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空間欠損の魔法師  作者: 猫宮みけ
第二章 深層拒絶編

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第二章 第24話 ──深層観測2──

第二章 第24話 ──深層観測2──


金属の軋む音で、悠斗は目を覚ました。


昨日よりも、身体が重い。

魔力の流れは鈍く、胸の奥がじんじんと痛む。


(……また、ここか)


軍の第七観測区画。

無機質な白い壁と、魔力遮断の匂い。


ベッドの横には、

昨日と同じ拘束具が淡々と光っていた。


扉が開く。


「起きているな、篠原」


天城主任が入ってきた。

白衣のポケットには、複数の端末が差し込まれている。


「今日から本格的に“深層観測”を行う」


主任は淡々と告げる。


「昨日の初期観測で、君の深層は通常の“揺れ”では説明できない反応を示した。

 深層領域に何かがあると考えるべきだ」


「……深層領域……?」


主任は端末を操作しながら言う。


「魔力の“根”のようなものだ。

 通常の魔法師には存在しない。

 だが君には――“ある”。」


その言い方に、悠斗は胸がざわついた。


(……俺の中に……何があるっていうんだ)


主任は続ける。


「安心しろ。

 深層観測は危険だが、死ぬことはない」


「……“死ぬことはない”って……」


「精神が壊れる可能性はあるが、肉体は保護されている」


悠斗は思わず睨んだ。


主任は表情を変えない。


「では始める」


拘束具が外され、代わりに腕に冷たいリングが装着される。

魔力を強制的に“深層”へ引きずり込む装置だ。


主任が端末を操作すると、

部屋の照明が落ち、

床に複雑な魔法陣が浮かび上がった。


「目を閉じろ。

 深層に沈む感覚が来る」


悠斗は息を呑み、目を閉じた。


次の瞬間――


意識が、落ちた。


---


■ 深層領域


暗闇。

底のない深さ。


音も、光も、感覚もない。


ただ――


何かが“こちらを見ている”。


(……誰だ……?)


声にならない声が、

遠くから響いた。


『……ゆうと……』


オルタだ。


『……気をつけて……ここ……深い……』


(オルタ……! 大丈夫なのか……?)


『……少しだけ……つながってる……

 でも……長くは……』


声が途切れかける。


その時――


暗闇の奥で、

“ひび割れ”が走った。


空間が裂け、

そこから黒い霧が滲み出す。


(……これ……昨日の……)


だが、昨日の霧とは違う。


もっと濃く、

もっと深く、

もっと“生きている”。


霧の奥から、

何かが形を成し始めた。


人のようで、人ではない。

影のようで、影ではない。


『……ゆうと……逃げて……』


オルタの声が震える。


(……逃げる……? どこに……)


深層領域には逃げ場がない。


影が、こちらへ手を伸ばす。


その瞬間――


現実の声が割り込んだ。


「篠原! 意識を戻せ!」


天城主任の声だ。


(……戻れ……戻らないと……)


影の手が触れようとした瞬間、

視界が白く弾けた。


---


■ 観測室


「……っ!」


悠斗は息を荒げながら目を開けた。


身体中が汗で濡れている。

心臓が痛いほど脈打っていた。


主任が端末を見つめながら言う。


「……やはり、深層に“何か”がいるな」


「……あれは……なんなんだ……」


主任は答えない。


ただ、端末の画面を見つめたまま呟いた。


「……深層の奥に“意志”がある……

 そんな馬鹿な話が……」


その声は、昨日よりもわずかに揺れていた。


悠斗は胸元のペンダントを握る。


(……オルタ……)


微かに震えた。


『……ゆうと……まだ……終わってない……』


主任が振り返る。


「今日はここまでだ。

 だが、明日も続ける。

 深層の“正体”を突き止めるまではな」


悠斗は息を整えながら、

主任の背中を睨んだ。


(……俺の中に……何がいる……?)


扉が閉まる。


観測室には、

悠斗の荒い呼吸だけが残った。


---

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