再びの蝶
「ウ~ン・・・。」
その日の夜、僕は自室で考え込んでいた。
「あれは・・・。」
仕組まれていたのではないか・・・。
ククリと言う少女が捕らえられていた事。
「何より・・・。」
あの舞台。
誰かの意志で動いている・・・。
何となく、その人は傍にいる。
そんな気がする。
だが、それは些末な事かもしれない。
問題は・・・。
「どうして、僕はここに呼ばれたのだろう・・・?」
そう・・・。
何となくだが、気づいてしまったのだ。
転生、あるいは転移に偶然はない。
呼ばれなければ、来ることは出来ないのだ。
何か大きな意志の様なもの・・・。と言うか・・・。
どちらにせよ、『たまたま』ではない。
例え、前の世界で生を終えて、転生したとしても、・・・である。
チュンチュン・・・
「お兄さ~ん」
『ん?』
上の方から天使の声が聞こえる・・・。
いつの間にか二度寝していた様だ。
『ただ疲れているしな~。もう少し寝かせて~。』
私は狸寝入りを決め込む。
「ククリ、どうした?」
もう一人の凶悪な気配を感じる。
やられる前に行動!
「やっ、やぁ!おはよう、コノハさん、ククリちゃん。」
僕は背中に大きな汗をかきながら、もっともらしくふるまう。
「いつまで寝ているんだ、お前は!私とククリは、早朝から稽古をしてきたぞ。」
『・・・。どこまでタフなんだか・・・。まぁ何も言うまい・・。』
「いつもながら、失礼な事を考えているな!」
「ないない!」
いつもながら、人の心を読むでない・・・。
「さて・・・。ククリよ。タチバナは仕事とやらで、暫く帰ってこない様だが・・・。」
それから数刻の後・・・。
私はククリと、タチバナが残した巻物を眺めている。
「ウ~ン。中々分かりづらいな、異世界の書は・・・。」
「そうだね~。」
「まぁ、朝から稽古ばかりだったし・・・。町へでも出かけてみようか・・・。」
「うん、行く行く!」
「よし!じゃぁ出かけよう!」
私は白虎を呼ぶ。
「すまない。町までよろしく頼む。」
白虎は黙って二人を乗せると、小走りに町へ向かう。
「あの時は気づかなかったが・・・。」
櫻神社は町外れに在り、ククリのいた館も外れていたので、意外と町からは離れている。
その分、静かで周りを気にせず、練習できるので悪くはない環境だ。
「ああ。お姉さん。綺麗な蝶が飛んでるよ・・・。」
「ん?」
ふと横をみると、綺麗な蝶が飛んでいる。
「ほう・・・。現世のものではなさそうだ。」
蝶はひらひらと私達の眼の前を飛んでいる。
「ふむ・・・。ついてこいと言う事かな?」
私は少し考え込む。
「よし!白虎よ。あの蝶について進め!」
私達は不思議な蝶の導きのまま、町中を目指した。
「ウ~ン!何というか平和・・・。」
僕はここにきて初めて、仕事する喜びを味わっている。
何しろ奇跡的なくらい、平和なのだ。
今日は比較的大貴族の依頼が多く、上司は忙しそうだが、僕はその引き継ぎ位なので、余裕をもって仕事しているのだ。
「この所、騒動ばかりだったからなぁ。たまにはこんな日もよい・・・。」
だが・・・。
「タチバナ君!いるかね!」
「!」
何だ何だ・・・。
顔見知りの検非違使のオジサンが飛び込んでくる。
「おおいた!すまない。緊急で来てくれ!例の虎に乗った少女が町で暴れているんだ!」
「はぁ?」
虎?
そんな馬鹿な・・・。
ん?虎って?
「なぁぁにやってんだぁぁぁぁぁ!あの人はぁぁぁ!」
僕は飛び出した。
「何だ。お前達は?」
「へっ!前回は不覚をとったが、今回はそうはいかないぜ!」
「ん?よくよくみれば先日襲ってきた盗賊か・・・。」
私は虎の上で睨みつけている。
先日よりは数は多い。
しかも、弓や石礫を持っている者もいる。
どうやら虎対策をして、狙ってきた様だ。
ゴゴゴゴゴ・・・。
虎が激しく威嚇している。
「フッ。だが甘いな。私を警戒しないとは!」
私とククリは静かに虎から降りる。
「よいか。ククリを守れ!今からゴミは排除する。」
虎は無言で頷く。
私は刀を生み出し、無駄のない動きで構える。
そして・・・。
「いくぞ!」
私は優雅に盗賊の群れに切り込んだ。
「ウギャァァ!」
「ドワァァァ!」
「グヘ!」
私は無駄な動きなく、次々と盗賊を打ち倒す。
「なっ!てめぇ、刀をここまで扱えるのかよ・・・。」
「フン!例え数を増やそうとも、所詮は雑魚、私の敵ではない。」
バン!
「クッ・・・。」
最後に残った首領もあっさり倒した。
「安心せよ。命まではとらぬ。だが、今回は裁きを受けてもらうぞ。余罪もある様だしな。」
「これは・・・。」
それからほんの僅かな時間の後・・・。
僕は目の前の光景に唖然となる。
「そこの検非違使!今度は全員捕縛せよ!」
「分かりました。さぁお前達・・・」
数名の官がきて、盗賊を縛り上げる。
「ご協力、感謝します。」
彼等はあっさり退散。
そこには私達のみ残される。
「・・・。やはり虎は目立ちますね・・・。」
僕は他人事の様な声で話す。
「ふむ。悪人を退治するは、中々に気持ち良い!これも歌姫の重要な仕事よな。人気も爆上がり間違いなし!」
何の疑問もなく、晴れ晴れと笑い飛ばす神。
「(そんな仕事があるかぁ・・・!)はぁ~。」
僕は大きな溜息をついた。
面白い! 続きを読みたい!
と思われた方は、下にある⭐︎ブックマークをお願いし
ます。




