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空間欠損の魔法師  作者: 猫宮みけ
第二章 深層拒絶編

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第二章 第20話 ──目覚め──

第二章 第20話 ──目覚め──


暗い。


それが最初の感覚だった。


目を開けたのか閉じているのかすら分からない。

ただ、耳の奥で自分の鼓動だけがやけに大きく響いていた。


どれほど時間が経ったのか分からない。

身体は重く、魔力の流れは鈍い。長時間眠らされていた感覚だけが残っている。

鼻を刺すような薬品の匂いが漂っていた。学園の医務棟とは違う、無機質な空気。


(……ここは……?)


身体を動かそうとした瞬間、

手首に冷たい金属の感触が走る。


拘束具。


それも、学園の訓練で使うような簡易的なものではない。

魔力の流れを“固定”する、軍用の本物だ。


(……なんで……俺が……)


記憶が断片的に蘇る。


黒い霧。

玲奈の叫び。

紗月の泣き声。

オルタの必死の呼びかけ。


そして――

沈むように意識が途切れた。


「目が覚めたか、篠原悠斗」


低く、抑揚のない声が響いた。


暗闇の奥で、蛍光灯が一つだけ点灯した。

白い光に照らされ、影がゆっくりと浮かび上がる。


白衣。

軍の識別章。

そして、見覚えのある顔。


「……天城……主任……?」


紗月の父。

軍施設で何度か見た、あの冷徹な目。


天城主任は淡々と告げる。


「ここは軍の第七観測区画だ。

 君の深層が“臨界値”に近づいたため、

 緊急措置として回収した」


「……臨界値……?」


「学園では隠されていたが、

 君の深層は安定していない。

 あのまま放置すれば、

 空間欠損が拡大し、都市規模の被害が出る可能性があった」


淡々とした声。

だが、その言葉の重さは冗談ではない。


(……俺が……そんな……)


天城主任は続ける。


「安心しろ。

 君を処分するつもりはない。

 ただし――」


主任の目が、冷たく光った。

主任の声には、感情というものが一切なかった。


「君の深層は“国家資源”だ。

 学園のような甘い環境に置いておくべきではなかった」


その言葉に、胸がざわつく。


「……玲奈は……紗月は……オルタは……」


主任は淡々と答える。


「学園には“事故”として処理した。

 君の奪取は、外部勢力の仕業ということになっている」


「……っ」


(俺のせいで……みんな……)


主任は机の上の端末を操作し、

悠斗の胸元のペンダント――オルタを指差した。


「それと、これだが」


オルタは沈黙している。

光も、声もない。


AI相棒オルタは、君の深層と魔力を解析するために

 一時的に“停止”させてもらった」


「……やめろ……!」


初めて声が荒れた。


主任は眉一つ動かさない。


「安心しろ。

 破壊はしない。

 ただ、君の深層と連動している以上、

 制御下に置く必要がある」


悠斗は歯を食いしばる。


(……オルタまで……)


主任は静かに言った。


「これから数日間、

 君には“深層観測”を受けてもらう。

 拒否権はない」


その瞬間――

部屋の空気がわずかに揺れた。


天城主任が目を細める。


「……やはり、深層は反応するか。

 君の感情に」


悠斗は気づく。


自分の魔力が、

ほんの一瞬だけ外へ“漏れた”ことに。


(……俺のせいで……

 また誰かが傷つく……)


主任は背を向け、扉へ向かう。


「休め。

 明日から本格的に始める」


扉が閉まる。


静寂。


暗闇。


そして――


胸元のペンダントが、

ほんのわずかに震えた。


『……ゆうと……』


微かな、かすれた声。


オルタだ。


「オルタ……!」


『……大丈夫……まだ……つながってる……』

その言葉が、何を指しているのかは分からない。


その声は弱々しく、

今にも消えそうだった。


『……絶対……助けるから……』


悠斗は目を閉じ、

震える声で答えた。


「……俺も……絶対に……戻る」


暗闇の中、

二人の小さな声だけが、

静かに響いていた。


---

第二章始まりです♪

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