第13話 ──調査──
『空間欠損の魔法師』
第13話 ──調査──
翌朝。
学園の空気は、いつもより重かった。
廊下を歩く生徒たちの視線が、
ほんの少しだけ悠斗に向けられる。
好奇心でも恐怖でもない。
ただ、
「何かが起きた」
という空気だけが漂っていた。
悠斗は気にしないように歩いた。
だが胸の奥は落ち着かない。
(……今日、観測課の面談がある)
昨日の空間欠損の件は、
学園の上層部にすぐ伝わったらしい。
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■ 呼び出し
「篠原悠斗くん。
第三会議室まで来てください」
放送が流れた瞬間、
周囲の空気がわずかに揺れた。
玲奈が近づいてくる。
「……行くのね」
「はい」
紗月は不安そうに端末を抱えている。
「ユウトくん……
観測課って、怖いところじゃないからね。
ただ……本気で調べる人たちだから……」
悠斗は微笑んだ。
「ありがとう。
行ってきます」
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■ 観測課の会議室
第三会議室の扉を開けると、
白いコートを着た大人が三人いた。
中央の女性が立ち上がる。
「魔法観測課・主任の御影です。
よろしくお願いします、篠原くん」
柔らかい声。
だが、その目は鋭い。
その隣に立つ男は、
名乗る前から空気が違った。
御影が紹介する。
「こちらは観測課の久遠博士。
魔力構造の解析では、学園で最も権威のある方よ」
久遠は軽く頷くだけだった。
だが、その視線は悠斗を一瞬で“見透かす”ようだった。
「……座れ」
低く、淡々とした声。
威圧ではない。
ただ、格がある。
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■ 面談開始
御影が静かに切り出す。
「昨日の現象について、
あなたの感じたことを教えてください」
悠斗は少し考えてから話し始めた。
「……魔力が、勝手に外に流れる感覚がありました。
訓練の頃からずっと……
自分の魔力が“形にならない”感じがあって」
御影は頷く。
「昨日の“空間欠損”の瞬間は?」
「……何もしていません。
ただ、魔法が近づいたら……
空間が、落ちたように見えました」
御影が次の質問をしようとした瞬間――
久遠が口を開いた。
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■ 久遠の“解析”
「……外側が欠けているな」
御影が驚く。
「久遠さん、もうわかるんですか?」
久遠は悠斗の魔力データを一瞥し、
淡々と告げた。
「見ればわかる。
こいつの魔力は“閉じていない”。
普通の魔法師が持つ外膜が……最初から存在しない」
悠斗は息を呑む。
久遠は続ける。
「篠原。
お前の魔力は“漏れている”んじゃない。
世界の方が、お前の魔力に引かれている」
御影も紗月も言葉を失った。
久遠は淡々と告げる。
「空間欠損は……必然だ。
昨日の現象は、むしろ軽い方だ」
悠斗の背筋が冷える。
(……軽い……?)
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■ 悠斗の“意思”
御影が優しく口を開く。
「篠原くん。
あなたは昨日、逃げなかったわね。
どうして?」
悠斗は迷わず答えた。
「玲奈さんが傷ついていて……
紗月も必死で……
俺だけ後ろに下がるのは、違うと思いました」
御影は静かに頷く。
久遠は短く言った。
「……意思があるなら、制御は可能だ」
悠斗は顔を上げる。
「制御……できるんですか?」
「できるかどうかではない。
やるしかない」
久遠の言葉は冷たいが、
不思議と怖くはなかった。
むしろ、
“逃げ道を塞がれた”のではなく、
“道を示された”ように感じた。
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■ 観測課の決定
御影が資料を閉じる。
「篠原くん。
あなたには“観測課の特別監視”がつく。
ただし――」
彼女は柔らかく微笑んだ。
「それは拘束ではなく、
あなたの力を理解するための“協力”よ」
久遠が続ける。
「明日から、俺が見る。
逃げるなよ」
悠斗はゆっくり頷いた。
「……逃げません。
俺も……知りたいです。
自分の力のことを」
久遠は満足そうに目を細めた。
「ならいい」
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■ 会議室を出て
廊下に出ると、
玲奈と紗月が待っていた。
紗月が駆け寄る。
「ユウトくん!
どうだった?」
悠斗は少し照れながら答える。
「……大丈夫でした。
観測課が協力してくれるそうです」
玲奈は静かに頷いた。
「……よかった」
その声は、昨日よりも柔らかかった。
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■ 悠斗の決意
(……俺は、変わってる。
でも、それを怖がるだけじゃなくて……
向き合わないといけない)
『ゆーと。
一緒に頑張ろうね』
「……ああ。
頼むよ、オルタ」
胸の奥で、
また静かに脈打つものがあった。
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