第12話 ──揺らぎ──
『空間欠損の魔法師』
第12話 ──揺らぎ──
医務室には、消毒液の匂いが漂っていた。
玲奈の肩の傷は浅い。
だが、彼女の表情は硬いままだった。
紗月は端末を握りしめ、何度もデータを確認している。
教師は部屋の外で誰かと通話していた。
声は低く、緊張が滲んでいる。
「……“空間欠損”の痕跡は確かにあった。
生徒の安全を最優先に……
はい、専門部署を……」
その言葉が、悠斗の胸に重く落ちた。
(……まただ。
訓練のときから、ずっと……)
拳を握る。
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■ 玲奈の問い
沈黙を破ったのは玲奈だった。
「篠原くん。
……前から、何か感じてたの?」
責める響きはない。
ただ、事実を確かめるだけの声。
悠斗は少しだけ目を伏せた。
「……はい。
訓練のときから……
魔力が“外に流れていく”感じがあって。
形にならないというか……
どこかで勝手に抜けていくような……」
玲奈は驚いたように目を細めた。
「……そうだったのね」
それだけ。
責める言葉は一つもない。
紗月が端末を見ながら言う。
「ユウトくんの魔力……
“外側”が最初から不安定だったんだと思う」
「外側……?」
「普通は、魔力の周りに“膜”があるの。
でもユウトくんは……
その膜が薄いか、ところどころ抜けてる」
玲奈が息を呑む。
「……だから、魔法が近づくと……
空間ごと落ちる……?」
紗月は頷いた。
「今日のは……その“薄さ”が限界を超えたんだと思う」
悠斗は胸の奥がざわつく。
(……やっぱり、俺は普通じゃなかったんだ)
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■ 悠斗の“静かな成長”
玲奈が、ふと視線を向ける。
「……怖くなかったの?」
悠斗は少し考えてから答えた。
「……怖かったです。
でも……」
言葉を選ぶ。
「玲奈さんが傷ついてるのを見て……
紗月も必死で……
そのまま立ち止まるのは……違うと思いました」
玲奈の目がわずかに揺れた。
「……そう」
その声は、どこか柔らかかった。
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■ オルタの言葉
そのとき、オルタが静かに言った。
『ゆーと。
あなたはずっと気づいてたよね。
自分の魔力が“普通じゃない”って』
(……うん。
でも、どうしていいかわからなかった)
『わからなくていいよ。
今日、あなたは逃げなかった。
それが大事』
悠斗は胸の奥が熱くなるのを感じた。
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■ 教師の判断
扉が開き、教師が戻ってきた。
「篠原。
後日、専門部署による聞き取りが行われる。
だが――」
教師は少しだけ表情を緩めた。
「今日の判断は……正しかった。
よく仲間を守った」
悠斗は驚いて顔を上げた。
「……俺は……」
「前に出たのは、お前の意思だ。
それは評価されるべきだ」
教師は続ける。
「だが同時に……
お前の力は危険でもある。
学園としても、放置はできん」
悠斗はゆっくりと頷いた。
(……逃げない。
俺は、この力と向き合う)
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■ 夜、ひとりになって
寮の部屋で、悠斗は窓の外を見ていた。
(……訓練の頃から、ずっと違和感があった。
でも、見ないふりをしてきた)
今日、それが形になって現れた。
(……もう逃げられない)
『ゆーと』
オルタが静かに呼ぶ。
『一緒に、探していこう。
あなたの力のことも……
あなた自身のことも』
悠斗は小さく笑った。
「……ああ。
頼むよ、オルタ」
胸の奥で、
何かがまた静かに脈打った。
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