天より舞い降りし歌姫
[・・・母上・・・。」
「もう泣かないで・・・。」
まだ泣き止まぬククリを宥めながら、僕は前の神を見上げる。
「・・・。私をみるな。」
何故か、コノハさんは睨みつけている。
『ここからが僕の仕事ってか・・・。ホント、性悪だなぁ・・・。』
僕は一つ溜息をつく。
「私はそこで少し休む。後は頼むぞ、タチバナ。」
『このやろ~。逃げやがった!』
僕は心の中で毒づいてみたが、彼女は知ってか知らずか、背中を向けている。
「しかし・・・。どうしたもんか・・・。」
途方に暮れる。
「古来より、泣く子を落ち着かせるのは・・・。」
『そうだ!お菓子・・・持ってないわ・・・。』
『面白い事!面白い神なら、すぐそこにいるが・・・。却下。』
ならば・・・。
「泣かないで。僕がずっと傍にいるよ・・・。」
確か、何かの本で読んだ最強の言葉。
「・・・。」
「ほう・・・。愛の告白か・・・。だが、その子には早くないか?」
「へ?違う違う!」
僕は動揺する。
「むきになって否定するか!ますます怪しい・・・。」
「ええい!いらんことを言うな~!」
僕はコノハさんを睨みつける。
「お兄さん達は恋人?」
いつの間にか泣き止んだククリが尋ねてくる。
「絶対違う!!!」
二人の声が見事にハモる。
「仲良しさんなんだね。」
ククリがクスクス笑う。
僕もコノハさんも反論したくなったが、ククリの声を聞いて、大人の休戦を行う。
「さぁ帰ろうか?で、この空間って、どう出るんでしょうか?コノハさん?」
「ああ?これはククリが作り出した幻だからな・・・。その内消えるだろう・・・。」
「そうか・・・。」
「しかし、それでも少し時間はかかる。ククリよ。歌は好きか?」
突然何を言い出すんだこの人は・・・?いや神か・・・。
「う~ん。好き。あと、母上から横笛を教えてもらったんだ。」
「ほう・・・横笛か!是非、聞かせてくれ!私がその調べに歌をつけてやろう。」
「うん。分かった。お姉さん。」
ククリは横笛を取り出す。そして、一つ息を吐くと、静かに息を吸い込み、笛を奏で始める。
ピーヒャラ・・・ピー・・・。
優しい調べが星達を輝かせる。
花達も折からの風に煽られて、一枚、また一枚と散っていき、天へと昇っていく。
「何故だろう・・・。何か懐かしい・・・。」
僕は涙ぐむ。何故なのかは分からないが・・・。
「うん。透き通った良い調べだ。では私も・・・。」
コノハさんも歌いだす。
意外と言っては失礼だが、声質はよい。
僕が知る限りの未来の歌姫と比べても遜色ない。
『なるほど・・・。自信はあった訳ね・・・。』
僕は妙に納得する。
彼女がアイドル、もとい歌姫をするといった時、まぁ面白いとは思ったものの、この都を騒がすまでにはならないだろうとは思っていた。
そういう意味では彼女の力量を見誤っていたと言える。
「確かにこれならいけるかもしれない。この都のみならず、全国へその歌を響かせる伝説の歌姫に。」
僕は静かに笑みをこぼす。
「おい、何を笑っている。気持ち悪いぞ!」
「いいじゃないですか。少し未来が見えた気がしたのですよ・・・。」
「何?」
『そして、私がここに来た意味も・・・。』
やがて、僕達の姿は、花吹雪の中に隠れ、天へと高く上った後、元の世界へと降りてきたのだった。
「おおっ!!!」
「なんだぁ!!!
「・・・。」
ゆっくりと元の館に降りてきた私達は、何故か四方を野次馬、もとい観衆に取り囲まれていた。
「ここは舞台?」
「確か・・・。神に捧げる舞が行われていた場所だったと思う。」
ククリもおろおろしている。
何が起こったのか、理解が落ち着かないのであろう。
「ククリちゃん。落ち着いて。」
タチバナも焦りまくっている。
何故、別世界から出てきた口に聴衆がいるのか・・・。
まるで仕組まれていたかの様だ。
「しかし・・・。」
私は感じる。
「何か凄い力を感じる・・・。」
これは未来への第1歩。
「野郎どもぉぉぉ!元気かぁぁぁぁぁ!」
私は絶叫する。
一瞬の静寂。
だが・・・。
「おう!元気だぜぇぇぇぇ!」
何故か方々から上がる歓声。
「ククリ。私の横へ。」
「え?」
「こうすれば、怖くない・・・。」
私はククリと手を繋ぐ。
「皆聞きてくれ!いきなりだが、私達が歌を歌う。それは儚くも美しい物語。母が子を想い、子が母を想う。その想いが時代を超えて結びついた事を喜ぶ歌だ!」
聴衆が静まり返る。
「私・・・。どうしたらいいの?」
「大丈夫だ。ククリ。歌詞はない。ただ想いだけ伝えればよい。お前の母に届くようにな。」
「・・・。分かった。心をこめて歌うよ。母上の為に・・・。」
「いい子だ・・・。」
私はにっこり笑う。
そして、先程の歌を歌い始める。
それにククリが音をつけていく。
「・・・。何と美しい。」
「悲しいけど、美しい。」
見る見るうちに聴衆が引き込まれていく。
『・・・。ありがとう、お姉さん。私はもう大丈夫だよ・・・。』
手を繋いだククリの心が伝わってくる。
私はそれを心地よく感じながら、二人で歌い続けたのだった。
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