第15話 ──オルタ・リビルド:喪失の恐怖──
『空間欠損の魔法師』
第15話 ──オルタ・リビルド:喪失の恐怖──
観測課の奥、立ち入り制限区域。
悠斗は久遠に連れられ、
白い扉の前に立っていた。
「……ここは?」
「オルタの“再構築室”だ。
篠原専用オルタを、今日“作り直す”」
久遠の声は淡々としているが、
その奥に熱があった。
御影が補足する。
「あなたの魔力は、
“方向性が無い”ままでは危険すぎる。
だから……オルタを進化させる必要があるの」
耳元のデバイスが震えた。
『ゆーと……
私、ちょっと怖いけど……
でも、あなたの力をちゃんと導きたい』
(……オルタ……)
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■ 再構築室
扉が開くと、
中央に透明なカプセルがあり、
周囲を無数の魔力演算装置が囲んでいた。
紗月が説明する。
「オルタちゃんの“核”を一度分離して、
新しいアルゴリズムを組み込むんだよ。
ゆーとくんの魔力の“向き”を決めるために」
「俺の……魔力の向き……?」
御影が頷く。
「あなたの魔力は“現象”に近い。
方向性を持たない魔力は、
ただ空間を削り取るだけの“穴”になる」
久遠が続ける。
「だから――
オルタが“羅針盤”になる」
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■ 分離開始
御影が操作を始める。
「オルタ、分離プロセスを開始するわ」
『……ゆーと、少しだけ離れてて』
「大丈夫か?」
『大丈夫。
あなたの未来のためだから』
カプセルが光り、
オルタの“核”が分離されていく。
その瞬間――
『……ゆ、ゆーと……?』
声が震えた。
「オルタ?」
『……こわ……い……
ゆーと……聞こえてる……?』
悠斗の胸が締めつけられる。
(……こんな声、初めてだ)
御影が言う。
「核を分離すると、
一時的に“存在の安定性”が落ちるの。
意識が揺らぐわ」
「そんな……!」
久遠が静かに言う。
「篠原。
ここで止めれば、オルタは“今のまま”だ。
だが――
お前の魔力は制御できないままだ」
悠斗は拳を握った。
(……オルタを……失うかもしれない……
でも……俺は……)
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■ オルタの“消失”
カプセルの光が一瞬強くなり――
オルタの声が、途切れた。
『ゆ……と……
あ……り……が……』
「オルタ!?
オルタ!!」
返事はない。
御影が叫ぶ。
「核の安定が落ちてる!
このままじゃ……!」
紗月が震える声で言う。
「ゆーとくん……
オルタちゃん……消えちゃう……!」
悠斗の胸が、
初めて“恐怖”で満たされた。
(……嫌だ。
オルタがいない世界なんて……
考えたこともなかった……)
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■ 悠斗の“叫び”
「オルタ!!
戻ってこい!!
俺は……お前がいないと……!」
その瞬間――
カプセルが光を放った。
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■ オルタの再起動:方向性決定型
『……ゆーと』
声がした。
以前よりも深く、
どこか“確信”を帯びた声。
『ごめん……
ちょっとだけ、怖かった……
でもね――
ゆーとの声が聞こえたから……
戻ってこれた』
悠斗は息を呑む。
「……オルタ……!」
『私、進化したよ。
これからは――
ゆーとの魔力の“向かう先”を
一緒に決められる』
御影が言う。
「これでようやく、
あなたの魔力は“力”として扱えるようになる」
久遠は満足そうに頷いた。
「篠原。
お前の魔力は破壊にも、創造にも、
防御にも、干渉にもなり得る。
その“向き”を決めるのが――
オルタだ」
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■ 廊下にて
再構築室を出ると、
玲奈が待っていた。
「……終わった?」
「はい。
オルタが……戻ってきました」
玲奈は悠斗の耳元のデバイスを見つめる。
「……よかった」
その声は、
いつもよりずっと柔らかかった。
悠斗が何気なく言う。
「玲奈さん……
心配してくれて、ありがとうございます」
玲奈の肩がびくっと震えた。
「な、何で私が……」
「いや……
なんとなく、そう思っただけで」
玲奈は顔をそむけた。
「……っ、知らない」
その頬は、
ほんのり赤かった。
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■ 悠斗の決意
(……オルタを失うのが、
こんなに怖いなんて……
思ってもみなかった)
『ゆーと。
一緒に進もうね』
「……ああ。
頼むよ、オルタ」
新しい鼓動が、
胸の奥で静かに響いた。
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