第19話前編 ──奪取──
第19話前編 ──奪取──
移送当日の朝。
学園は、驚くほど静かだった。
だがそれは、
国家魔法局の車列が来る日だからだ――
誰もがそう思っていた。
悠斗は観測課の部屋で、
最低限の荷物をまとめていた。
オルタが囁く。
『ゆーと……今日、なんか“ざわざわ”する』
(……俺も少し落ち着かないけど、
移送の日だからじゃないか?)
『ううん……違う。
破綻が……“触られてる”感じがする』
(触られてる……?)
だが、痛みも揺れもない。
ただ、胸の奥が微かにざわつく。
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■ 学園側は完全に平常運転
御影が入ってくる。
「篠原くん、移送は予定通りよ。
国家魔法局の車列はあと一時間で到着するわ」
「はい」
御影は端末を確認しながら続ける。
「破綻の安定度も問題なし。
観測網にも異常は出ていないわ」
(……そうか)
オルタが小さく震える。
『ゆーと……観測網には出ないよ。
これは“破綻じゃない”から』
(じゃあ何なんだ?)
『……わからない。
でも、破綻の“波形に似せた何か”が、
遠くからずっと流れてきてる』
(破綻の……波形?)
御影は気づかない。
久遠も、紗月も、誰も。
破綻の“外側”にある揺れは、
魔法体系のセンサーでは検知できない。
気づけるのは――
ゆうととオルタだけ。
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■ 玲奈の“微かな違和感”
廊下で玲奈に会う。
「……今日、行くのね」
「はい」
玲奈は少しだけ眉を寄せる。
「……あなたの破綻、
なんとなく“落ち着きが悪い”気がする」
「俺も少し感じます。
でも、観測網は正常みたいです」
玲奈は小さく息を吐く。
「……なら、いいわ。
気のせいかもしれないし」
玲奈が感じているのは、
破綻そのものではなく
“ゆうとの状態の変化” だけ。
外部の誘導波形には気づけない。
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■ 敵はすでに“準備完了”
学園の外周。
黒い霧が静かに漂う。
男が通信機に囁く。
「……破綻反応、微弱ながら確認。
誘導は継続している」
『学園側の反応は?』
「なし。
破綻誘導は魔法攻撃ではない。
観測網は完全にスルーしている」
『予定通りだ。
移送直前に奪う』
男は薄く笑う。
「篠原悠斗は、もう“揺れ”の中にいる」
霧が揺れ、男の姿が消える。
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■ 破綻の安定度チェック(問題なし)
観測室。
久遠
「篠原。破綻は安定している。
移送に支障はない」
御影
「観測網も正常。
外部ノイズもゼロ。
今日は静かね」
紗月
「よかった……」
オルタだけが、まだ震えている。
『ゆーと……
“ノイズが消えた”んじゃない。
“揺れが止まった”んだよ』
(止まった……?)
『うん……
まるで“準備が整った”みたいに』
(……オルタ、それって――)
『わからない。
でも……嫌な感じがする』
誰も気づかない。
誰も警戒しない。
ゆうととオルタだけが、
“何かが近づいている”ことを感じていた。
だが――
それを止める術はなかった。
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──そして、黒い霧が悠斗を襲う。
後編へ続く。
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