第二章 第25話 ──追跡──
第二章 第25話 ──追跡──
学園の廊下は、異様なほど静かだった。
昨夜の侵入事件の影響で、
生徒たちは寮に閉じ込められ、
教師たちは警備の強化に追われている。
その混乱の中、
御門玲奈と天城紗月は、
人気のない資料室へと足を踏み入れた。
玲奈が扉を閉め、
魔力で簡易的な遮断結界を張る。
「……これで、軍の監視は届かない」
紗月は胸に手を当て、
不安を押し殺すように息を整えた。
「玲奈ちゃん……本当に、ここでいいの……?」
「大丈夫。
ここなら、誰にも聞かれない」
玲奈は棚から古い地図を取り出し、机に広げた。
「紗月。
軍が“外部勢力の仕業”って言ったのは嘘。
それはもう確定でいい?」
紗月は唇を噛みしめた。
「……うん。
お父さん……嘘ついてる時の目、
してた……
絶対に何か隠してる……」
玲奈は地図の上に指を滑らせる。
「じゃあ次は――
軍が悠斗くんをどこへ運んだか」
紗月は少し迷い、
指先をぎゅっと握りしめた。
「……“観測区画”って言葉……
聞いたことがあるの」
玲奈が顔を上げる。
「観測区画?」
「うん……。
お父さんが軍の人と電話してる時に、
何度かその言葉が出てきて……」
紗月は視線を落とした。
「“深層の揺れが大きい子を調べる場所”……
そんな感じの話だった。
でも……詳しいことは全然知らないの。
場所も、どういう施設なのかも……
私には教えてくれなかった」
玲奈は静かに頷いた。
「……紗月のお父さんが隠してるなら、
そこに悠斗くんがいる可能性は高い」
紗月は胸元を押さえた。
「……でも……
どうして……何も言ってくれないの……
ユウトくんが……どこにいるのかも……」
玲奈は紗月の手をそっと握った。
「大丈夫。
制度を知らなくても、痕跡を追えば場所は分かる」
紗月は涙を拭い、強く頷いた。
「……うん……!」
玲奈は端末を起動し、
学園の結界記録にアクセスする。
「学園の結界は、外部からの魔力を“記録”してる。
軍の車両が通った痕跡も残ってるはず」
紗月は息を呑んだ。
「そんなことまで……」
「できるよ。
悠斗くんを助けるためなら、何でもやる」
端末の画面に、
魔力の軌跡が浮かび上がった。
一本の線が、
学園から北西へ向かって伸びている。
紗月が震える声で言った。
「……これ……軍の車両の痕跡……?」
「そう。
そして、この方向にあるのは――」
玲奈は地図を広げ、線の先を指差した。
「……山間部の、立ち入り禁止区域」
紗月は息を呑む。
「そこに……“観測区画”が……?」
「可能性は高い。
軍が隠したいなら、山の中が一番都合がいい」
紗月は拳を握りしめた。
「……行こう。
ユウトくんを……取り戻すために」
玲奈は端末を閉じ、
紗月と視線を合わせた。
「――行こう」
二人は資料室を後にした。
学園の外へ向かうその背中には、
迷いは一つもなかった。
---
1日1善1日1投稿♪




