第1話 ──空白の中心──
『空間欠損の魔法師』
第1話 ──空白の中心──
魔法災害は、いつも突然だった。
だが、その日の“異常”は、誰も予想していなかった。
千葉第七都市。
魔法式インフラの実験都市として知られる場所。
その中心部で、魔法式の大規模暴走が発生した。
政府は災害レベル5を宣言し、
救護班と消防魔法隊が緊急出動する。
篠原悠斗は、その救護班の一人だった。
魔法が使えない。
デバイスもまともに動かない。
訓練校でも落ちこぼれ。
それでも、
「誰かを助けたい」という理由だけで現場に来た。
その選択が、
都市を一つ消し飛ばすことになるとは知らずに。
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■ 災害現場
「負傷者多数! 魔法式の残滓に触れるな!」
「空間が歪んでる、近づくな!」
ビルの壁は波打ち、
道路はねじれ、
空間そのものが“軋んで”いる。
悠斗は息を呑んだ。
(……まただ)
視界の端が、
薄い膜越しに見えるように震えている。
最近ずっと続いていた違和感。
だが今日のそれは、明らかに“異常”だった。
「篠原! こっちだ、負傷者が──」
「わかった!」
悠斗は倒れた少年を抱き起こし、
安全な場所へ運ぼうとした。
その瞬間だった。
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■ 世界が“音”を失った
風の音が消えた。
叫び声が消えた。
魔法式の爆ぜる音も消えた。
世界から、音が抜け落ちた。
悠斗は思わず立ち止まる。
(……なんだ?)
胸の奥が、
何かに掴まれたように締め付けられる。
次の瞬間。
悠斗の身体の中心から、“何か”が溢れ出した。
光でも、魔力でもない。
色も形もない。
ただ、“世界を拒絶する何か”。
それが、
外へ向かって一気に広がった。
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■ 都市が“抉れた”
轟音も、爆発もなかった。
ただ、
世界が削り取られた。
悠斗を中心に、
半径二キロの都市が、丸ごと“抉り取られた”。
ビルが。
道路が。
車が。
魔法暴走の光が。
空間の歪みが。
人々の悲鳴が。
すべて、“欠けた”。
地面すら存在しない。
ただ、何もない“空白”が広がっている。
悠斗は、その“縁”に立っていた。
(……何が……起きた……?)
理解できない。
理解できるはずがない。
自分が原因だとは思わない。
ただ、
自分の周囲だけ空気が揺れていた
という“違和感”が頭から離れない。
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■ 周囲の反応
救護班の仲間は、空白を見て震えていた。
「……何だよ、これ……」
「魔法暴走の連鎖……? いや、規模が……」
「空間が……消えてる……?」
「こんなの、見たことない……」
誰も篠原を疑わない。
誰も篠原を見ていない。
ただ、
“原因不明の災害”として恐怖しているだけ。
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■ 軍の到着
異常な速度で軍車両が到着する。
隊員たちは空白を見て、
そして悠斗を見て、
一瞬だけ表情を変えた。
恐怖でも驚きでもない。
“想定していた”目。
隊長らしき男が呟く。
「……発現したか」
悠斗には聞こえない。
ただ、次に気づいた時には──
両手を拘束され、
暗い車内に座っていた。
「大丈夫。怖がらなくていい」
隣に座る女性が、優しく声をかける。
軍服の胸元には“桐島由紀”の名札。
「あなたは……保護する必要があるの」
「俺……何をしたんですか……?」
桐島は答えなかった。
ただ、静かに言う。
「それは、これから調べるわ」
車両は静かに動き出す。
悠斗の知らない場所へ。
彼の知らない未来へ。
──この日、世界は知ることになる。
“空間欠損”という異端の魔法師が、
都市を一つ抉り取って目を覚ましたことに。
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初投稿作品です。




