に身を潜め、

静かに息を整えた。


玲奈が結界を観察しながら呟く。


「……この結界、外部侵入だけじゃない。

 “軍の認証ID”がないと通れないタイプだよ」


紗月は目を見開いた。


「軍の……ID……?」


「そう。

 軍の人間なら通れる。

 でも私たちは……」


玲奈が言いかけた時、

紗月は制服の内ポケットをぎゅっと握った。


玲奈が気づく。


「紗月……どうしたの?」


紗月は震える手で、

小さなカードを取り出した。


「……昨日、お父さんが帰ってきた時……

 IDを机に置きっぱなしにしてて……

 返そうと思って……

 そのまま……持ってきちゃったの……」


玲奈は息を呑んだ。


「紗月……それ……!」


紗月は涙をこらえながら言った。


「分かってる……

 勝手に持ち出しちゃいけないって……

 でも……今は……これしかないの……

 ユウトくんを助けるためなら……

 私は……お父さんに嫌われてもいい」


玲奈は紗月の手をそっと握った。


「紗月……行こう。

 あなたの覚悟、無駄にしない」


紗月は強く頷いた。


二人は、

軍の結界へと足を踏み入れた。


---

1日1善1日1投稿♪

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