第17話 ──空間干渉実験暴走──
『空間欠損の魔法師』
第17話 ──空間干渉実験暴走──
観測課の廊下に、
鋭い警報音が響き渡った。
キィィィィィン――!
御影が端末を見て顔色を変える。
「……空間干渉系の実験が暴走!?
第三区画の演習場で……!」
紗月が続く。
「複数名での共同実験……
出力が噛み合わず、干渉が“逆流”してる……!」
久遠は短く言う。
「急ぐぞ」
悠斗も走り出した。
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■ 演習場──空間干渉の“逆流”
演習場に着いた瞬間、
空気が“揺れて”いるのが分かった。
だがそれは、
ゆうとの破綻のような“空間そのものの崩壊”ではない。
空間干渉魔法の出力が噛み合わず、
干渉波が逆流して“存在条件を揺らしている”状態。
教師たちが必死に押さえ込んでいた。
「干渉波が収束しない……!」
「出力が互いに食い合ってる……!」
「このままだと“破綻”に近い揺れに……!」
中心には三人の上級生。
空間干渉系の共同実験を行っていたらしい。
御影が歯を食いしばる。
「……空間干渉系は、
魔力の“位相”が少しでもズレると危険なのよ……
これは……まずい……」
紗月が震える声で言う。
「教師の魔法じゃ……
干渉波に触れられない……」
久遠は静かに言う。
「これは“魔法事故”ではない。
干渉波が存在条件を揺らし始めている。
……篠原の破綻と“近い揺れ”だ」
悠斗は息を呑む。
(……俺の破綻と……似てる……?)
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■ ゆうとにしか触れられない理由
御影が説明する。
「干渉波の揺れは、
魔法の外膜では触れられない。
触れた瞬間に魔法が“崩れる”から」
紗月が続ける。
「でも……ゆーとくんの破綻は、
“存在条件そのもの”に触れる現象……
だから……」
久遠が言い切る。
「篠原なら、干渉波の揺れに“触れられる”。
そして――
揺れを“整えられる”可能性がある」
悠斗の胸が熱くなる。
(……俺にしか……できない……?)
オルタが静かに囁く。
『ゆーと。
怖いなら、怖いままでいい。
でも……あなたの破綻は、
この揺れを“落ち着かせる”ことができる』
悠斗は拳を握った。
「……行く」
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■ 接触──干渉波の渦へ
悠斗はゆっくりと揺れの中心へ歩く。
空間が波打ち、
足元が不安定になる。
教師が叫ぶ。
「危険だ!
近づくな!!」
久遠が制止する。
「止めるな。
篠原にしかできん」
悠斗は手を伸ばした。
(……整え……
落ち着け……)
オルタが支える。
『揺れの周期、読めてる。
ゆーと、触れて』
指先が干渉波に触れた瞬間――
世界が震えた。
干渉波の揺れが、
悠斗の破綻に“引き込まれる”ように収束していく。
教師たちが息を呑む。
「……何だ……これは……」
「干渉波が……沈んでいく……?」
「魔法じゃない……こんなの……」
紗月が叫ぶ。
「ゆーとくんの破綻が……
干渉波の“揺れ方”を上書きしてる……!」
御影が震える声で言う。
「……理論上、不可能だった処理を……
ゆうとくんが……」
久遠は静かに言う。
「篠原の力は“破壊”ではない。
“存在の揺れを整える”現象だ」
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■ 制圧──揺れの収束
悠斗はさらに意図を強める。
(……静かに……
整え……)
オルタが囁く。
『揺れが弱まってる。
あと少し……』
干渉波が縮み、
やがて一点に収束し――
ふっと消えた。
演習場に静寂が戻る。
上級生たちは気を失っていたが、
命に別状はない。
教師たちは呆然と立ち尽くした。
「……助かった……」
「何が……起きた……?」
「彼は……何者だ……?」
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■ 戦略級の影
久遠が端末を見ながら言う。
「篠原。
今の“揺れの上書き”は……
既存の魔法体系では説明不能だ」
御影が続ける。
「空間干渉系の暴走を、
“存在条件の整合性”で押さえ込むなんて……
国家級でも不可能よ」
紗月が震える声で言う。
「ゆーとくん……
本当に……特別なんだよ……」
悠斗は戸惑いながら言う。
「……俺は……そんな……」
オルタが静かに言う。
『ゆーと。
あなたは、誰かの“世界”を守ったんだよ』
悠斗は小さく息を吐いた。
(……俺の力で……
誰かを救えた……)
久遠が歩き出す。
「篠原。
戻るぞ。
……正式な評価が必要だ」
悠斗は息を呑む。
(……評価……
俺の力が……どう見られるのか……)
オルタが囁く。
『大丈夫。
ゆーとの“破綻”は、
もう暴走しない』
悠斗は小さく頷いた。
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