第11話 ──欠損──
『空間欠損の魔法師』
第11話 ──欠損──
十数発の魔力弾が霧のように消えた直後。
訓練場には、数秒だけ静寂が落ちた。
紗月が震える声で言う。
「……今の……霧みたいに……消えた……?」
玲奈も肩を押さえながら、悠斗を見つめる。
「篠原くん……何をしたの……?」
悠斗は答えられなかった。
(……俺、何もしてない……
ただ前に出ただけで……)
青年たちは動揺しながらも、再び魔法陣を構える。
「くそ……もう一発……!」
十数発の魔力弾が再び飛ぶ。
その瞬間――
『ゆーと、止めるよ!
魔力の外側を閉じて――』
オルタの声が焦りを帯びる。
だが――
間に合わなかった。
---
■ 空間が“欠ける”
魔力弾が悠斗の前に迫った瞬間。
空気が、欠けた。
光が触れた場所が、
まるで“切り取られたように”消える。
魔力弾だけではない。
その背後の空間が、
一瞬だけ“凹んだ”。
玲奈が息を呑む。
「……今の……空間が……歪んだ……?」
紗月は端末を落としそうになる。
「魔力反応……途中で消えてる……
いや……“座標”が……欠けてる……?」
青年たちは恐怖に顔を歪める。
「なんだよ……今の……!」
「魔法が……吸われた……?」
「やべぇ……こいつ……!」
悠斗はただ立ち尽くす。
(……俺が……やったのか……?
こんな……危ないことを……)
胸の奥がざわつく。
怖い。
自分が何をしたのかもわからない。
だが――
玲奈が肩を押さえて苦しそうに立っている。
紗月も震えながら必死に状況を見ている。
(……俺が……守らないと……)
その瞬間、
悠斗の中で“恐怖”よりも“決意”が勝った。
小さく息を吸い、拳を握る。
(怖いけど……逃げない。
俺は……ここに立つ)
---
■ オルタの“制御失敗”
『……っ、ゆーと……ごめん……
今の……止められなかった……』
オルタの声は震えていた。
『あなたの魔力……外側が勝手に開いて……
空間が……“落ちた”……』
「……俺の……魔力が?」
『うん……
でも……大丈夫。
あなたが“立つ”って決めたなら……
私はそれを支える』
悠斗は小さく頷いた。
(……怖いけど……
それでも、前に出る)
---
■ 敵の崩れ
青年たちは恐怖に耐えきれず、
一斉に出口へ走り出した。
教師が反射的に追おうとする。
「待て――!」
だが、数歩踏み出したところで足を止めた。
訓練場の床に、
空間が欠けた痕跡が残っていたからだ。
教師は息を呑む。
「……この状態で追撃は……危険すぎる」
玲奈は肩を押さえて立っている。
紗月も動揺している。
そして、悠斗の周囲にはまだ“何か”が揺らいでいた。
教師は拳を握りしめ、悔しげに言う。
「……追うな。
今は生徒の安全が最優先だ」
---
紗月が震える声で言う。
「ユウトくん……
今の……“空間欠損”だよ……
魔法が消えたんじゃなくて……
空間ごと……無くなってた……」
悠斗は息を呑む。
だが、先ほどとは違う。
(……怖い。
でも……逃げない。
俺は……この力と向き合う)
胸の奥で、
何かが静かに脈打っていた。
---
1日1善1日1投稿♪




