もう1人の私
子供に案内された自分の部屋は整理整頓されていてキラキラピカピカしていた。緑と木材のインテリアで統一されていて森にいるような感じだ。自然を感じて落ち着く。
成功したお金持ちはこういう部屋に住むんだろうな。
子供がアルバムを持って来てくれる。
「はい。これ」
「ありがとうございます」
リカと表紙に書かれているアルバムだ。私はめくってみる。
「リカちゃんがいっぱいですね〜かわいいです」
この子の名前がリカだとはじめて知った。私の記憶を刺激するんだから私のアルバムじゃないと意味がないんだが、たぶん見て欲しいのだろう。承認欲求が強い子だ。公園で遊んでいる様子や水族館、遊園地、幼稚園のお遊戯会の様子が写真におさめられている。どれも元気いっぱいの笑顔でまぶしい。光の世界だ。
「これママが撮ってくれたんだよ。すっごくかわいく撮れてるでしょ。ママはゆうのうなカメラマンなんだよ」
「被写体がいいからですよ」
リカちゃんの写真集をほめちぎったあと、ようやくママのアルバムを持って来てくれた。少しドキドキしながらアルバムをめくる。とんでもなくおしゃれな服を着た女性がいろんなポーズで写真におさまってる。自分に似合う服をわかってる感じだ。顔は私だが、髪と肌のきれいさがぜんぜんちがう。表情も疲れてない。生き生きしてる。目が死んでなくて輝いてる。笑顔もキュートだ。どんよりした空気ではなく澄んだ空気を身にまとってる。
「すごいきれい。トップモデルさんみたい」
「それじぶんでいう?」
「いや、そういう意味じゃなくて」
自画自賛に受け取られてしまった。断じてちがう。この写真の女性は私と別人だから自分をほめたことにはならないのだ。
「パパの写真も見る?」
「みます」
リカちゃんはメグムと書かれたアルバムを持ってきてくれた。アルバムにはサッカーしている写真ばかりおさめられている。ユニフォームをみてあることに気づく。
「えっ、日本代表?」
「そうだよ。パパはワールドカップでも大活躍したんだよ」
「へーっ」
おもわず目が点になる。あのルックスでサッカー日本代表ってぜったいモテるやつじゃん。えぐい。
「メグムと結婚したい人生だった」
「してるよ?」
リカちゃんに不思議な顔をされる。それ私じゃないんだよなぁ。
「日記もあるよ。ママは本も出してるよ。テレビに出たり講演会もしてるよ」
「ハイスペックすぎですね。天才か。もちろんぜんぶ見ます」
「ママのこといっぱい教えてあげる。あ、でもその前に公園の時間だ」
「公園の時間?」
メグムがドアを開けて顔をのぞかせる。
「休日はリカが運動不足にならないように2時から家族で公園に行くのが習慣なんだ」
「わかりました。いまのところ部外者ですが、お付き合いします」
「ママ友もいるだろうから、何か思い出すかもね」
「ママ友ですか」
上品なマダムたちの顔が浮かぶ。うまく対応できるだろうか。不安を抱えつつ公園に向かった。




