サイドストーリー:学園長──沈黙の判断──
サイドストーリー:学園長──沈黙の判断──
学園長室は、朝の光を受けて静かに輝いていた。
だが、その空気は重い。
昨夜の侵入事件。
外部勢力の痕跡。
そして――篠原悠斗の消失。
学園長は軍から届いた報告書を見つめていた。
(……外部勢力、ね)
報告書は簡潔だった。
だが、その“簡潔さ”こそが不自然だった。
侵入から数時間しか経っていない。
霧の残滓も不完全。
結界の破損も説明がつかない。
それでも軍は、
まるで“最初から答えを知っていた”かのように
外部勢力の仕業と断定してきた。
(……判断が早すぎる)
扉がノックされる。
「学園長。天城主任がお見えです」
「通して」
主任は無表情で入ってきた。
「報告書の通りだ。外部勢力の侵入を確認した。
篠原悠斗は、その際に奪取された」
淡々とした声。
だが、その“温度”に学園長は違和感を覚えた。
(……この男、何かを隠している)
主任は必要最低限の説明だけを残し、
すぐに部屋を出ていった。
扉が閉まる。
学園長は静かに息を吐いた。
(……軍と正面から対立することはできない。
だが、このまま軍の言い分を鵜呑みにするわけにもいかない)
篠原悠斗は、
軍の言う“危険因子”ではなく、
一人の生徒だ。
守るべき存在。
その時、再びノックが響いた。
「学園長。
御門玲奈さんと天城紗月さんをお連れしました」
学園長は目を閉じ、
静かに頷いた。
(……二人なら、軍に悟られず動ける)
玲奈は冷静で、分析力に優れる。
紗月は軍研究科で、軍の動きに敏感だ。
そして何より――
二人とも、篠原悠斗を大切に思っている。
学園長はゆっくりと立ち上がった。
(……私は動けない。
だが、彼女たちなら――)
扉の向こうで、
二人の足音が近づいてくる。
学園長は静かに息を整えた。
「……入りなさい」
――
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