ディナータイム
ドレスアップをして高級車四駆に乗り一流ホテルのレストランに運ばれる私の気分はさながらかぼちゃの馬車に乗ったシンデレラだった。最上階のレストランから見える夜景を堪能しながら一流シェフが腕をふるった料理を堪能する。上流階級の世界は私の知る日常とは別世界だ。けして渡れない橋の向こう側だ。リカちゃんに作法を教わりながら、なんとか食事を終えて屋上テラスに向かった。
リカちゃんは眼前に広がる夜景に手を伸ばす。
「ここから見える景色、すべてがわたしのものだ!」
「王様ごっこかな?」
「ママがいってたんだよ」
「ユニークな人ですね」
どういうつもりで言ったのか。一度、言ってみたかっただけだろうな。メグムが声をかけてくる。
「どう?楽しめた?」
「はい。とても」
「なにか思い出した?」
「いえ、なにも」
「あせらなくていいよ。いまのきみも素敵だ」
「いや、それはぜったいないですよ!」
「きみがバタバタしてるところやあせってるところなんて見たことなかったからさ。いつも年上のお姉さんでしっかりしてる」
「パパはママに甘えてばっかり」
「リカもだろ」
メグムは年下だったのか。健康的で若く見えるし童顔なので年齢がわかりにくい。
「なんだか夢みたいです。ずっと覚めなかったらいいのに」
「夢の世界に思えるほど、つらい世界にいたの?」
「最下層の負け組です。リサさんとは真逆ですよ」
「ずっとここにいていいよ。ママのめんどうはリカがみてあげる」
「ふふ。ありがとうございます。でも、覚めない夢はないっていいますから、ずっとはいられないですよ。今この瞬間をしっかり記憶します」
この夢は暗闇に差し込んだ一筋の光だ。この思い出があるだけで私は生きていける。
「ぼくもきみとの思い出は忘れないよ。リサちゃん」
メグムに微笑まれた私はあやうくキュン死しそうになる。いまリサさんとはちがう別の1人の女性として扱ってくれたよね?えもい。
天にも昇る気持ちどころか昇天して抜け殻になったまま帰宅する。リカちゃんとお風呂で遊んであげたあと着心地のいいパジャマできれいな高級ベッドに横になった。リサさんはベッドもきれいにしていた。万年床の私とは全然違う。睡魔が襲ってくる。私は軽く目を閉じた。




