ギャルママ
広い芝生の公園でポツンと私は立ち尽くしていた。いちおうリカちゃんからは目を離さないように見張ってる。結婚もしてないのに公園デビューすることになろうとはおもわなかった。リカちゃんは滑り台で元気に遊んでる。メグムはジャングルジムで他人の子供たちと遊んであげている。サッカーボールも持って来ていたからあとでサッカーもするっぽい。微笑ましい光景を眺めてぽやーっとしていると声をかけられた。
「こんにちはリサセンパイ!」
振り返るとギャルがいた。金髪ピアス小麦色の肌に超短いデニム・ジーンズをはいている。スタイルがめっちゃいい。なれなれしいからママ友なんだろう。
「こんにちはー」
「今日、なんか雰囲気違いますね。ファッションもなんか地味だし」
「これが私の通常運転です」
「あは。敬語だし。どうしちゃったんですか?」
「私はリサさんと間違われてるだけの違うリサなんです」
「なにそれ超受けるんですけど」
笑ってるギャルにリカちゃんが突撃する。
「こんにちはユアちゃん」
「リカじゃん。チース」
「ママはきおくそーしつなの。いじめちゃだめだよ」
「え?マジっすか!」
「別人説もあります」
「別人なわけないじゃないですか。クローンじゃあるまいし」
「ユアちゃんママがどんな人だったか教えてあげて。リカはツトムくんと遊んでくるね」
「おす。我が愚息をよろしく頼むぜ」
ユアはリカちゃんにビシッと敬礼すると私に向き直った。
「リサさんはなんつーか女の中の女ですね。かわいい、きれい、やさしい、おしゃれ、正義感が強い、お金いっぱい持ってる。女性の地位を高めてくれたやばい人です。ファンは日本だけで5000万人はいます。本もバカ売れしてて海外でも好調みたいですよ。男からも女からもめちゃくちゃモテますね。あたいもリサさんの弟子になってから人生変わりました。女性の鏡です。全女性から尊敬されてます。歴史の教科書に載るレベルの偉人です」
私はどん引きする。
「そんな人類いるの?大げさすぎませんか?盛ってますよね?」
「いや、これでも控えめに言ってますけどね」
「そんな人気者ならサイン求められたり、握手求められたりしそうですけどね。ここに歩いて来るまでそんなことありませんでしたよ」
「気づかれなかっただけじゃないですかね。いつもと雰囲気違うし。いつも気さくにサインと握手に応じていますよ」
「まるでハリウッドスターですね」
ユアと話していて気づかなかったが、いつのまにか背後にたくさんの女性たちがいた。彼女たちは詰め寄って来る。
「あの握手してもらえますか?サインも欲しいです」
「子育ての相談に乗ってほしいです」
「ダンナとの関係についてアドバイスをください」
「彼との恋愛について相談したいです」
中高年から10代の女の子まで熱いまなざしで私を見つめてくる。
「いやいや私なんて大した人間じゃないんで人様の相談にお答えできるような立場じゃありません!」
どっと笑いが起こる。
「謙虚だわ。すてき」
「またまたご冗談を。リサ先生」
「あなたほどすばらしい人間を他に知りません」
この人たちはリサの熱狂的な信者のようだ。困っているとユアが助け舟を出してくれた。
「今日のリサママは体調不良なんだ。それでも子供の健康のために公園に来てる。立ってるだけでも辛いんだから相談事はまた今度にしな」
「そうだったんですね。わかりました」
「リサ先生。ご自愛くださいね」
信者たちは退散していく。握手とサインはしてあげた。サインなんて生まれてはじめて書いた。握手を求められたのも生まれてはじめてだ。貴重な体験だ。
「ありがとう。ユアさん」
「どういたしましてです」
ユアはニカっと笑う。こんなかっこいいヤンキー女子を従えるほどのカリスマ性を持つリサにますます興味が湧いて来た。帰ったら日記や著作、講演会やテレビ出演の映像などを見まくろう。公園での運動は1時間ほどで終わり、メグムとリカちゃんと3人で手をつないで帰った。なんだか幸せすぎて涙がこぼれた。ハンカチを持ってなかったのでリカちゃんの持っているハンカチで拭いてもらった。ママが持ってないのはめずらしいねだって。




