第二章 第23話 ──捜索──
第二章 第23話 ──捜索──
学園の訓練場には、まだ焦げた匂いが残っていた。
昨夜の侵入事件から一夜。
生徒は全員寮に待機させられ、
教師と警備隊だけが慌ただしく動いている。
その中で、
御門玲奈は一人、訓練場跡地に立っていた。
床には黒く焼け焦げた痕。
空間が“削れた”ような歪み。
そして――
黒い霧の残滓。
玲奈は膝をつき、指先で霧の痕をなぞる。
「……やっぱり、これは……魔法じゃない」
背後から駆け寄る足音。
「玲奈ちゃん!」
天城紗月が息を切らしながら近づいてきた。
「どう……? 何かわかった……?」
玲奈は首を振る。
「わからない。でも……この霧、空間干渉を“喰ってる”。
私の魔法が触れた痕跡が、全部消えてる」
紗月は目を見開いた。
「喰う……? そんな魔法、聞いたことないよ……」
玲奈は霧の残滓を見つめたまま言う。
「日本の魔法体系じゃない。
少なくとも、学園や軍の技術じゃない」
紗月は胸を押さえた。
「じゃあ……ユウトくんは……どこに……」
玲奈は周囲を見渡し、ある一点に視線を止めた。
「紗月。ここ、見て」
霧の痕跡が――途中で途切れている。
紗月は眉をひそめた。
「……ここで、霧が消えてる……?」
「そう。侵入者が悠斗くんを連れて行ったなら、
もっと広範囲に痕が残るはず。
でも……途中で“切れてる”。」
紗月は息を呑む。
「じゃあ……どういうこと……?」
玲奈は静かに答えた。
「……“横取り”された可能性がある」
紗月の顔色が変わる。
「横取り……って……誰が……?」
玲奈は言葉を選びながら言った。
「……軍。
もしくは、学園の上層部」
紗月は震える声を漏らした。
「そんな……軍が……そんなこと……するはず……」
玲奈は紗月の肩に手を置く。
「紗月。落ち着いて。
まだ断定はできない。でも……霧の痕跡は嘘をつかない」
紗月は唇を噛みしめた。
「……お父さん……
どうして何も言ってくれないの……
ユウトくんは……どこにいるの……」
玲奈は静かに答えた。
「……探すしかない。
軍が隠してるなら、なおさら」
その時、
背後から教師が駆け寄ってきた。
「御門、天城。至急、学園長室へ。
軍が来ている」
紗月の表情が強張る。
「……軍……?」
玲奈は霧の痕を最後に一度だけ見つめ、
小さく息を吸った。
(……悠斗くん。
あなたは今、どこにいるの……)
二人は学園長室へ向かった。
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■ 学園長室
重い扉が開くと、
そこには軍服の男たちが立っていた。
その中心に――
天城主任。
紗月の父。
紗月は思わず声を上げた。
「お父さん……!
ユウトくんは!?
どこにいるの!?」
主任は娘を一瞥しただけで、
何も答えなかった。
学園長が口を開く。
「天城主任。
篠原悠斗くんの行方について、
軍は“外部勢力による奪取”と報告していますが……
本当ですか?」
主任は淡々と答えた。
「事実だ。
学園の結界を突破した外部勢力が、
篠原を連れ去った」
玲奈は一歩前に出た。
「嘘です」
室内の空気が凍りつく。
主任が目を細める。
「……根拠は?」
玲奈は迷わず言った。
「霧の痕跡は途中で途切れていました。
侵入者が連れ去ったなら、
もっと広範囲に残るはずです」
主任は表情を変えない。
「それは、あなたの推測だ」
「推測ではありません。
空間干渉の痕跡は、私が一番よく知っています」
紗月も続く。
「お父さん……
本当に……外部勢力なの……?」
主任は娘を見ない。
「……軍は、そう判断している」
玲奈はその言葉の“温度”に気づいた。
(……この人……嘘をついてる……)
主任は学園長に向き直る。
「軍は篠原の捜索を続ける。
学園側は、生徒の安全確保に専念してほしい」
そう言い残し、
主任は部屋を出ていった。
扉が閉まる。
紗月は震える声で呟いた。
「……お父さん……
ユウトくんのこと……隠してる……」
玲奈は拳を握りしめた。
(……軍が悠斗くんを“回収”した……
そう考えるのが自然……)
学園長が静かに言う。
「御門、天城。
あなたたちは……どうしたい?」
玲奈は迷わず答えた。
「篠原悠斗を、取り戻します」
紗月も頷く。
「私も……絶対に……!」
学園長は目を閉じ、
ゆっくりと頷いた。
「……ならば、動きなさい。
ただし、軍に悟られないように」
玲奈と紗月は視線を交わす。
(……悠斗くん、待ってて……
必ず見つける……)
こうして、
二人の“捜索”が始まった。
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